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主要ISPや通信事業者が採用するアンチスパムを中小ISPにも――米クラウドマークに聞く

2007年08月27日 20時53分更新

文● アスキービジネス編集部

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独自のスパム対策技術に強みを持ち、国内の大手ISPにも多くの採用実績を上げているのが、米クラウドマークのメールセキュリティ製品だ。8月27日、同社は小規模ISPや企業向けの新製品として「Cloudmark Authority for Apache SpamAssassin」を発表した。今回は来日した、北アメリカ・アジア太平洋担当バイスプレジデントのカート・ルイス氏と、ビジネス・ディベロップメント担当シニアディレクターのフィン・マックレイン氏にインタビュー。新製品の特徴と日本市場への取り組みについて話を聞いた。

主要ISPや通信事業者が 採用するスパム技術を中小 ISPにも―...

(左から)北アメリカ・アジア太平洋担当バイスプレジデントのカート・ルイス氏、ビジネス・ディベロップメント担当シニアディレクターのフィン・マックレイン氏


ユーザーのフィードバックをもとにスパム判定の精度を向上


――クラウドマークが提供するソリューションとはどのようなものか。

フィン・マックレイン氏:現在、電子メールの9割以上はスパムやウイルスなどの悪用メールであり、その割合は年々増加傾向にある。悪用メールを送信する側の手法も巧妙化してきており、それを阻止するためのコストは膨大なものになる。昨年の統計では、阻止に掛かったコストはグローバルで200億ドル以上といわれている。

 当社が提供するソリューションは、こうした問題を解決しようというものだ。具体的には、アンチスパム、アンチフィッシング、アンチウイルスの3つのソリューションを提供している。

――その特徴について、簡単に教えてほしい。

マックレイン氏:98%以上のスパムを検出できるアンチスパムが最大の強みだ。(スパムでないメールをスパムと判断する)誤検知もほぼゼロで、処理速度は競合他社の20倍以上の速さを持っている。ほかにも、独自開発のアンチフィッシングや、検出速度に強みを持つアンチウイルスも特徴だ。

 当社の製品を利用することで、ISPや企業はスパムメールの侵入を防ぎ、顧客満足度や従業員満足度を高めることができる。また、CPUの稼働率を抑え、ネットワーク帯域にかかるコストを削減できる運用上のメリットもある。

――御社の強みであるスパム対策技術について、詳しく教えてほしい。

マックレイン氏:ダイナミックなフィンガープリント(スパムに共通する特徴点を抽出したもの)技術と、世界中から寄せられるフィードバック、そして信頼評価システムによって、世界最高クラスの判定精度を実現している。

 もう少し詳しく紹介しよう。まず、「アドバンスト・メッセージ・フィンガープリンティング・アルゴリズム」と呼ばれる独自のフィンガープリント技術で、バックエンドから来るメールをすべて分析する。

 クラウドマークを利用するユーザーは同時にリポータを兼ねており、新種のスパムを発見した際には、Outlookなどのクライアントメーラに組み込まれたプラグインを操作して報告する。こうしたフィードバックが世界中から届き、当社のデータベースが瞬時に更新される。また、報告内容をもとにリポータに対して格付けを行なう「信頼評価システム」があり、フィードバックの質を保つことで誤検出を防いでいる。

――現在の製品ラインナップと日本における導入実績は?

マックレイン氏:これまで日本では、大規模なISP向けに「Cloudmark Authority」と「Cloudmark Gateway」の2つの製品を販売してきた。Cloudmark Authorityは、sendmailなどの既存のメールプラットフォームに統合可能なエンジン。もう1つのCloudmark Gatewayは、Authorityとメールプラットフォームを統合したゲートウェイ製品だ。

 日本においては、現在のところ、OCNやDTI、ビッグローブ、ソフトバンクテレコムなど、大手通信事業者やISPが当社の主要な顧客となっている。また、パートナー企業としては、センドメール、富士ゼロックス、住商情報システム(SCS)などがある。SCSの親会社である住友商事は、我々に出資している株主でもあり、国内総代理店として扱っている。


新製品で中小ISPを開拓、今後は企業向けやモバイルにも注力


――今回、中小ISP向けの新製品を日本市場に投入する。

主要ISPや通信事業者が 採用するスパム技術を中小 ISPにも―...

「Cloudmark Authority for Apache SpamAssassin」の概要

マックレイン氏:オープンソースのアンチスパム製品「SpamAssasin」を使っている中小ISPや一般企業向けに、「Cloudmark Authority for Apache SpamAssassin」を発売する。SpamAssassinは、10万以上の組織で導入されており、今回の製品をプラグインとして追加導入することで、当社のエンジンを利用できるようになる。従来に比べて、低コストで構築できるのがメリットだ。

カート・ルイス氏:すでに先行して発売している米国では、コストをかけずに導入できるということで、非常に人気がある製品だ。日本でも、少なくとも数十~数百の事業者でこの製品を使ってもらえると思う。

――日本ではISP向けの製品が中心だが、海外では一般企業向け製品も発売している。

ルイス氏:一般企業向けに販売するには営業部隊が必要だ。そのため、パートナーと一緒に行動していく必要がある。日本ではSCSが当社のパートナーであり、SCSを通じて販売していく。

 また、米国では、一般企業向けに、Microsoft Exchange Server用のプラグイン製品もリリースしている。今後、この製品を日本でも発売すべく、パートナーとの協議を進めている。

――そのほか、今後、どのような分野に注目しているか。

ルイス氏:日本では、今回の新製品による中小規模層の取り込みに加えて、モバイルに注力したい。ここ最近、PC向けの電子メールだけでなく、SMSやMMSなどの携帯電話のメールの間でもスパムも増えている。北米ではまだこれからだが、日本やアジア太平洋、英国では特にモバイルに対する需要が高く、市場はどんどん広がっていくだろう。

 今回の来日の目的も、こうした新しい分野の顧客に会うためだ。すでに我々は大手ISPに対する豊富な採用実績を持っており、それはモバイルの分野においても強みとなるはずだ。

――最後に、日本市場における中長期的な目標を聞かせてほしい。

ルイス氏:具体的な数字を挙げるのは難しいが、ひとついえることは、当社はこの分野で、すでに日本市場における支配的な地位にあるということだ。

 現在、日本の主要なISPの12社のうち、8社は当社の顧客となっている。こうした状況を、中小のISP向けや一般企業に対しても広げていきたい。それが当社の将来的な目標だ。

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