動きの少ないドラマやアニメに向いたデジタル長時間
BD-REへのムーブ時間も短縮できる
まず、デジタル長時間モードで録画したニュースやドラマなどの番組については、一般的な傾向としてビデオビットレートの低下により映像にノイズが発生しやすく、デジタルダイレクトモードと比較して映像にやや粗さが見られる。とはいうものの、この違いは2mも離れれば分からなくなり、実際の視聴でノイズが目立つほどでない。また、映像の解像度はオリジナルから変更されないため、特に動きが少ないシーンや動きの少ないアニメではデジタルダイレクトモードと比較しても遜色ない品質が維持される。
ただしニュース番組でも、例えばフラッシュが一斉に光るような記者会見のシーン(輝度情報や色情報がフレーム間で大きく変わる)、ドラマであれば走ったり戦ったりといったアクションシーン、さらにサッカーやラグビーの中継といった画面全体が動きの激しい(フレーム間の情報差が大きい)シーンでは、情報量不足からブロックノイズが大量に発生して映像品質が大きく低下する。映像が崩れるのは特に激しく動いた瞬間のみではあるが、ニュース番組はともかくアクションがメインのドラマや映画、スポーツの録画(長期保存)にはハッキリいって不向きだ。このように番組の内容によって向かないものもあるが、アクションシーンの少ないドラマやアニメ、情報番組などの録画には“使える”録画モードといえる。
本機であればHDDに記録した番組を劣化なしでそのままBD-REメディアにムーブ(移動)できるため、「そもそも、デジタル長時間モードって必要なの?」といった疑問もあるかもしれないが、BD-REメディアの価格は片面1層25GBで実売2000円弱とまだ割高感が強い。デジタル長時間モードを用いればファイルサイズをデジタルダイレクトモードの約半分にできるため、HDDだけでなくBD-REメディアに書き出す場合でも2倍の時間の番組を収録可能になる。HDDの空き状況や録画する番組の内容を考えて、上手に使い分けるのがいいだろう。
デジタル長時間モード使用時におけるCPU負荷は、タスク マネージャのモニターを確認する限りでは、デジタルダイレクトモードとほぼ同じで、デジタル長時間モードだからといってCPU負荷が特にかかったり、使用時のレスポンスが下がるといった差は感じなかった。
録画した番組はWindows Media Center(SmartVision)での再生に加えて、BD-REへのムーブに対応。ムーブにかかる時間はデジタルダイレクトモードで記録した30分のハイビジョン番組が約11分かかるところ、デジタル長時間モードでは約7分に短縮された。なお、地デジ番組をSDビデオ品質にダウンコンバートしてDVDメディアにムーブする方法も、従来どおりサポートしている。
NECが運営する直販サイト「NEC Direct」での価格は、PowerPointが付属しないOffice 2007 Personal付属モデルが33万4950円、PowerPoint付きは34万830円となっている。30万円を超える価格を考えると、受信できるテレビ信号が地上デジタル(および地上アナログ)のみでBS・CSデジタルの視聴・録画機能に対応していない点は残念なところだ。
また、個人向けパソコンの用途のひとつに3Dゲームも考えられるが、VW790/LGが搭載する「GeForce 8400M GT」では最新の3Dゲームには力不足な感が否めない。GeForce 8400M GTの採用は3Dゲームというよりも、主に「PureVideo」によるビデオ再生支援機能を狙ったものだろうが、VALUESTAR Wシリーズの最上位モデルであるからには3Dゲームの用途も考慮して、より上位のGPUが選択できてもよかったのではなかろうか。
こうした細かい不満はあるものの、地デジの視聴・録画・再生とひととおりのテレビ関連機能をごく簡単な操作で楽しめるのは魅力だ。しかも番組やBDのソフトを集中して楽しむ際に邪魔になる本体の駆動音は徹底した静音化設計によって大幅に抑えられており、コンテンツそのものの魅力を存分に満喫できる。地デジの録画についてはコピーワンスに替わる仕組みとして「ダビング10」といった案が現在話し合われているなど先の見通しが悪い部分もあるが、これについてNECではアップデーターによるダビング10対応予定を発表している。地デジの視聴・録画にBDへのムーブ、BDソフトの再生といったAV環境をまとめて入手して、長く楽しみたいという人にはVW790/LGは検討に値する選択肢となるはずだ。