ボーランド(株)は16日、開発者向けカンファレンス“Kylix Day”を都内で開催、合わせて報道関係者向けに、同社の開発ツール製品戦略について説明した。説明会では、米ボーランド社が8日付(現地時間)で発表したWindows向けRAD(Rapid Application Development)環境『Borland Delphi 6』のデモンストレーションが行なわれた。
Windows向けRAD環境の最新版『Delphi 6』(英語版)の画面 |
Delphi 6は、ウェブサービスを容易に利用/構築するための支援機能を備えたRADツール。XMLやSOAP、WSDL、XSLなどの業界標準テクノロジーをサポートし、インターネット上でさまざまな情報の共有や交換を行なうウェブサービスアプリケーションを開発、配布できる。また、マイクロソフトのBizTalkや.NET、サン・マイクロシステムズのONEといったウェブサービス向けプラットフォームにも対応している。
Delphi 6に搭載されている“BizSnap”はXML/SOAP対応のウェブサービスを構築するためのRADプラットフォーム。“WebSnap”は、Apache、Netscape、IISといった主要なウェブアプリケーションサーバーに対応した、コンポーネントベースのウェブアプリケーション開発のフレームワーク。“DataSnap”は、XMLやDCOM、CORBAを通じて、クライアントアプリケーションやサービスを、OracleやSQL Server、Informix、IBM DB2、Sybase、InterBaseなどのデータベースと接続できる機能。
また、Delphi 6は、クロスプラットフォーム開発のためのコンポーネントライブラリー“CLX”(Component Library for Cross Platform:クリックス)を搭載する。このCLXはLinuxネイティブRAD環境『Borland Kylix』にも搭載されているもので、これによりひとつのソースでWindowsとLinuxの両方で動作するアプリケーションを開発することが可能となっている。
Delphi 6は米国で6月発売予定で、Enterprise版、Professional版、Personal版の3種類が用意される。なお、Delphi 6の日本語版については、後日詳細が発表される見込みだ。
説明を行なった米ボーランド社バイス・プレジデント兼RADツール事業部門担当ジェネラル・マネージャーであるSimon Thornhill(サイモン・ソンヒル)氏は、「ボーランドのビジョンはe-ビジネスプラットフォームをユーザーに提供すること。あくまでもITインフラ分野で事業を展開する。われわれは主要なプラットフォームと、リーディングテクノロジーをサポートする。Kylixを通じてLinuxをサポートできるのは素晴らしいことだ。あくまでも業界標準をベース、Sun、IBM、Linux、Windowsをサポートしていく。われわれは中立な立場を取っているので、ユーザーは企業の囲い込みのリスクから逃れることが可能だ。また、業界スタンダード技術を採用しているので、既存のITリソースを活用できるだろう」
「ウェブサーバー市場でLinuxは重要。過去の資産を捨てないでLinuxに移行できるよう開発者をサポートしたい。既存のWindows開発環境に対し、今後はさらにLinux開発環境が大きくなっていくだろう。その中でKylix日本語版を出荷できるのは嬉しい。また、JBuilderでは、Solaris、Linux、Windows、Mac OS Xをサポートする。さらにInterBase、VisiBrokerもLinux対応を進めている」
「Delphi 6は今月初めに米国でリリースした。ウェブサービスを容易に開発でき、効率的に運用できる。XMLやSOAPといったテクノロジーを意識せず、アプリケーションに焦点を当てて開発できるようになっている。既存の知識、ツールをベースにしているのがDelphi 6の大きな特徴だ。ウェブサービス対応の次世代Eビジネス開発環境となるだろう」と語った。
米ボーランド社バイス・プレジデント兼RADツール事業部門担当ジェネラル・マネージャーのSimon Thornhill氏 |
また、ボーランド代表取締役社長の安藤由男氏は、Kylix Day開催にあたり、「ずいぶん待ったKylixを今回のカンファレンスでユーザーに披露し、18日に発売する。Kylixは、4月の発表以降好評を博している。受注も順調で、当初の予定を上回る初回出荷数となっている」と述べた。
ボーランド(株)代表取締役社長の安藤由男氏 |