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IT系企業が次々参入! ――動く巨大広告塔・ラッピングバス

2001年09月01日 00時45分更新

文● 編集部 田口敏之

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[編集部] こうしたラッピングバス広告の特性は、どういった部分にあるのか?
[丸尾氏] この手の屋外広告。アウト・オブ・ホームメディアと呼ばれているものは、テレビなどのマス(大衆)広告を間に挟んで、インターネットメディアとは対極にある特性を持つものだと思います。

インターネットメディアの特性は、選んで見るものだということです。一つ一つの広告が、マスを捉えるということは非常に難しい。そしてテレビのようなマスメディアでは、チャンネルの種類と番組とがあって、この中での選択になりますから、インターネットよりは多少選択肢の幅が狭い。しかし、最近はケーブルTVなどによって、チャンネル数も爆発的に増えました。また雑誌も、単一の発行部数はそれほどではなくても、種類が増えてきています。

広告を掲載するメディアの増加は、世界的な傾向です。一方で、それに人が費やしている時間はどうかというと、ほとんど増えていない。アメリカで97年と70年とを比較した調査があるのですが、費やす時間が19%しか延びていないにも関わらず、ラジオ・テレビ・雑誌などを合わせたメディアの種類は、814%も増えているのです。

こうした、広告を載せたくても、多すぎてどのメディアを選べば良いのか分らない、メディアに載せてもマスを捉えられるかどうかわからない、といった状況に、アウト・オブ・ホームメディアは“セーフティネット”と呼ばれる役割を果たします。

つまり、他のメディアで取りこぼした人々を、最後にガサっと捉える。というのは、メディアがある地域にいる人たちに、必ず見せられるという特性があるのです。

人間の生活も変わってきています。エンターテイメントの主力がテレビから外にあるものに移り、また移動に費やす時間が非常に伸びている。つまり家の外、屋外で過ごす時間が増えてきているのです。だから欧米では、アウトオブホームメディアは、年間平均8%ぐらいの割合で伸びてきていて、非常に重要なメディアとして使われています。
[編集部] 逆に、難点はどういった部分にあるのか?
[丸尾氏] ロケーションの問題があります。バスですと、たとえばブランドの広告バスが、銀座4丁目を走ると格好がいいけど、歌舞伎町を走っていると違和感がありますよね。フルラッピングバスは路線が自由なのですが、路線バスはルートが決まっていますからね。

また現在、投入できる台数が限られているという問題があります。これは体制の問題などもありまして、銀座に50台とか、希望通りのロットでは買えないのです。人気路線は抽選になってしまいますから。ワールドカップ開催の時期に合わせて、全部欲しいというお話もありますので、これには柔軟に対処していきたいですね。。

また、コストの問題もあります。印刷にかかるコストもあるのですが、基本的に印刷物ですから、それを貼りつける作業が伴って、どうしても人件費がかかってしまいます。また、弊社では独自の媒体として、リムジンバスのラッピングもやっています。それは、広告を車体の一部と、リア部分に貼りつけるだけなのですが、そうすればコストも安く済みますし、広告としてこれで十分という考え方もあります。広告面積を落とすなどして、コストダウンの努力に努めています。
[編集部] 現在は静止画しかないが、将来的にラッピングバス広告の表現方法として、どんなものが考えられるか?
[丸尾氏] 液晶モニターなどで、一定時間ごとに、またはコントロールセンターで画像を切り替える、などといった表現手法が考えられます。ですが、屋外広告の特性として、人との接触時間が短いということがあります。ですから屋外広告で、動画を流すといったことは実はナンセンスなのです。渋谷の巨大スクリーンなどは、ビジュアル面が重要視される、音楽業界の広告を中心にしているからこそ成功しているビジネスモデルで、数少ない例外と言えますが。

静止画であることはデメリットではないのです。たから、デザインがもっと洗練されてゆくというのが望ましい発展の方向ですね。
フルラッッピングバスのサンプル。以前は一つ作るごとにクライアントに記念として進呈していたものらしい
フルラッッピングバスのサンプル。以前は一つ作るごとにクライアントに記念として進呈していたものらしい

フルラッピングバスなどが出来あがって、クライアントにお披露目に行くと、皆にこにこして待っているそうだ。高さ4mにもなる巨大なバスの全面に、自社の広告が入っているというのはやはり嬉しいものらしい。中には一緒に写真を撮ったりする人もいるらしく、非常にクライアントに対する受けがいいらしい。

(株)トミーから出ているラッピングバスのミニカー
(株)トミーから出ているラッピングバスのミニカー

「全般的に皆さんバスはお好きですね、やっぱり男の子は潜在的にバスが好きなのでしょう」

と、人気は高いラッピングバス広告だが、台数自体は少なく、未成熟なメディアであると言える。しかし価格が安く、広告効果も狙いやすいこの動く広告塔は、IT業界だけでなく注目されてゆくだろう。これから投入できる台数も増えて、凝ったデザインや変わった企画などで洗練されたラッピングバスが、街中を彩る日が来るかもしれない。

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