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光ディスクの統計データと展望――“Advanced Optical Storage 2000”が開催

2000年11月24日 05時49分更新

文● 岡田靖

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次に、アナリストのCaroline Baines氏が講演を行なった。2000年、ついにCD-ROMプレス枚数が音楽CDのプレス枚数を上回ったという。ビデオCDを含む総プレス枚数は、138億枚に達する。広く知られているように、アジア地域でのCD生産の多くが海賊版で、全体の60パーセントを占めるという説もある。ただし、取り締りも強化されており、香港での海賊版プレス検挙数は、1999年に39件だったのが2000年に79件と増加した。

生産能力でみると、日本はあまり大きくない。コスト競争力が弱く、東南アジアの工場に勝てなかったため、シェアを大きく減らしたのだという。現在のシェアは、西欧が31パーセント、北米が28パーセント、日本以外のアジア地域が28パーセント、そして日本が6パーセントという比率になっている。企業別のシェアでは、音楽系5社(ソニー、米ユニバーサル、米タイム・ワーナー、独ベルテルスマン/Sonopress、英EMI)が28パーセントを占めており、それに独立系5社(カナダのMPO/Americ Disc、JVC(日本ビクター)、米テクニカラー/Nimbus、英Disctronics、カナダのCinram/DMI)が12パーセントと追随、残る60パーセントには620社ものメーカーがひしめくという状況だ。数年前は、音楽系5社が約半分を占めていたのだが、製造機器の値下がりに伴って多くのメーカーが参入し、価格競争が激化したためにこのような状況になった。今後は淘汰が進み、小さなメーカーから消えてくるとみられている。

CD-R媒体では、やはり台湾が強い。全世界で105の工場があるが、そのうちの30工場が台湾にある(ただし台湾企業とは限らない)。ほかの地域では、台湾と日本を除いたアジア地域に30工場、欧州に28工場、日本に7工場と続いている。生産量では、さらに差がつく。2000年の総生産量、約33億枚のうち、実に62パーセントが台湾の工場によるものだ。すでに供給過多になりつつあり、他の地域では、いくつかの工場が閉鎖されることも予想される。CD-RWも、2000年の総生産量1億205万枚のうち56パーセントが台湾製だ。

DVDのプレス設備はCDプレス設備と混在させやすいので、CD-ROMラインの更新を行なうときに導入することが多い。そのため、過去1年間で60ものラインが導入され、2000年末時点で165の工場がDVD生産可能となった。合計すると19億枚の生産能力になる。とはいえそれほどの需要がないのは明白で、兼用設備を使ってCDのプレスをしているメーカーが多いとみられている。実際、2000年の総プレス枚数は7億枚に過ぎず、地域別では米国が43パーセント、西欧が22パーセント、日本以外のアジアが22パーセント、日本が12パーセントという順位だ。企業別にみると、映像系3社(ソニー、米タイム・ワーナー、米ユニバーサル/PMDC)が29パーセント、独立系5社(台湾のInfodisc、米テクニカラー、パナソニック、独Sonopress、カナダのCinram)が45パーセントで、70パーセント以上を8社で占めている。

ユーザーニーズからみると、CD-ROM、DVD-ROMともに、パッケージや在庫管理、流通までのトータルサービスを求めることが多いという。これらの付帯作業は、音楽業界ではコンテンツを持っている側が行なうので必要なかった。例えばパッケージひとつでも、収録されるプログラムによって大きく異なる。ゲームソフトかビジネスソフトか、エデュテイメントか。あるいは、パッケージソフトでなく、雑誌付録というパッケージ形態もある。非常に多彩なバリエーションがあるために、難しいところだが、逆にサービスによって付加価値を高めることが可能だともいえる。このあたりに、メーカー棲み分けのポイントがあるようにも思える。

光ディスク市場の現状と今後

最後の講演は、引き続きBaines氏が行なった。先ほどまでの数字をチェックしていれば気付いているかもしれないが、CD市場では需要と供給のバランスが大きく傾いているの。2000年で比較してみると、総プレス枚数は138億枚、一方、出荷枚数では音楽CDが26億6700万枚、CD-ROMが28億3800万枚。ビデオCDに関しては触れられなかったが、その比率は音楽CDやCD-ROMより少ない。実際、合計しても総出荷枚数は60億枚弱で、プレス枚数の半分にも満たないのだ。

ベインズ氏Understanding & Solutionsアナリストのキャロリン・ベインズ氏

これにはさまざまな理由がある。音楽CDは、商品サイクルが早く、しかもその割に流通在庫が多いこと、さらにプロモーション目的で業界内に配布するディスクが相当数に上ること(1つの国、かつ1タイトルで最大で3000枚に達するとみられている)、などが大きな理由だ。発売タイミングが勝負なので、流通側も売り切れを嫌がって大量発注するのが常だ。ソフトウェアでも、同じく商品サイクルが早く、しかも頻繁なアップデート配布などが拍車をかけている。雑誌付録に至っては、印刷部数より多く発注したあげく、大量廃棄ということも少なくない。もちろん、雑誌が売れ残って処分されれば、CDも同時に廃棄される。また、海賊版は出荷枚数の統計に含まれないだろう。“季節モノ”のソフトや音楽が多いことも、生産キャパシティーを増加させる要因の1つだ。いずれにせよ、CDは製造コストが低いので、余らせて処分するのが当然という扱いになっている。

だが、それ以上に生産キャパシティーは過剰だ。2000年の生産キャパシティーは約210億枚。稼働率は69パーセントと、かなり低い。地域別に見ると、西欧では74パーセント、北米では72パーセントと、比較的健全だが、アジアでは65パーセントとなり、いささか不健全と言わざるを得ない。それでも「90年代半ばの供給過剰よりは改善している」(Understanding & Solutionsアナリスト キャロリン・ベインズ(Caroline Baines)氏)という。今後はさすがに設備投資が鈍り、新規参入メーカーも減少、そしてDVDとのハイブリッド生産ラインへの転換が進むとみている。CD-ROM市場予測から、CD全体の市場も縮小が予想されるため、多くのメーカーがDVDへの転換を進めなくてはならないだろう。2004年には、150億枚のキャパシティになるとの予測だ。

しかし、DVDに転換しても安心とは言えない。DVDビデオやDVD-ROM、DVDオーディオを合計した市場は急速に伸びるが、供給過剰になりかねない要因は、CDの場合とまったく同じだ。2004年時点での予測は、出荷枚数が27億枚程度、生産枚数が58億枚程度、キャパシティーが80億枚程度と、現在のCDとよく似た比率になっている。やはり、同じ道を辿ることになるのだろうか。

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