月刊ビジネスアスキー 2008年11月号掲載記事
「平均3000万円はかかる」などと巷の噂に不安が募るが、実際はどうか。介護の実状に詳しい『老親介護とお金』の著者、太田差惠子氏に聞いた。
ビジネスと同様にまず全貌の把握
もし親が倒れたら、人生設計がすべて崩れるのではないかと、不安に思う方は多いだろう。親と同居するべきか、今の仕事を続けながら介護できるのか、そして何より金銭的に足りるのか。
多くの人が、介護には「平均3792万円※」必要だと誤解している。介護に不安を抱き、また巨額の費用を想像してしまうのは、介護の全貌を把握できていないからだ。だが、介護もビジネスと同様に「プロジェクト」と捉え、コストや労力をきちんと把握すれば、そんな巨額の費用がかかることはまずないことがわかるだろう。
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(平成18年度)より。
例えば、いざ介護という際の作業を次のように考える。
- 「チーム」を組む
- ビジョンを練る
- 情報収集
- 資金のプランニング
- 時間配分の調整
- 効果の確認と軌道修正
親族やケアマネージャー、医師で「チーム」を組み、どんな介護をするか、何ができるのかを洗い出す。また、行政や民間業者のサービスや費用といった情報を収集する。
一般的な介護なら親の年金で十分
肝心の資金プランで重要なのは、「介護にはいくらかかるのか?」ではなく、「いくらかけられるか?」を考えることだ。誰もが高額な有料老人ホームを利用しなければならないわけではない。介護をプロジェクトと捉えて情で行動せず、介護者にできることとサービスに頼めることを、上手に使い分けることが肝心だ。
要介護認定のレベルによって利用限度額は異なるが、表が示すように、介護保険を利用すれば、自己負担額はそれほど多くならない。この程度の額なら、親の年金の中で賄うことも十分可能だろう。
区分 | サービス費用 | 利用者負担額 | |
---|---|---|---|
介護保険適用分 | 訪問介護(週5回×4週) | 8万400円 | 8040円 |
訪問看護(週1回×4週) | 3万3200円 | 3320円 | |
通所介護(週2回×4週、入浴2回) | 5万1040円 | 5104円 | |
福祉用具貸与(車いす) | 7000円 | 700円 | |
短期入所生活介護(2回) | 1万5200円 | 1520円 | |
適用外 | 通所介護(食費、週2回×4週) | 4000円 | 4000円 |
短期入所生活介護(2回) | 3400円 | 3400円 | |
合計 | 19万4240円 | 2万6048円 |
要介護2、所帯段階は第4段階の被保険者の例
そして、介護をプロジェクトとして成功させるために、どのような老後を望むのか、どんなサービスを利用するのかを、まずは日頃から親と話し合っておきたい。