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NTTの高速IP接続サービス新登場

君は使うか!?フレッツ・ADSLの実力研究

2001年04月05日 13時06分更新

文● NETWORK MAGAZINE編集部

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NETWORK MAGAZINE


はじめよう!フレッツ・ADSL+常時接続表紙
本記事も収録 フレッツ・ADSLと常時接続の入門書「はじめよう!フレッツ・ADSL+常時接続」 価格(税抜き)1280円

 フレッツ・ADSLと競合するサービスとして、他のADSLサービス、フレッツ・ISDN、CATVインターネット、光IP網、無線(FWA)などを比較検討し、長所・短所や乗り換える損得など、さまざまな視点から研究し、その実力と使い心地を明らかにする。



フレッツ・ADSLの長所、短所

 フレッツ・ADSLといえども次のような長所、短所があげられる。見方によっては、長所が短所に、短所が長所になったりするものだ。フレッツ・ADSLを使う立場に立って、長所、短所を比べていこう。

長所

電話回線を共用できて、コストが安い

 すでにISDNに移行していなければ、現在のアナログ回線を共用して、安いコストで高速な常時接続インターネット環境を利用できるメリットは大きい。特に、アナログ回線を共用する場合、共用しない場合に比べて月額料金が1600円も安いわけだから、電話回線の基本料金のかなりの部分を取り戻すことができて、総合的にコストも安くなる。

プロバイダを切り替えて利用できる

 フレッツ・ISDNと同じフレッツサービスであることから、PPPoE対応ローカルルータやPPPoEソフトウェアによって、複数のプロバイダを切り替えて利用できる利点がある。ただし、複数のプロバイダを同時に利用できるわけではない。万一、メインに使っているプロバイダが障害でつながらなかった場合には、サブのプロバイダ(当然、フレッツ・ADSLに対応していることが必要)があれば、そちらに切り替えることでインターネット接続を継続することができる。

TT東西のサービスであること

 NTTは国内最大の通信事業者であり、当然保守体制も整っている。フレッツ・ADSLはこのNTT東西のサービスであることが、実は大きな利点でもある。フレッツ・ADSLの対応が悪い、あるいは工事日が決まるまで時間がかかるといった苦情をよく聞くが、それは逆にNTTへの期待の現われでもあるのだ。

短所

ISDNからアナログ回線に戻すとき、電話番号が変わる可能性がある

 インターネットを使いこなしている人は、すでにアナログ回線からISDNに移行しているケースがほとんどだろう。フレッツ・ADSLを使うために、アナログ回線に逆移行するケースも今後増えてくるものと思われる。この場合、収容されている交換機によっては電話番号が逆移行により変わることがある。変わるかどうかは「116」の電話窓口で教えてもらうことができる。

通信速度がどの程度出るのか予想しにくい

 フレッツ・ADSLの通信速度は、ダウンロードの下り方向が1.5Mbps、アップロードの上り方向が512kbpsであり、ベストエフォートであると表記されている。分かりにくいのは、ADSLの速度制約と地域IP網の両方がベストエフォートであることだ。つまり、ADSLそのものの通信速度が出ない可能性と、地域IP網が混んで速度が出ない可能性の2つがあるということ。あるいはその先のプロバイダも地域IP網とどの程度の太い回線で接続されているかも情報公開されていることが少なく、いったいどの程度の速度が出るのか予想しにくいところがフレッツ・ADSLの分かりにくい点でもある。

提供エリアがまだまだ狭い

 当面は東京、大阪という2大都市や近隣都市、県庁所在地あるいは県庁所在地級都市だけの提供エリアに止まり、まだまだ誰でも利用できるものになるには時間がかかると予想される。全国均一にサービスを提供されるユニバーサルサービスである電話と違うため、フレッツ・ADSLは全国津々浦々まで利用できるようになるには相当時間がかかると思ったほうがよい。

表2 フレッツ・ADSLの長所と短所
表2 フレッツ・ADSLの長所と短所

他のADSLサービスとの比較検証

 フレッツ・ADSLだけがADSLサービスではない。東京めたりっく通信やイー・アクセス(eAccess)といったADSLプロバイダが提供するADSLサービスもある。東京めたりっく通信は自分自身がプロバイダとしてインターネット接続サービスを提供するが、イー・アクセスの場合はフレッツ・ADSLのようにADSLの足回り回線を提供し、@niftyやBIGLOBEといったプロバイダと連携することでインターネット接続サービスを提供する。

