月刊アスキー 2008年7月号掲載記事
日本政府は1枚のICカードに年金手帳や健康保険証、介護保険証の情報を詰め込んだ「社会保障カード」を、2011年度にも導入するという方針を打ち出している。
一方、お隣の中国では、すでにICクレジットカードのような接触型ICカードに健康保険証の機能を持たせた社会保障カードが運用されている。実際、大病院の支払い窓口や薬局のレジでは、自身のICカードをカードリーダに挿しこんで清算する利用者をよく見かける。
この中国の社会保障カードは、電子マネー的な側面も持つ。カード所有者は毎月給料の2%を健康保険基金に支払い、その額がカードにチャージされる。さらに、それと同額が保険基金からもカードにチャージされる。つまり、毎月月給の2%が天引きされ、その倍額の4%がカードにチャージされるしくみになっている。
こうしてチャージされたカードは、病院や薬局で電子マネーのように使用できる。薬局チェーン店では、日本ほど多様ではないがサプリメントやドリンク類、日用品、お菓子なども販売しており、それらもこの社会保障カードで購入できる。医薬品以外にも使えるという点は面白い。また、カードには病院や薬局での電子マネー的な機能だけでなく、一定の入院料や手術料を超えると、カードを提示することで補助金が支給されるという仕組みもある。
ただし、企業は毎月各個人の給料の8%を健康保険基金に支払う必要があるため、多くの中小企業は健康保険に加入していない。加入者のほとんどは、大企業の社員や公務員に限られている。求職者の声を聞くと、就職する際の条件として、健康保険の有無はさほど重要視していないという。
健康保険の加入率はまだ低く(2007年末で約2億人)、またカードに未対応な診療所や薬局も少なくない。このため、現状ではせっかくのカードも、発行地域の一部でしか利用できない。この問題に対して、中国政府の工業和信息化部(工業の情報化を担当)は4月末に、「5年以内に中国全土で使えるように各省市のシステムを統合し、医療保険以外の様々な社会保険も1枚のICカードにまとめる」ことを発表した。奇しくも日中両国で同時に、社会保障を統合したICカード導入への動きが進んでいる。