ASCII24編集部前口上
筐体の素材としてマグネシウム合金を用いたノートパソコンが大手PCベンダーから相次いで発売されている。中には出荷即完売に近いものもあると聞く。ブームと言っても良いほどの盛り上がりだ。
マグネシウム(Mg)という軽金属の主要鉱物はマグネサイトで、自然界に多数存在する比較的ありふれた物質だ。マグネシウムにアルミニウム、亜鉛、マンガンなどを加えてできるのがマグネシウム合金。自動車のホイールなど、身の回りにマグネシウムを使った工業製品はけっこうある。
だからノートパソコンのボディに使う素材としてマグネシウム合金を採用するというのは合理性がある。いずれ、さらに酸などに対する耐食性の強いチタン合金などを使ったノートパソコンが現われるかもしれないが、とりあえずはマグネなのだ。
しかし、このブームを支えているのはそれだけではなく、やはり強化プラスチックなどの素材ではなしえない金属ならではの高級感あるルックスや肌触りという面での魅力であろう。おおげさに言えば、所有する喜びとでもいうべき、最近のパソコンに久しく感じられなかったものがそこにはある。
各社よりマグネシウム筐体採用のノートPCが発売され、6月30日に発表された(株)東芝の新型『DynaBookSS 3000/6000』シリーズの発売により大手メーカー製マグネシウムノートがほぼ出そろった感がある。SONY、SHARP、松下、東芝、NEC各社のマグネシウムノートPCのスペックを比較するとともに、各機種の特徴をまとめた。購入を検討している方の参考になれば幸いである。
事実上の標準となっているスペックは、B5ファイルサイズでCPUはMMX Pentium-200~266MHz。メモリーは64MB。HDDは2.1~4.3GB。液晶ディスプレーは10.4~11.3インチで、800×600ドット、16bitカラー表示。バッテリー駆動時間は2時間前後。重さは1.3kg前後。キーピッチは17mm、キーストロークは2mm程度。PCカードスロット×1、USB×1。付属品として、外付けFDDが付属、ということになる。しかし、マグネシウム合金の使用量はメーカーによりかなり違っている。それでは、個々のマシンのスペックを見てみよう。
●SONY『VAIO PCG-505EX』
マグネシウムスリムノートのパイオニアともいえるVAIO。海外へも売り込みをかけている
VAIOの筐体は、トップパネル、底面、内側の液晶ディスプレー部、パームレスト部にもマグネシウム合金を採用した、“4面マグネシウム合金ボディ”で、マグネシウム合金の量は多い。重さ1.35kg。ポインティングデバイスはタッチパッド。タッチパッドは付属のペンでも使用できる。33.6Kbpsのモデムを内蔵。シリアルポート、プリンタポート、PS/2ポートなどは別売のポートリプリケーターによって供給されるが、本体にPS/2ポートが無いため、マウスを直接外付けする際はUSBマウスを使うことになる。PC本体の起動時にあらかじめ指定した一連の動作を自動で行なう“プログラマブル・パワーキー”を搭載。起動してすぐにダイアルアップ、メールソフトの起動、メールチェックといったこともできる。Altキー、Shiftキー、Ctrlキーと組み合わせることで、4パターンまで登録できる。バッテリー駆動時間*は約1.5~3時間。別売のバッテリーパック(L)を使用すれば最長6.5時間まで伸びる。実売価格**は26万円台。
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/PCOM/Note505EX/index.html
●SHARP『PC-PJ1』
ストリ-トプライスは高めだが、液晶の大きいところがポイント
液晶ディスプレーは11.3インチで、ほかに比べ一回り大きく見やすい。デザインは一面シルバーで金属感を前面に出しているが、トップパネル以外はカーボン入りの樹脂製で、実はマグネシウム合金の量は少な目。重さ1.35kg。キーストロークは2.5mm。キーボードはソリッド感があり、キーストロークも深めで打鍵しやすい。ポインティングデバイスはタッチパッドで、レスポンスは良い。別売の“アドオンバッテリー”を装着すれば約8.5時間の駆動が可能。このアドオンバッテリーは電源を切ることなく着脱が可能。同梱のFDDはポートリプリケーターの機能も持っており、シリアル、パラレルポートと2つめのPS/2ポートが付いている。56Kのモデムを内蔵。実売価格**は29万円台。
http://www.sharp.co.jp/sc/eihon/pcpj1/text/index.html
●Panasonic『Let's note /S21』
ほかと比べると少し厚めでスリムではないが、バッテリー駆動時間が長いのと、光学式トラックボールがポイント
