SAPジャパンは6月13日、パートナー企業が提供する中堅企業向けのERPパッケージ「SAP All-in-One」を刷新した。ERP導入にかかる費用と期間および実現可能な機能を顧客に明示し、中堅企業におけるERP導入を推し進める。
6カ月以下、1億円前後でのERP導入を明確化
「SAP All-in-One」は、ERPソフトの最新版「SAP ERP 6.0」(旧SAP ERP 2005)に、各業種に適合した設定を施した状態で各パートナーが出荷するもの。ハードウェアや導入サービスなどをセットにして提供するため、文字通り“オールインワン”でERPの導入を目指すソリューションパッケージである。一般に、期間や費用が不明確だといわれるERPの導入を明確化し、リソースが限られる中堅企業でもERPを導入しやすくなるというのが売りだった。
だが、実際には「従来のAll-in-Oneの基準はある意味あいまいなものだった」(SAPジャパン バイスプレジデントの神戸利文氏)。そこで今回、SAPジャパンはAll-in-Oneのプログラムを刷新して基準を明確にし、「目に見える形、短期導入が可能な方法、納得感のある価格」(神戸氏)を実現した。
新しいAll-in-Oneでは、まず、対象となる業種の分類を見直し、従来は「製造業」や「組み立て製造業」といったレベルで分類されていた業種をさらに細分化した。「(特定業種に特化することで)その業種・業態におけるフィット率を100%にもっていき、不要な工数を削減する」(神戸氏)という。
また、導入によって実現できる機能の範囲を具体的に顧客に提示し、導入前と実際とのズレを極力抑えるようにした。「個別に決めるのではなく、事前に定義できるものはすべて定義しておく。『この範囲ですがよろしいですか』と納得してもらった上で決めてもらう」(パートナー&マーケティング統括本部ソリューションマーケティング部長の加藤慶一氏)。具体的な施策として、パッケージに標準で含まれる機能とオプションを切り分けて記載する「実現機能確認シート」を用意。シートの作成と顧客への提出をパートナーに求めていく。
お詫びと訂正:記事掲載当初、加藤慶一氏の役職名の記載に誤りがありました。関係各位にお詫びするとともに訂正いたします。記事は訂正済みです(2007年6月14日)。
さらに、導入までの期間についても原則として6カ月以内に定め、あらかじめ顧客と約束するなど、「パートナーとユーザー、相互のリスクを減らす」(神戸氏)ためのさまざまな施策を盛り込む。
All-in-Oneの中心となる価格帯は1億円。「中堅企業では、最終的なトータルコストで2億円程度がほぼ限界」(神戸氏)といい、All-in-Oneでは基本的にこの範囲内に収まるようにした。すでに21社が新しいAll-in-Oneのパートナープログラムへの参加を表明しており、7月から順次、新プログラムによるサービスを提供していく。「今回の21社だけでも相当な業種をカバーできる。まずは年内に21社をスタートさせ、来年からはさらに拡大していきたい」(神戸氏)。
中堅中小企業は、SAPが「エンタープライズSOA」と並ぶ成長の2本柱と位置づける戦略的な分野。同社では年商50~1000億円を中堅企業と定義し、このうち年商500億円未満の企業に対してAll-in-Oneの導入を促していく。神戸氏は、「『SAPはお金もかかるし、時間もかかる』という不安を解消したい。All-in-Oneで、中堅企業は“あのSAP”が安く、早く、安心に利用できるようになる」とアピールしている。