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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第31回

テレビ局はなぜ負けた? 津田氏に聞くロクラク事件

2009年02月16日 09時00分更新

文● トレンド編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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著作者団体への「冷や水」になったのでは?

── 今回の判決は、今後どんな影響を及ぼすと思いますか?

津田 「この判決で確定すれば」という条件付きの話ですが、インターネットを利用したタイムシフト/プレイスシフトのサービスが展開しやすくなるでしょう。

 今までは、録画している主体がユーザーであり、私的複製の範囲内で使っているようなサービスであっても、ネットを通してしまうことで否定されてしまう可能性があったわけです。

 しかし、今回それが明確に否定されたことで、今後はこうした類似のサービスが運営しやすくなったんじゃないでしょうか。ネットを活用して自分の所有するメディアを自分のためにタイムシフト、プレイスシフトして楽しめるようなサービスが法的なお墨付きを得たとも言えるかもしれません。

 個人的に興味深かったのは、判決文の「小括」に書かれている以下の文章です。


 かつて、デジタル技術は今日のように発達しておらず、インターネットが普及していない環境下においては、テレビ放送をビデオ等の媒体に録画した後、これを海外にいる利用者が入手して初めて我が国で放送されたテレビ番組の視聴が可能になったものであるが、当然のことながら上記方法に由来する時間的遅延や媒体の授受に伴う相当額の経済的出費が避けられないものであった。

 しかしながら、我が国と海外との交流が飛躍的に拡大し、国内で放送されたテレビ番組の視聴に対する需要が急増する中、デジタル技術の飛躍的進展とインターネット環境の急速な整備により従来技術の上記のような制約を克服して、海外にいながら我が国で放送されるテレビ番組の視聴が時間的にも経済的にも著しく容易になったものである。

 そして、技術の飛躍的進展に伴い、新たな商品開発やサービスが創生され、より利便性の高い製品が需用者の間に普及し、家電製品としての地位を確立していく過程を辿ることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなところである。

 本件サービスにおいても、利用者における適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであるから、かかるサービスを利用する者が増大・累積したからといって本来適法な行為が違法に転化する余地はなく、もとよりこれにより被控訴人らの正当な利益が侵害されるものでもない。 (32ページ)


 インターネットやデジタル技術の普及や、産業発展という観点から積極的にこのようなサービスを認めており、「知財高裁ならでは」とも言える、政策的判断が色濃く反映されたコメントですね。

 カラオケ法理をこねくりまわして、いちゃもんに近い訴訟を多数起こしてきた著作権団体や放送局にとっては、これ以上ない冷や水になったんじゃないでしょうか? 今後実施される著作権法へのフェアユース導入議論にも少なからず影響を与えると思います。


筆者紹介──津田大介


インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ」。



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