標準でメモリーを96MB搭載している。重さは1.45kg。外観は持ったときに手のあたるヒンジ部分は塗料を変えて、ざらざらで滑りにくくなっている。トップパネル、内側の液晶ディスプレー部はマグネシウム合金だが、本体部分は強化プラスチックを使用している。マグネシウム合金の量は中ぐらい。キーストロークは2.5mm。キーボードはソリッド感があり、打鍵しやすいが、『PC-PJ1』と比べるとやや剛性が足りない感じがする。ポインティングデバイスには、光学式トラックボールを採用し、細かいポイントはしやすいが、これがほかのノートPCに比べ厚味が増していることの原因の一つになっている。PCカードスロットを2つ(TypeII×2)持つが、モデムは搭載されていない。バッテリー駆動時間は標準搭載のもので約5時間。他に比べてかなり長い時間使用できる点が魅力だ。実売価格**は26万円台。25日よりWindows
98搭載モデルの発売を予定している。
http://www.pcc.panasonic.co.jp/letsnote/top2.html
●東芝『DynaBookSS PORTEGE 3010』
CPUやHDDなどのスペックは一番。小型大容量のHDDを自製した東芝入魂のスリムノート
CPUはMMX Pentium-266MHzで、高スペックを誇っている。HDDも4.3GBと他に比べ大型のものを搭載している。ヒンジの部分に装着されるバッテリーにはラバー素材がかぶせてあり、持ったときに手が来る部分の感触が良い。内側の液晶ディスプレー部以外は、マグネシウム合金を使用し、マグネシウム合金の量が多い。重さは1.19kgと軽く、厚さも19.8mmと、5機種中もっともスリム。キーピッチは18mm、キーストロークは2mmと少し大き目のキーボードだが、タイプするとキーボード全体がたわむ感じがある。ポインティングデバイスは従来のDynaBookシリーズと同じ“アキュポイント”というGBHキーの真ん中にスティックがあるもので、細かいポイントもしやすい。バッテリー駆動時間は約1.5~3.5時間。別売の大容量バッテリーパックを付ければ、約3~7時間の駆動が可能。PCカードスロットを2つ(TypeII×2)搭載し、56KのPCカードモデムを同梱。モデムがPCカードのため、TypeIIのスロットは1つふさがることになる。これもPS/2ポートがないので、PS/2ポートを使いたいときは、別売の“I/Oアダプター”が必要となる。発売は7月10日から。販売店の話によると、実売価格は31万円台になるようだ(取材時は未発売)。CPUがMMX
Pentium-233MHzの『DynaBookSS PORTEGE 3000』もあり、こちらは実売価格**26万円台。
http://www2.toshiba.co.jp/pc/catalog/ss/ss3000/index_j.htm
●NEC『LaVie NX LB20/30A』
大容量バッテリーを2つ使えば最大11時間の駆動時間を持つ
重さは1.25kgと『DynaBookSS PORTEGE 3010』に次いで軽い。トップパネルと底面がマグネシウム合金で、内側は樹脂素材。マグネシウム合金の量は中ぐらいだ。トップパネルの黒い部分は波形に成形されており、さらにラバー素材をコーティングして、手に持ったときに滑りにくくなっている。キーピッチは17.5mm、キーストロークは2.5mm。キーボードは少し幅の広い17.5mmのキーピッチに加え、キートップが小さくなるように左右の角に溝が切ってある。しかし、タイプするとキーボード全体がたわむ感じがあり、打鍵感はもう一つ。ポインティングデバイスはタッチパッド。バッテリー駆動時間は約2.1~2.8時間。大容量バッテリは2種あり、標準のものと交換して使うタイプは、約4.2~5.5時間、底面に装着するドッキングステーションタイプのバッテリーは、本体装着の大容量タイプとあわせて最大11時間の駆動が可能。実売価格**は24万円台。
http://www4.pc98.nec.co.jp/product/nx/lavie/
●性能・デザイン・携帯性……ポイント別評価
あくまでもスペックにこだわるなら東芝の『DynaBookSS PORTEGE 3010』。CPUにMMX Pentium-266MHzを搭載し、HDDも4.3GB。頭ひとつ出た性能だ。デザインにこだわるならば11.3インチの液晶ディスプレーを搭載したシャープの『PC-PJ1』。他に比べ一回り大きな液晶を採用して、画面が見やすいし、一面シルバーのボディもカッコイイ。
携帯性を考えると、ノートPCの場合、バッテリー駆動時間が短いのでどうしてもACアダプターか大容量バッテリーを一緒に持ち歩くことになる。そこで、各社のノートPCのACアダプターのサイズ、大容量バッテリーの駆動時間を比較してみた。ACアダプターではシャープ『PC-PJ1』がもっとも小さい。大容量バッテリーの駆動時間ならばNEC『LaVie NX LB20/30A』がもっとも長いが、ドッキングステーションを付けることになるので携帯性が犠牲になる。バッテリー駆動時間を重視し、トラックボールが好きなら、大容量バッテリーが無くとも約5時間駆動時間のある『Let's note /S21』が浮上する。
ACアダプターのサイズ、重量、対応電圧 | |||
機種名 |
サイズ | ACアダプターの重量 |
対応電圧 |
SONY VAIO PCG-505EX |
幅49×奥行き120×高さ26mm |
220g |
100~240V対応 |
SHARP PC-PJ1 |
幅43×奥行き93×高さ25mm |
275g (電源ケーブル含む) |