 これらサービスとの大きな違いは、フレッツ・ADSLのように他のプロバイダに切り替えてADSLを利用するということが不可能になることだ。別のプロバイダに切り替える場合は契約内容を変更しなければいけない。ただしADSL部分の通信速度は上り 512kbps、下り 1.5Mbpsと両者とも同一だ。また、提供エリアは両者ともよい勝負で、2001年前半までは東京めたりっく通信やイー・アクセスといった他のADSL事業者のほうが少しエリアが広いものの、フレッツ・ADSLが急速に提供エリアを広げるのではないかともいわれている。

 フレッツ・ADSLとイー・アクセスの両者を比較してみると、プロバイダとして@niftyを利用する場合には、初期費用も似たりよったりで月額料金も総額で6800円(フレッツ・ADSL)、6500円(イー・アクセス)と大きな違いはない。

表3 フレッツ・ADSLとイー・アクセスの比較。プロバイダは@nifty、電話回線と共用する場合
表3 フレッツ・ADSLとイー・アクセスの比較。プロバイダは@nifty、電話回線と共用する場合

フレッツ・ISDNとの比較検証

 鳴り物入りではじまったISDNの常時接続サービス「フレッツ・ISDN」も当初NTT東西が見込んでいた何十倍の申し込みがあって、嬉しい悲鳴どころか、関東地方の中堅都市ではすでに申し込みが溢れて受け付けられない状態になったり、いつになったら開通するかどうか分からないところもではじめている。この両者ともフレッツサービスとして共通の特徴があるが、通信速度と月額費用を比べてみると、いかにフレッツ・ADSLが得なサービスであるかが分かる。フレッツ・ADSL対応プロバイダの多くは、無制限コースであればそのままフレッツ・ADSLに対応したり、数百円のオプションを追加すれば使えるため、月額1000円以下の追加料金でISDNの何十倍もの高速インターネットを使える、ということになる。

 しかし、ISDNからアナログ回線に戻したり、いままで使い慣れたISDNダイヤルアップルータからADSLモデムやローカルルータへの切り替えは、配線の手間やPCの設定変更などけっこう面倒だ。

 ISDN利用者への朗報もある。ADSLが電話の帯域を避けて高速データ回線を構成しているのならば、ISDNの帯域を避けて高速データ回線を作れるのではないかという考え方もある。まさに、それを実現するものとして“SDSL over ISDN”をINSネット64に導入することがNTTで検討されている。ただし、ISDNの帯域は電話に比べてかなり広いため、SDSLで使える帯域は限られており、双方向128kbps程度ではないかと考えられている。

 フレッツ・ISDNが値下げされるという報道もあるので、ISDN利用者は“SDSL over ISDN”の状況を見てからでも、フレッツ・ADSLに切り替えるのは遅くない。

表4 フレッツ・ISDNとフレッツ・ADSLの比較
表4 フレッツ・ISDNとフレッツ・ADSLの比較

CATVインターネット

 おそらくADSLサービスともっとも競合するのが、このCATVインターネットであろう。なぜならば、両者とも通信速度やコストが似通っているからだ。CATVインターネットの場合はベストエフォートという一言でどのぐらいの速度が出るのか公表しているところは少ないが、空いていれば1~2Mbps程度、夜間など混んでくると200~500kbps程度のダウンロード速度になることが多い。また、アップロードの上り方向はCATVインターネットの弱点である流合雑音の影響を受けるため、200k~数百kbps程度しか速度が上がらずADSL同様に非対称の通信速度となる。

 CATVインターネットとして老舗の東急ケーブルテレビ@CATV(かっとび)とフレッツ・ADSLを比較してみよう。@CATVではネットワーク内は14.3Mbpsとかなり高速であるが、実際はこれを利用者で共有して使うことになる。このため、フレッツ・ADSLとの単純比較は難しい。月額料金をみると、@CATVはインターネット接続料金も含まれており、フレッツ・ADSLにもっとも安い対応プロバイダ料金を足した額より低く、わずかながら得であることが分かる。

 もし、CATVインターネットがフレッツ・ADSLよりも通信速度が速く、月額料金も安ければ、フレッツ・ADSLに切り替える必要はない。しかし、CATVインターネットの中で、複数のPCを接続したりLANでの接続を明確に禁止したりするところが増えてきて、使い勝手が悪くなっているという声も聞かれる。また、ケーブルモデムの接続方式によってはセキュリティに問題の出るケースもある。

