カラオケ法理の拡大解釈は終わった?
── この裁判にはどんな背景がありますか?
津田 この種のサービスを考える際にずっと議論になっていたのは、ネットサービスにおける、いわゆる「カラオケ法理」をどう捉えるかということです。
カラオケ法理とは、ものすごく簡単に言うと、ユーザーが著作権を侵害をした際に、「その場」を提供した者にも責任を問うというものです。日本音楽著作権協会(JASRAC)が1988年、音楽テープを流してお客にカラオケを歌わせることで利益を得ていたスナックを訴えた「クラブキャッツアイ事件」が元になっています。
カラオケスナックの場合、客が歌唱するためには店にあるカラオケ装置による伴奏が不可避ですよね。しかも店はカラオケ機器を設置して客に歌わせることで利益を得ていて、店員が客にカラオケで歌うことを積極的に勧めるという行為を続けている。そのため「クラブキャッツアイ事件」では、客の歌唱と店のカラオケ機器の音楽再生を同一視して、店側の著作権侵害を認めたんです。
その判決自体はあまり問題視されなかったんですが、その後、この判決がネットサービスの著作権侵害を争う裁判まで拡張され始めたんですよ。
2002年に起訴されたファイルローグ事件では、このカラオケ法理を元に判決が出されました。違法なファイルをやり取りしていたユーザーだけでなく、ファイル交換サービスを運営していた日本MMOにも著作権侵害を認めて、損害賠償の支払いやサービスの停止を命じる判決が出たんです。
ファイルローグ事件後も、カラオケ法理が拡大解釈されることで、テレビの録画サービスや「MYUTA」のように自分の所有する音楽CDをオンラインストレージに変換・アップして携帯電話で自分だけで楽しめるようなサービスが権利者から訴えられて潰されてきました。私的複製の延長にあるようなサービスでも、カラオケ法理が拡大解釈されることで、否定されてきたわけですね。
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