100~240V対応(ただし100V以外は保証対象外) |
Panasonic Let's note /S21 |
幅43×奥行き99×高さ26mm |
約200g |
100~240V対応(ただし100V以外は保証対象外) |
東芝 DynaBookSS PORTEGE 3010 |
幅47×奥行き97×高さ25mm |
約210g |
100~240V対応(ただし100V以外は保証対象外) |
NEC Lavie NX LB20/30A |
幅55×奥行き93×高さ21mm |
220g |
100~240V対応(ただし100V以外は保証対象外) |
大容量バッテリーの駆動時間、重量 |
||
機種名 | 駆動時間 | 重量 |
SONY VAIO PCG-505EX |
約3.5~6.5時間 |
338g |
SHARP PC-PJ1 |
約8.5時間 |
420g |
Panasonic Let's note /S21 |
なし |
- |
東芝 DynaBookSS PORTEGE 3010 |
約3~7時間 |
約300g |
NEC Lavie NX LB20/30A |
最大11時間 |
310g(大容量バッテリー)、340g(ドッキングステーション) |
ちなみにマグネシウム合金の量で選ぶなら、『VAIO PCG-505EX』か『DynaBookSS PORTEGE 3010』。どちらも、筐体のほとんどがマグネシウム合金でマグネ度が高い。
●スペック一覧
SONY VAIO PCG-505EX/64 |
|
CPU |
MMX Pentium-233MHz |
メモリー |
64MB(最大64MB) |
ハードディスク |
2.1GB |
液晶ディスプレー |
10.4インチTFTカラー液晶 |
グラフィック表示 |
最大800×600ドット(6万5000色) |
本体サイズ |
幅259×奥行き208×高さ23.9mm |
重量 |
1.35kg(バッテリーパック(S)搭載時) |
バッテリー駆動時間 |
1.5~3時間(バッテリーパック) |
PCカードスロット |
TypeII×1 |
モデム |
33.6Kbpsモデム内蔵 |
価格 |
オープン |
SHARP PC-PJ1 |
|
CPU |
MMX Pentium-233MHz |
メモリー |
64MB(固定) |
ハードディスク |
3.2GB |
液晶ディスプレー |
11.3インチTFTカラー液晶 |
グラフィック表示 |
最大800×600ドット(6万5000色) |
本体サイズ |
幅259×奥行き212×高さ21.2~28.3mm |
重量 |
1.37kg (別売アドオンバッテリー装着時は1.79kg) |
バッテリー駆動時間 |
約2時間(別売アドオンバッテリー装着時は8.5時間) |
PCカードスロット |
TypeII×1 |
モデム |
56Kモデム内蔵 |
価格 |
38万5000円 |
Panasonic Let's note CF-S21/J5 |
|
CPU |
MMX Pentium-200MHz |
メモリー |
96MB(最大96MB) |
ハードディスク |
3.2GB |
液晶ディスプレー |
10.4インチTFTカラー液晶 |
グラフィック表示 |
最大800×600ドット(26万色) |
本体サイズ |
幅255×奥行き192×高さ32.6mm |
重量 |
1.45kg(バッテリー装着時) |
バッテリー駆動時間 |
約5時間 |
PCカードスロット |
TypeII×2 または、TypeIII×1 |
モデム |
なし |
価格 |
オープン |
東芝 DynaBookSS PORTEGE 3010 |
|
CPU |
MMX Pentium-266MHz |
メモリー |
64MB(最大96MB) |
ハードディスク |
4.3GB |
液晶ディスプレー |
10.4インチTFTカラー液晶 |
グラフィック表示 |
最大800×600ドット(1677万色) |
本体サイズ |
幅257mm×奥行き199×高さ19.8mm |
重量 |
1.19kg(バッテリーパック装着時) |
バッテリー駆動時間 |
約1.5~3.5時間(大容量バッテリー接続時3~7時間) |
PCカードスロット |
TypeII×2 |
モデム |
56K、PCカードモデム付属 |
価格 |
オープン |
NEC Lavie NX LB20/30A |
|
CPU |
MMX Pentium-200MHz |
メモリー |
64MB(最大96MB) |
ハードディスク |
2.1GB |
液晶ディスプレー |
10.4インチTFTカラー液晶 |
グラフィック表示 |
最大800×600ドット(1677万色) |
本体サイズ |
幅264×奥行き211×高さ25mm |
重量 |
1.25kg |
バッテリー駆動時間 |
約2.1~2.8時間 |
PCカードスロット |
TypeII×1 |
モデム |
56Kモデム内蔵 |
価格 |
オープン |
(報道局 植草健次郎)
*:文中のバッテリー駆動時間はカタログ表記のデータ
**:文中の実売価格は7月7日現在の価格