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【GDC 2000レポートVol.2】インタビューで聞くX-Boxの全容――2001年秋には日米同時出荷

2000年03月13日 00時00分更新

文● TERO MODA

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2000年3月8日~12日(現地時間)、米カルフォルニア州サンノゼのSan Jose Convention Centerにおいて、GDC 2000が開催された。10日の米マイクロソフト社のビル・ゲイツ(Bill Gates)会長の基調講演で、ゲーム専用機『X-Box』(仮称)の全容が明らかとなった。

“Game Developers Conference 2000”が開かれたサンノゼの“San Jose Convention Center”。展示会は10日から開催した
“Game Developers Conference 2000”が開かれたサンノゼの“San Jose Convention Center”。展示会は10日から開催した



ascii24では、マイクロソフトのリンダ・ジェフリーズ(Linda Jeffries)氏とケビン・バッカス(Kevin Bachus)氏に、X-Boxについてインタビューした。本稿では、基調講演で語られることのなかったX-Boxの全容に迫る。

ゲーム開発者の希望を反映したハードウェア設計

Program Managerを務めるリンダ・ジェフリーズ氏には、X-Boxが発表になるまでの経緯を中心に話を伺った。

――『X-Box』に関わっているマイクロソフトの社員は、現在、何名になりますか?

ジェフリーズ氏:(以下同)「現在、X-Boxのプロジェクトには50名程度の社員が関わっています。もちろん、今後このプロジェクトにはもっと多くのスタッフが割り当てられることになります」

――X-Boxのプロジェクトは、いつ開始したのですか?

「'98年の終わりごろ、4人のスタッフで開始しました。私自身がこのプロジェクトに参加したのは、ちょうど1年前のことになります」

リンダ・ジェフリーズ氏には、基調講演終了直後に会場において話を伺った。公開されたX-Boxの仕様は基調講演の1~2週間前になってようやく固まった。プロトタイプを組み上げたのも、基調講演前日だという
リンダ・ジェフリーズ氏には、基調講演終了直後に会場において話を伺った。公開されたX-Boxの仕様は基調講演の1~2週間前になってようやく固まった。プロトタイプを組み上げたのも、基調講演前日だという



――たいへん失礼な質問になるかもしれないのですが、基調講演のデモストレーションでは、実際にX-Boxのプロトタイプは動作していたのでしょうか。

「もちろん動作していました。おかげで50名のスタッフはこの数週間、不眠不休で作業をしていたのです(笑)」

――昨年8月末にロンドンで開催したトレードショー“ECTS 1999”(http://www.ects.com/)で、マイクロソフト社はデベロッパー数社をホテルに集めて“X-Box”を紹介しています。このときの目的は何だったのですか?

「昨年8月末から10月にかけて、デベロッパー数社に、X-Boxの仕様に関するリサーチを行ないました。たとえば、ハードウェアの制約がなければデベロッパーはどのようなゲームを開発するのか? 大容量のHDDを搭載したゲーム専用機があるとしたら、どのような使い方を考えるのかといったデータを集めたのです。X-Boxの現在の仕様は、ゲーム開発者たちの希望を最大限に反映したものなのです」

X-Boxは2001年秋に日米同時出荷

Director of Third Party Relations Console Gamingを務めるケビン・バッカス氏には、基調講演で語られることのなかったX-Boxの仕様などについて話を伺った。

――X-Boxの価格を教えていただけますか? 決定していないというのであれば、X-Boxがコンシューマーに受け入れられるために“目標としている価格”でも結構です。

バッカス氏:(以下同)「X-Boxの価格は、まだ決定していません。もちろん、現在のコンシューマー向けPCよりも安価な製品であることはお約束できます。現在私の頭の中にあるのは、400ドル(約4万2000円)以上、1000ドル(約10万6000円)以下といったところでしょうか」

基調講演で発表されたX-Boxプロトタイプの筐体。2001年秋に出荷される製品のデザインはこれと異なるとしているが、基本コンセプトはこれと同じものになるという
基調講演で発表されたX-Boxプロトタイプの筐体。2001年秋に出荷される製品のデザインはこれと異なるとしているが、基本コンセプトはこれと同じものになるという



――X-Boxのプロジェクトチームは現在50名程度だと伺っています。X-Boxのような大規模なプロジェクトの割に、この人員はとても少ないと思うのですが?

