月刊アスキー 2008年1月号掲載記事
薄型テレビの好調を横目に、デジタルレコーダの失速が止まらない。DVDレコーダの出荷台数は社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると2007年第1~第3四半期の合計で182万8千台と前年の同時期と比べてマイナス9%の数字にとどまっている。この苦境を打破するきっかけとして期待されているのがコピーワンスの見直し「ダビング10」の実現だ。
2004年4月からデジタル放送にはコピーワンスと呼ばれるコンテンツ保護の仕組みがかけられている。このコピーワンスとは録画した番組を常に1つしか保持しないことで権利者の利益を守ることを目的としている。具体的にはHDDに録画したデータをDVDにダビングすると、HDD内の録画データが消去される。一方、コピーワンスの仕組みには停電やダビングミスなど、不慮のミスによって録画した内容が失われるなどの問題が指摘されており、また対応する製品を購入したユーザーか らは扱いの不自由さについてメーカーのサポート窓口に苦情が寄せられていた。
これらの声に応える形で総務省の主導によりコピーワンス見直しの議論が行われ、最新の案としてまとまりつつあるのが先に挙げた「ダビング10」なのである。
ダビング10が導入された後には、録画した番組を最大でディスク10枚に残すことができるようになる。また、コピーワンス見直しの報道などを受けて、その行方が決まるまで見守り、購入を手控えてきた層が購入に回ることも考えられる。特に今回の見直しは従来機種での対応が難しい部分も多く、基本的に新機種のみを対象としている。このため、デジタルレコーダの導入や買い換えが進むタイミングとなる2008年の北京五輪までには、各社販売している全機種をダビング10対応として発売することは絶対に外せない状況だ。
それでは、実際にいつになったら「ダビング10」は始まるのだろうか。現在ダビング10の実施に向けたルールの策定は急ピッチで進められているものの、最終的な導入に向けて運用ルールの策定が進められている段階で正式な開始日時は確定していない。
一方、実際に発売されているレコーダに目を向けると、この秋の新製品として発売されたソニー、パナソニックの次世代レコーダは非公式ながら「ダビング10への対応を予定」とコメント。東芝が発表した新製品は公式リリースでダビング10対応予定をうたっている。正式な運用開始のアナウンスに先行して対応機器が登場することからも、各社のダビング10にかける期待の大きさを見てとることができる。