このページの本文へ

【E3 2000レポート Vol.4】X-Box最新情報――インタビューで判明した小さく軽いX-Boxの筐体

2000年05月15日 00時00分更新

文● TERO MODA

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

5月10日から13日の4日間(現地時間)、米ロサンジェルスにおいて“E3(Electronic Entertainment Expo)”が開催されている。E3は、コンピューターゲーム、ビデオゲーム、インターネットゲームにおける、世界最大規模の展示会。

11日に開幕した展示会において、米マイクロソフトは“X”を象った試写室で、同社のゲーム専用機『X-Box』のコマーシャルフィルムを上映した。また、報道関係者にはX-Boxの最新デモが公開された。

ascii24編集部では、米マイクロソフトでDirector of Third Party Relations ConsoleGamingを勤めるケビン・バッカス(Kevin Bachus)氏に、X-Boxの最新情報について話を聞いた。

USB拡張ポートには独自の接続プラグを採用

――拡張ポートの規格について教えてください。これはUSBに決定したのでしょうか?

ケビン・バッカス氏(以下、同)「はい。拡張ポートにはUSBを採用することに決定しました。しかし、接続プラグの形状はX-Box独自で、通常のUSB製品とは異なります。これは、現在のUSBの接続プラグの形状がコンシューマー向きではないと判断したためです」

ケビン・バッカス氏。同氏には、今年3月に開催された“Game Developers Conference2000”でもインタビューしている
ケビン・バッカス氏。同氏には、今年3月に開催された“Game Developers Conference2000”でもインタビューしている



――すると、モデムなどはマイクロソフトが用意することになるのですか? そして、モデム以外の周辺機器を用意する予定はありますか?

「マイクロソフトはオプションとしてモデムを用意することになります。それ以外の周辺機器については、弊社の発表をお待ちください」

――パソコンでもっとも普及している周辺機器といえばプリンターがあげられますが?

「X-Boxはゲーム専用機ですので、プリンターの需要があるとは思えません。マイクロフォンやリモートコントローラーといった機器に需要が集まると思います」

――マイクロフォンは安価な周辺機器ですが、X-Boxにバンドルする予定はありますか?

「マイクロフォンのバンドルについては、未定です」

メモリーカード採用を決定

――メモリーカードリーダーの搭載は、決定事項なのでしょうか? また、メモリーカードはバンドルするようになりますか?

「メモリーカードリーダーの搭載は、決定事項です。メモリーカードのバンドルは、現在、検討中です。本体価格を低くするため、メモリーカードをバンドルしない可能性もあります。たとえば10日に米国での出荷が発表された『PlayStation 2』には、メモリーカードがバンドルされていません。このため、価格を299ドル(約3万2000円)*に抑えることに成功したわけです」

*
日本では、8MBのメモリーカードをバンドルし、3万9800円で販売されている。

――X-Boxにメモリーカードをバンドルする意味は何でしょうか? X-BoxではHDDを搭載し、ネットワークへの対応も十分ですから、データ保存、交換の用途はメモリーカードを搭載しなくてもすでに間に合っているのではないですか?

「X-Boxのすべてのユーザーがネットワークにつないでいるわけではないだろうと考えています。つまり、データ交換に記録メディアを採用するのは、必要な選択だったのです」

――記録メディアにメモリーカードを採用した理由を教えてください。

「小さく、アクセスが高速で、安価であるという点です」

X-Boxの筐体は数ヵ月以内に正式発表

――先日のデモで拝見したX-Boxプロトタイプの筐体は、斬新ではあるけれど、大きく、置き場所に困りそうなデザインです。今後、改良の余地はありますか?

「E3であなた方がご覧になったのは、プレゼンテーション用のもので、製品とはまったく異なります。サイズは、DVDプレイヤー家電製品と同等くらいになりますので、どうかご安心ください」

今イベントのデモや、“Game Developers Conference 2000”の基調講演などで披露された、X-Boxのプロトタイプ。製品版はこれとまったく異なるという
今イベントのデモや、“Game Developers Conference 2000”の基調講演などで披露された、X-Boxのプロトタイプ。製品版はこれとまったく異なるという



――形状は、“X”を象ったものになるのでしょうか?

「それについて、まだお答えすることができません。しかし、数ヵ月以内にX-Boxのコンパクトで斬新な筐体をみなさんに発表する予定です」

――HDDは、3.5インチのタイプを採用するのですか?

「HDDの詳細についても、数ヵ月以内に正式に発表する予定です。現在、お答えできるのは、シングルプラグ、シングルセットの製品を採用するということです。この規格のHDDは、強固でありながらサイズが小さく、安価であるというメリットがあります」

――8GBのHDDが搭載される予定ですが、この容量に変更はありませんか?

「変更になる可能性はあると思います。ただ、8GBが10GBになるかもしれませんが、8GBを目安にしておいて間違いはありません」

――HDDは、コンピューターパーツの中でももっとも壊れやすいものではないのでしょうか? マイクロソフトではどのような対策を講じているのですか?