「Windows 2000カーネルやDirectXのプログラミングチームも関わっていますから、実際には50名よりもずっと多い社員がX-Boxに参加していますね」

――基調講演の十数時間前(3月10日日本現地時間)、日本でX-Boxの記者発表が行なわれました。このときマイクロソフト(株)の広報担当者の話では、CPUにAMD社のx86互換チップを採用するとのことでした。しかし、ゲイツ会長の基調講演で発表になったのは、“インテル社のPentium III技術を使ったカスタムチップ”です。インテル社のCPU搭載というのは、決定事項ではないのですか?

「インテル社のCPUをX-Boxに搭載するというのは、決定事項です。X-BoxのCPUは、Pentium IIIのテクノロジーをベースに新設計されたものになります。今後、この決定が変更になるということはあり得ません」

この点について、マイクロソフト(株)の広報部では、CPUメーカーの決定については、タイムリミットぎりぎりまで交渉を続けており、その情報の行き違いから、日本での発表時にAMDのものを採用という、誤った情報になってしまった、としている

――ビデオ出力は、NTSC/PAL方式のみになるのでしょうか?

「NTSC/PAL方式以外にも、VGA方式のディスプレーにそのまま接続することができます。VGAディスプレーと、NTSC/PAL方式のテレビへの出力コネクターは物理的形状が異なるわけですが、ケーブル側でこれに対処します」

――拡張ポートインターフェースには、USBが採用されるのでしょうか?

「現在のところ、USBを採用する予定はありません。ゲームでの用途を前提にしたもっとパフォーマンスの高いインターフェースを探しているところです」

――8MBのメモリーカードの搭載がプレスリリースには書かれています。しかし、8GBのHDDを搭載するX-Boxに、メモリーカードが採用する必用があるのでしょうか?

「メモリーカードについては現在検討中で、決定事項ではありません。オフラインでのデータ交換などの用途も考えられますが、今後採用をとりやめる可能性もあります」

――10/100MbpsベースのEthernetポートがありながら、なぜモデムポートがないのですか?

「これは、X-Boxが登場する1年半後のゲームユーザーのインターネット環境を考慮してのことです。大多数のユーザーはすでにモデムを所有していたり、ASDLなどのインターネットへの常時接続の環境が整っていると考えられるため、内蔵モデムは必須ではありません。しかし、X-Boxではモデムを使用できないというわけではありません。拡張ポートにモデムを接続することができます」

――Windows 2000カーネルをベースに新設計されたX-Boxのオペレーティングシステムには、どのような特徴があるのでしょうか?

「Windows 2000上でX-Boxのゲームを容易に開発できるというメリットがあります。しかし、X-BoxではWindows 2000カーネルをそのまま使用しているわけではありません。ゲーム用途のために最適化しているため、純粋なWindows 2000に比べてグラフィックスの表示速度は向上しています」

ケビン・バッカス氏。プロジェクトの開始時からX-Boxに関わっていたという
ケビン・バッカス氏。プロジェクトの開始時からX-Boxに関わっていたという



――X-Boxプラットフォームの開発ツールは、いつごろ出荷されるのでしょう。

「今年4月に、X-Boxのゲーム開発ツールキット『DirectX 8 SDK』の最初のベータ版を出荷する予定です。正式版の出荷は、今年春から夏にかけてのことになります」

――X-Boxプラットフォームのゲームは、開発者が自由に配布、販売できるのですか?

「X-Boxのビジネスは、PlayStation、Nintendo 64、Dreamcastのやり方と似ています。X-Boxの開発者とマイクロソフトの間で契約が結ばれ、開発者からマイクロソフトにライセンス料が支払われることになります。このため、われわれはもっとも安価なハードウェアをエンドユーザーに提供することができます」

――Windows 2000上でX-Boxのゲームソフトは動作するのでしょうか。また、Windows 2000上で動作するX-Boxエミュレーターを出荷する計画はありますか?

「Windows 2000では、X-Boxのゲームソフトは動作しません。X-Boxのオペレーティングシステムは、Windows 2000カーネルをベースに新設計したものであって、Windows 2000と同一のカーネルを使用しているわけではありません。エミュレーターについては、開発の計画はありません」

――X-Boxで動作するウェブブラウザーやワープロソフトなどといった製品を出荷する予定はありますか?

「X-Boxはゲーム専用機であって、コンシューマー向けPCではありません。われわれがゲーム以外の用途をX-Boxに求めることは、今のところありません。しかし、将来そういった機能をX-Boxに持たせる可能性はあるとは思います」

――X-Boxはマルチランゲージに対応しているのでしょうか? たとえば、日本語フォントを搭載する予定はありますか?

「X-Boxは、マルチフォントを搭載します。もちろん、日本語の表示も可能です。日本は言うまでもなくわれわれにとってもっとも重要な市場です。2001年秋、X-Boxの日米同時出荷を目標にしています」

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