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マイクロソフトがLinuxに関する調査書類を完成

2001年05月08日 15時07分更新

文● 吉川大郎

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マイクロソフト(株)は7日、Windows 2000 Serverベースのアプライアンスサーバを素速く市場に投入できるツール「Server Appliance Kit 2.0」(以下SAK2.0)の提供開始と、サーバアプライアンス事業戦略の強化について発表した

発表会の壇上に登ったのは、

  • マイクロソフト(株) 代表取締役社長 阿多親市氏
  • マイクロソフト(株) 取締役 鈴木和典氏
  • コンパックコンピュータ(株) ソリューション&テクニカルサポート統轄本部 統括本部長 白倉俊雄氏
  • デルコンピュータ(株) 営業技術支援本部 本部長 長谷川恵氏
  • (株)東芝 デジタルメディアネットワーク社 PCサーバ事業部 事業部長 吉田信博氏
  • 日本電気(株) NECソリューションズ 第二コンピュータソフトウェア事業部 事業部長 西龍己氏
  • 日本アイ・ビー・エム(株) IAサーバー&PWS事業部長 須崎吾一氏
  • (株)日立製作所 情報・通信プラットフォーム インターネットプラットフォーム事業部 事業部長 篠崎雅継氏
  • 富士通(株) 常務理事 兼 コンピュータ事業本部長 青木隆氏

など、マイクロフトとSAK2.0のパートナー企業である。

まずは、SAK2.0の概要をざっとご紹介しよう。SAK2.0は、

  • Windows Powered Web Server Appliance(以下Windows Web)
  • Windows Powered Network Attached Storage(以下Windows NAS)

の2つの製品を作り出すことができる。2製品とも文字通り、WebサーバもしくはNAS用のWindows 2000 ServerベースのPCサーバアプライアンスである。それぞれの製品の特徴として

Windows Web
アプライアンス化による導入コストの削減
簡単なセットアップと管理
負荷の増加にも、スケーラブルに対応
Windows NAS
ファイルサーバの統合
UNIXなどの含む異機種環境のストレージ統合
ファイルとアプリケーションの負荷分散

といった点が、同社が配布した資料に記されている。

Linuxを意識したマーケティング展開

この発表会の中では、「Linux」という単語が盛んに使われた(おそらく“Windows”という単語よりも多く使われただろう)。同社代表取締役社長の阿多親市氏は発表会冒頭で、Linuxの動向を注意深く見てきた結果、LinuxはWebサーバなどの単機能サーバ市場では普及しているが、マルチファンクションなサーバやデータセンター市場などではまだ普及していないという結果を述べた。

質疑応答時間においては、記者団から2回ほど「Linuxを駆逐」という言葉が飛び出たが、阿多氏は「駆逐ではない」と否定した。阿多氏によると、今回のLinuxに対するさまざまなアドバンテージのアピールは、1999年からのLinuxの台頭を見て、それがどのようなエリアで使われ、それに対してマイクロソフトがどのように対応していくか? を考える時期に来たからだ、という。そしてこうした発言の中で、阿多氏の口から「アプライアンスのLinuxにおける研究レポートがまとまった」という発言があった。

企業が市場レポートを作成することについては、何の不思議もない。しかし今回は、マイクロソフトがLinuxに対して行なったレポートである。いったいどのような内容なのだろうか? 一応同社の広報担当者に見せていただけないか? と確認したが、当たり前だが社外秘である。

しかしながら、今回の製品発表によって、同社が考えているLinux戦略の片鱗を垣間見ることができるだろう。

Linuxサーバ調査

Linuxサーバのユーザーに対しての調査では、

  • トランザクションが増大した場合への柔軟な対応が難しい……一例として、Linuxはマルチプロセッサのトランザクション処理に未対応
  • 管理面のソリューションが不十分……サーバが複数台構成になった場合、これらを統合管理することが難しい
  • サポートやサービスが不明確

といった結果が得られたという。マルチプロセッサ関連については、同社取締役の鈴木和典氏も同一ハードウェアのLinuxと比較してより多くの要求/ユーザーを処理可能だとし、Source SPECWeb 99を基にしたグラフを発表した。

マルチプロセッサ環境のグラフ
マルチプロセッサ環境における、Windows 2000とLinuxのパフォーマンスの違い。

このグラフを見ると、「Linuxは2CPU構成のほうが1CPU構成の場合よりもパフォーマンスがダウンする。そしてWindows 2000は、1CPUのLinuxよりもパフォーマンスが高い」という“結果”を読みとることができる。

もっとも、このグラフのソースを見ていただければわかるが、Windows 2000とLinuxは別のベンダーのハードウェアでベンチマークを取られている。以下、同Webサイトに記載されている大まかなスペックだ。

Windows 2000
製品名……Dell Computer PowerEdge 2400/667
CPU……Pentium III-667MHz×1
メモリ……2GB
Linux(2CPU)
製品名……IBM Netfinity 5000
CPU……Pentium III-600MHz×2
メモリ……2GB
Linux(1CPU)
製品名……IBM Netfinity 5600
CPU……Pentium III(EB)-533MHz×1

CPUのクロック数に少しずつ違いがあることがわかる。次に、使われているOS(Linuxはディストリビューション)だが、これはWindows 2000 Advanced Server対Red Hat Linux 6.1となっている。現在Red Hat Linuxのバージョンは、SMPをはじめとした企業向けフィーチャー盛りだくさんのカーネル2.4を搭載した7.1だ。ただし、サーバ分野に限っては、常に最新バージョンのディストリビューションやカーネルを使用するとは限らないので、6.1の使用は実状に即しているともいえよう。

そして最後の違いだが、このベンチマークではWebサーバにApacheを使用していない。Zeus Technologyの「Zeus Web Server 3.3.2」を使用している。もっとも、Zeus Web Serverは、クラスタリング機能を持つ商用Webサーバであり、Zeus Technologyによると、Apacheの5倍のパフォーマンスを叩きだす品質であることなどから、ベンチマークではプラスに働いているかもしれない。

ベンチマーク論争はIT業界内でたびたび繰り返されてきたものであり、公平な環境下でのベンチマークテストというのも難しいだろうが、本当に同一なハードウェア上における、同価格帯のソフトウェアを使用したパフォーマンステストは見てみたいものだ。

以上のような機能面でのアドバンテージのほか、マイクロソフトは価格面でのアドバンテージも挙げた。すなわち、Linuxが仮に無料だとしても(この発言は“Free”と“無料”をはき違えた発言ではなく、本来のFreeの用法が使われている)、その構築/運営にコストがかかるという点だ。たとえば、Linuxサーバのスケールアップの際、負荷分散機構を用いようとすると、そのための機能を別途導入しなければならないが、Windowsの場合はもともと実装しているので追加コストがかからない点などが主張された。

各ベンダーの動き

マイクロソフトからの説明が一通り終わったのち、各パートナーベンダーの製品紹介が行なわれた。

特に印象的だったのはNECのコメントで、同社はSAK2.0の前バージョンを使用した際、たったの2カ月でアプライアンスサーバの製品化までこぎ着けたという。また、Linuxについては、Linuxでもスケールアウト(増大するリクエストにサーバの台数を増やして対処する方法)の例はあるが、サーバを増やせば増やすほど管理コストがかかる点を挙げた。数年前ではあるが、実際日刊アスキーが取材した事例では、多数のLinuxサーバをWindowsにて管理していたIBMのLinuxサーバ事例があった(しかし現在IBMはこうした管理機能をLinuxにも移植しようとしている)。

また、先ほど触れたLinuxのマルチプロセッサ時のパフォーマンスについては、デルコンピュータが2CPU構成のサーバでパフォーマンスを上げるには、LinuxよりもWindows 2000だ、と言及している(カーネルのバージョンは不明だが、現在同社のLinuxアプライアンスサーバは、1Way、2WayマシンともにRed Hat Linux 7.xプリインストールモデルがラインナップされている。6.2は1Wayマシンのみプリインストールモデルが存在する)。

日本アイ・ビー・エムのコメントはもっとも現実的だ。端的に言うと、“Windows 2000のアプライアンスは、マイクロソフトのスキルを持つ技術者が多いので、企業にとっても使いやすく、有効なソリューションとなる”といったものである。パフォーマンスやコストといった問題は使う側にも依存する問題だけに、同社のコメントはひときわ光っていた。

Linuxにもカーネル2.4.xやクラスタ技術(Piranha)、HDE Linux Controllerなどがあるではないか、という意見はさておき、従来のマイクロソフト系技術者にとって、こうしたアプライアンスサーバは魅力的な製品となるだろう。


今回のSAK2.0出荷は、以前初めて語られたマイクロソフトのLinux戦略が具体的に動き出したことを物語る。サーバ分野におけるマイクロソフトの強みは何だろうか? そして彼らが捉えたLinuxの弱点は!? 同社の『研究レポート』を、一目でいいから見てみたいものである。Linuxの大きな流れに、マイクロソフトはどのように対処するのだろうか?

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