「まず、品質品質の向上により、HDDはもはやもっとも壊れやすいパーツではなくなったということをご理解ください。われわれはHDDの耐久テストを十分に行ないましたが、X-Boxの採用にはまったく問題がありませんでした。また、ゲーム専用機やパソコンでもっともセンシティブなパーツは、実はHDDではありません。DVDドライブなのです」

――HDDがハードウェア的に耐久性が高いとして、ソフトウェア的な問題が起きる可能性もあるのではないでしょうか?

「そのリスクを回避するために、ソフトウェアテストを重ねています。最悪の場合が生じたとしても、HDDにはオペレーションシステムのような主要なデータを置かない仕様になっているので、X-Boxが使い物にならなくなるといった事態は起きません。また、データ破損の可能性なら、メモリーカードの方が数段高いのです。実際、メモリーカードを採用したあるメーカーのゲーム専用機では、データ破損の問題をよく聞くようですが」

グラフィックスプロセッサの名称

――“X-Box”は、製品の正式名称になるのでしょうか?

「“X-Box”がほぼ確実に正式名称となります。よほど不測の事態が起こらない限りは」

――マイクロソフトがウェブで公開した仕様書に、nVIDIA社と共同開発しているグラフィックスプロセッサの名称が“X-Chip”と記載されていたのですが、これはコード名ですか?

「“X-Chip”ですか? そのことは、知りませんでした。われわれは“X-Box GPU”と呼んでいます。これは正式名称やコード名ではなく、呼称です。GPUは“Graphics Processing Unit”の略号です」

――では、X-Box GPUの開発はどこで行なっているのでしょう?

「nVIDIA社のあるシリコンバレーに開発チームを送っています。仕様などを決定する人材が中心なのですが、プログラマーも数名、このチームに参加しています」

X-Boxのブースでは、X-Boxのデモで使われたキャラクター(左)に扮した女性(右)が写真撮影に応じていた
X-Boxのブースでは、X-Boxのデモで使われたキャラクター(左)に扮した女性(右)が写真撮影に応じていた



オペレーションシステムの仕様

――X-Boxのオペレーションシステムは、DVD-ROMに搭載するのでしょうか?

「カーネル部分は、X-BoxのROM内に搭載します。Windows 2000カーネルをスリムにしたもので、サイズは500KB以下とたいへん小さくまとめられています。APIとドライバー部分は、ゲームソフトウェアのDVD-ROMに搭載されます。これらの内容は、ゲームタイトルによって異なります」

――オペレーションシステムをHDDから起動しない理由は何ですか?

「まず、われわれはX-Boxのオペレーションシステムのアップグレードや変更を望んでいません。その上で、オペレーションシステムをHDDにインストールしないのには、2つの理由があります」

「1つは、使用するAPIやドライバーをゲームタイトルごとに選ぶことができるということ。次に、すべてのX-Boxで同じ状態を保つためです。ユーザーごとにオペレーションシステムの内容(APIやドライバーの種類)が異なっては、困るのです」

――DVD-ROMに搭載されるAPIやドライバーは、どの程度の容量を占めるのでしょうか?

「容量はゲームタイトルごとに異なりますが、プラットフォームがX-Boxに限定されているため、かなり小さなものになります」

開発者への積極的な支援

――X-Boxがターゲットとするユーザー層を教えてください。

「当初は、年齢は18歳以上。最新テクノロジーに惹かれる、ヘビーなゲームユーザーをターゲットにしています」

――X-Boxの開発者への支援状況を教えてください。

「6月にX-Boxの開発ツール『DirectX 8 Tools』を出荷します。現在、マイクロソフトでは、メーリングリストなどのオンラインサポートを用意しています。また、各国でX-Boxのエンジニアチームを結成し、電話などによる開発支援を行なっています」

――開発者がこれらの支援を受けるには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

「まず、弊社に開発するゲームのプランを提出してもらいます。その上で、弊社との契約をゲームタイトルごとに行なってもらいます」

――X-Boxのような新しいゲーム専用機のタイトルを意欲的に制作しようとする開発者には、資金に余裕のない若者が多いと思うのですが、彼らに対し資金的な支援は行なっていますか?

「X-Boxの開発は、安価なPCで行なうことができます。つまり、設備投資をほとんど必要としないというメリットがあります。また、われわれは若い開発者、デザイナー、作曲者たちに資金的な援助を行なってきています」

――ドキュメント情報の提供については、どの程度力を入れているのでしょうか?

「ドキュメントの提供は、もっとも重要な支援だと考えています。日本の開発者たちへは、日本語ドキュメントを提供してきているのですが、これがたいへんな作業となっています。情報量が多く、内容があまりにもテクニカルなため、翻訳作業は難航しがちになります。しかし、X-Boxの成功の鍵はサードベンダーの協力にありますので、われわれはこの仕事を何としてもやり遂げなければなりません」

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン