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シーラス・ロジック、日本法人設立10年目を迎えて今後の戦略を発表

1999年10月26日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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シーラス・ロジック(株)は、同社およびに米シーラス・ロジック社における今後の戦略を発表した。都内のホテルで開催された記者懇親会には、米シーラス・ロジック社から社長兼CEOのデヴィッド・フレンチ(David D. French)氏が来日、今年9月に社長に就任したばかりの吉田均氏とともに、同社の戦略と方向性について説明を行なった。

米シーラスの100パーセント出資で'89年に設立されたシーラス・ロジック(株)は、今年で設立10周年を迎える。現在は日本市場における営業活動に加え、同社の東京デザインセンターで開発した製品を米国などの工場で生産し、海外に販売するという活動も行なっている。

グラフィック分野から新たな3分野へ

吉田氏によると、シーラス・ロジックグループ全体に占める日本法人の売上は年々増加しており、'93年には日本法人からの売上が全体の5パーセントだったのに対し、'96年には20パーセント、'99年には30パーセントに達したという。さらに、2002年を目処にこの比率を40パーセントに高めたいとし、実際には「今後1~2年で達成できると思う」(吉田氏)とのことだ。

シーラス・ロジック(株)の代表取締役社長を務める吉田均氏
シーラス・ロジック(株)の代表取締役社長を務める吉田均氏



シーラス・ロジック(株)では今後、日本市場において3つの分野にフォーカスを当てていくという。その3分野とは磁気ストレージ製品、光ストレージ製品、消費者向けオーディオ/インターネット製品で、これはシーラス・ロジックグループ全体の方向性とも一致している。

4年ほど前までは、同社の売上はその多くをグラフィックチップに依存していた。Windows3.1が登場しグラフィックチップの需要が高まった時に、グラフィックシステムのワンチップ化をいち早く達成した同社は、「市場の6割以上を握っていた」(吉田氏)という。だが、現在では同部門を他社に売却しており、グラフィック関連分野での売上はほとんどない状態だという。

大胆なリストラで財務を大幅に改善

これは、フレンチ氏が語った米シーラスのリストラ戦略と一致する。米シーラスでは1年前から大幅なリストラを敢行し、同社の新たなビジネスモデルに含まれない部門は縮小、売却される方向にあるという。リストラの目的は「顧客にとってベストな戦略をとること」であり、すでに「リストラはほとんど終了している」(フレンチ氏)とのことだ。

シーラスグループの戦略について説明する、米シーラス社長兼CEOのデヴィッド・フレンチ氏
シーラスグループの戦略について説明する、米シーラス社長兼CEOのデヴィッド・フレンチ氏



大胆なリストラに加え、近年の半導体業界が弱含み傾向であったことから、シーラスロジックグループ全体の売上高は、過去最高を記録した'96年の11億4600万ドルから、'99年では6億2800万ドルにまで落ち込んだ(※同社の'99会計年度は'98年4月~'99年3月)。

だが、フレンチ氏によると同社の財務は大幅に改善しており、2000年第1四半期(4月~6月)では、経常利益率が41パーセントという高レベルに達し、売上の22パーセントをR&D(研究開発)に投資したという。同社ではR&D部門への投資を重要視しているとのことで、現在は市場の要求もあって20パーセント超の投資を行なっているが、「長期的にも15パーセント程度の投資を続ける」(フレンチ氏)予定だという。

R&D部門を核とする知的財産は、フレンチ氏によれば同社の成長に欠かせない重要な要素。同社は890以上の特許(申請中を含む)を持っており、これは同規模の企業では異例なほどの多さだとか。これらの特許に保証された技術は、シーラスが注力する複数の分野にまたがって利用できるとしており、ひとつの分野で確立された技術を他分野にも応用することで、大きなシナジー(相乗)効果が期待できるとしている。

情報家電分野の拡大に期待

同社が注力する3分野について、磁気ストレージ分野では、同社は以前からHDD用のリードチャネルやディスクコントローラーなどで優位を保ってきたという。これからの見通しについては、エンタープライズサーバーやデジタルAV機器向けのHDD需要が大幅に高まると予想しており、ATA-100対応のコントローラーや、同社が得意とする一体化チップの3Ciシステム・オン・チップに事業をシフトしていくという。

また、米3COM社のPalmといったPDAにも、マイクロドライブなどの小型ストレージが搭載されていくという見通しを示し、「よりパーソナライズされた情報家電におけるストレージ需要に対応」(フレンチ氏)していきたいとのことだ。

光ストレージ分野については、CD-RWドライブのEudecで強みを持っていることを活かし、今後はCD-RW/DVDドライブ向けのパーツ生産に集中するとのことだ。特に、消費者向けの情報家電にDVDドライブが搭載されていくとの予測を元に、今後の同分野が大きく拡大成長という予想を示した。

消費者向けオーディオ/インターネット製品の分野では、MP3プレーヤーをはじめとする携帯機器向けのオーディオDSPを、事業の柱にしていくとしている。フレンチ氏によれば、同社は業界で最も早い時期からMP3プレーヤー向けのサウンドチップを供給しており、業界をリードしてきたという。

この分野では、インターネットによる音楽配信の普及に対応するため、オーディオDSPなどで技術力を持つ米AudioLogic社を買収した。現在はクリスタルDACを利用した2チップによるMP3プレーヤーを開発しており、今後は“Maverick(マーベリック)”という製品ラインを投入する。マーベリックはARMアーキテクチャーをベースとしたチップで、顧客が独自のフィーチャーを付け加えることが可能だという。

フレンチ氏は最後に、同社の目標として、“先進的なシグナルプロセッサー分野において、顧客に選ばれるベンダーになる”ことを挙げ、スピーチを締めくくった。

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