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【INTERVIEW】主力はモデムからワイヤレス、ネットワークへ――米コネクサント・システムズのデッカー会長兼CEOに聞く

2000年04月14日 00時00分更新

文● 聞き手/構成、編集部 佐々木千之

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通信関連専門の半導体メーカーである米コネクサント・システムズ社をご存じだろうか。アナログモデムに興味のある読者であれば、以前の社名である“ロックウェル”のほうが通りがいいかも知れない。このたび同社のデッカー会長兼CEOが来日したのを機に、同社のビジネスについてお話をうかがった。

独立後株価は3倍以上に

――コネクサント・システムズは以前、米ロックウェル インターナショナル社の半導体部門でした。なぜ分離独立する必要があったのでしょうか?

コネクサント・システムズはロックウェル インターナショナルの半導体部門だったが、'98年11月に分離独立すると発表され、'99年1月に完全に独立するとともに、社名をコネクサント・システムズ(Conexant Systems)と改めた。

ドワイト・デッカー(Dwight W.Decker,Ph.D.)会長兼CEO「ロックウェル社は軍関係や民間向けの産業機械や、航空電子機械などを手がける会社です。一方我々は通信関連の半導体を手がけていて、その目指す分野もかなり違ったものになってきました。また、株主の利益を考えると、1つの会社でいるよりも、分かれたほうが会社の価値が上がると考えたのです。

実際、'99年1月に完全に独立してから1年数ヵ月しか経っていませんが、その間に我が社の株価は最高で5倍にもなりました。ご存じのように、アメリカのハイテク株市場は少し下がり気味ですが、現在でも発足時の3倍以上となっています」

米コネクサント・システムズのドワイト・デッカー会長兼CEO
米コネクサント・システムズのドワイト・デッカー会長兼CEO



――今回の来日の目的は?

デッカー会長「1年に2回くらいの割で来日しているのですが、今回の目的は、1つには顧客企業の訪問――具体名は言えませんが(笑)、もう1つはシャープ(株)と昨年に交わした半導体プロセス技術開発の打ち合わせです」

コネクサント・システムズとシャープは'99年6月に0.15μmルールによるCMOSロジックプロセス技術の共同開発において、包括的提携を結んでいる。

――昨年発表された提携では0.15μmプロセス技術の開発完了は2000年第4四半期とされていますが、この開発は順調ですか?

デッカー会長「はい。非常に順調で、実のところ第3四半期には開発が完了する見通しです。そして、さらに0.13μmプロセス技術について引き続いて開発を行ない、2001年中に開発を完了する予定です。そのあとは0.10μmプロセスと続きます」

シャープを選んだ理由と提携の今後の展開

――プロセス技術の提携先としてシャープを選んだ理由を聞かせてください。

デッカー会長「シャープとはロックウェル時代から30年にわたる協力関係にあるというのが1番の理由です。さらにコネクサントとシャープは半導体関連の売り上げ規模が共に20億ドル(約2100億円)程度と、同じくらいの規模であり、共同開発によるメリットを同じように受けられるということがあります。もしどちらか一方が大きかったり小さかったりすれば、そこから得られるメリットは当然、小さい側にとって有利なものになってしまいます」

上級副社長でワイヤレス・コミュニケーション部門ゼネラルマネージャーのモイズ・ベグワラ(Moiz M.E.Beguwala,Ph.D.)氏「もう1つ理由を付け加えるとすれば、コネクサントはRF(無線)関連の半導体に強く、一方シャープはメモリー分野と、競合しないということもあります」

上級副社長でワイヤレス・コミュニケーション部門ゼネラルマネージャーのモイズ・ベグワラ氏
上級副社長でワイヤレス・コミュニケーション部門ゼネラルマネージャーのモイズ・ベグワラ氏



――シャープとの提携が製造プロセスだけでなく、お互いの得意分野を生かして、統合された1つの半導体製品を製造するといった可能性はありますか?

デッカー会長「“可能性”として無いとはいいませんが、現在のところはありません」

ワイヤレス通信分野が好調

――コネクサントの2000年代1四半期('99年12月末締め)の売り上げは前四半期比13パーセント増の5億1000万ドル(約540億円)、純利益も前四半期比で36パーセント増の5180万ドル(約55億円)と非常に順調ですね。今後コネクサントが注力していく分野はどの分野になりますか?

デッカー会長「コネクサントでは*5つの分野でビジネスを展開していますが、そのうち、ベグワラ副社長が担当するワイヤレス通信関連と、ネットワーク・アクセス関連では、この1年で売り上げが75パーセント増加し、全売り上げの40から45パーセントを占めるようになりました。

ベグワラ副社長は非常にアグレッシブで、彼が責任者になった'96年には2500万ドル(約26億円)規模でしたが、それからわずか4年で20倍の5億ドル(約530億円)に急成長しました。この2つの分野の売り上げを合わせると、全売り上げの65パーセントを占めます。3年前には15パーセントだったのですが」

*5つの分野:パーソナル・コンピューティング――モデム、オーディオ/通信製品。パーソナルイメージング――ファクス、イメージセンサー。ワイヤレス通信――携帯電話、コードレス電話、GPS。デジタル・インフォテイメント――ケーブルモデム、セットトップボックス。ネットワーク・アクセス――xDSL、リモート・アクセス、プロトコル・コントローラー。

――ワイヤレス通信関連では、本日付けで無線半導体コンポーネント会社のカナダのPhilsar Semiconductor社の買収を発表されていますが、このワイヤレス通信関連の市場で、コネクサントが特に力を入れているのはどういったところですか?
――ワイヤレス通信関連では、本日付けで無線半導体コンポーネント会社のカナダのPhilsar Semiconductor社の買収を発表されていますが、このワイヤレス通信関連の市場で、コネクサントが特に力を入れているのはどういったところですか?



ベグワラ副社長「3つあります。1つはCDMA、TDMA、GSMといったデジタルセルラーフォンのハンドセット用半導体、もちろんNTTドコモがサービスを予定しているW-CDMAも含みます。2つ目は音声やデータを含む無線LAN関係、これにはBluetoothや家庭用ワイヤレス電話機が含まれます。3つ目はGPSシステムで、車載用だけでなくもっと小さなハンディー機も含まれます」

――デジタルセルラーフォン用半導体というと、米テキサス・インスツルメンツ社や米モトローラ社などが競合するのではないかと思いますが、コネクサントの強みはどのようなところでしょう?

デッカー会長「セルラーフォンの送信・受信ユニットに使用されるRF半導体はコネクサントが最も得意な部分です。逆にテキサス・インスツルメンツはここは弱いところです。コネクサントはRF半導体、殊に高周波数帯や高出力半導体で有利な面を持つ、Ga-As(ガリウム砒素)半導体の生産ではトップです。生産規模自体もこの1年で5倍に増強しました」

――最後に日本でのビジネス展開についてコメントをお願いします。

デッカー会長「日本市場は、コネクサントの収益の15パーセントを占めており、かなり大きいと考えています。今年はおそらく2億5000万ドル(約260億円)~3億ドル(約620億円)に達するでしょう。次世代携帯電話を含むワイヤレス通信、先端的なデジタルのコンシューマー製品、デジタルテレビがポイントです。また、ドリームキャストのモデムにはコネクサントのアナログモデムチップが使用されており、こちらも拡大を見込んでいます」

――ありがとうございました。
(4月13日)

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