表5 フレッツ・ADSLとCATVインターネットの比較
表5 フレッツ・ADSLとCATVインターネットの比較
 

光・IP通信網(仮称)

 最後に、2000年12月18日にNTT東西が発表した光IP通信網(仮称)とフレッツ・ADSLを比較してみたい。両者とも同時期に発表した高速常時接続メニューであるが、光・IP通信網はフレッツ・ADSLと同様に地域IP網を通じてプロバイダへ接続するサービスであり、足回り回線に光ファイバを使うものだ。そのため、ADSLのように足回り回線部分では速度制約を受けることはない。通信速度は最大10Mbpsではあるものの、これを多数のユーザーで共有するため、常時この速度が出るというわけでもない。

 ただし、フレッツ・ADSLと光・IP通信網の比較表のとおり、基本メニューであっても月額1万3000円であり、対応プロバイダの費用もいれると月額1万8000円を超え、かなりの負担になる。一方で、フレッツ・ADSLならば対応プロバイダをうまく選ぶことによって、月額費用を6000円以下に抑えて高速インターネット環境を構築することも決して夢ではない。

 光・IP通信網には、提供エリアが極めて限られている点(2001年1月現在東京都内霞ヶ関など一部のみ)や建物への光ファイバの引き込みなど制限が多く、むしろ逆にフレッツ・ADSLの制約の少なさがはっきりする。

表6 フレッツ・ADSLと光IP通信網の比較
表6 フレッツ・ADSLと光IP通信網の比較

フレッツ・ADSLと競合サービス、FTTHの動向- ファイバとメタルは共存するか

 フレッツ・ADSLが大きくクローズアップされる中で、光ファイバ網を推進していたNTTが今度どのような方向性をもって高速インターネットを普及させていくのか興味深い。ここでは、フレッツ・ADSLとISDN、CATVインターネットなどの競合サービスと、高速インターネットの本命と呼ばれたFTTH(Fiber To The Home)の動向を踏まえ、ファイバとメタルが共存していけるかについて触れてみたい。

 日本は諸外国と比べて国土が狭く、それゆえ日本全国に光ファイバを敷設して、高速ネットワークを充実させる施策をとってきた。そのため、1980年代からNTTは交換機間の中継回線を徐々に光ファイバに置き換え、現在では中継回線はほぼ100%光ファイバが敷設され、128kbpsを超える専用線やATMなど、光ファイバを引き込んで利用するサービスも続々と登場した。光ファイバはメタルケーブルと違って、雑音等に強く、伝送品質もよい。一方で、敷設工事が難しく、光ファイバと一緒に増幅器用の電源ケーブルを引かなければならないなどの短所もあって、それが敷設費用を高騰させる原因にもなっている。

 しかし、NTTは着々と光ファイバ化を進めており、NTT東西ではホームページで光ファイバ敷設地域についての情報提供がなされている。これによると、東京23区では半数程度の地区ですでに光ファイバが敷設済みとなっている。実は、光ファイバ敷設済みということは場合によっては、電話回線用のメタルケーブルが光ファイバに置き換わってしまっていることもありえることに注意しなければならない。メタルケーブルで伝送している音声を何百本分一挙に集線して、光ファイバで簡単に伝送してしまおうという考えだ。すでに、集合住宅やマンションなど、電話回線が何十~何千と必要となる場所では電話回線を集線して光ファイバを使うケースがよく見られる。そうなると、途中経路ではメタルケーブルが撤去され、かわりに光ファイバが使われてしまうため、フレッツ・ADSLなどADSLサービスがいっさい利用できなくなるのだ。

 この光ファイバ化が推進されることはけっこうなことだが、場合によってADSL普及の足かせになってしまうことが最近になって判明し、当時の郵政省は電話回線の光ファイバの集線化などADSLが使えなくなる可能性がある場合は事前にADSL事業者に通知するというルールを策定した。そのため、逆にADSLの利用者が多くなると、途中のルートを光ファイバに置き換えることができなくなるため、光ファイバ化推進の妨げにもなってしまう。

 また、現在、途中経路が光ファイバ化されていてもADSLが使えるような技術的な仕組みが考案されているが、コストが高くつくという欠点がある。一方で、光ファイバ化が完全に完了すれば、現在の光・IP通信網など光ファイバを利用した超高速通信が非常に安価で提供される可能性もあるわけで、そうなればADSLはいったい何だったのかということにもなりかねない。

画面4  光ファイバの敷設状況
画面4 光ファイバの敷設状況

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