サイレックス・テクノロジーは、1月23日、組み込み製品へのバイオメトリクス事業を拡大することを明らかにした。これに先駆け、22日に東京都内で開催された同社主催のプライベートイベント「S-DRIVE」では、河野剛士社長らが製品戦略と意気込みを語った。
「100%運用」「生体認証」「標準準拠」で事業を再構築
「われわれのバイオメトリクス製品が目指すのは、『100%運用』『生体認証』『標準準拠』の3つ。当たり前のことと思うかもしれないが、これまで業界全体で当たり前のことができていなかった」
サイレックス・テクノロジーの取締役兼代表執行役社長である河野剛士氏は、同社のバイオメトリクス事業の指針についてこう語る。プリントサーバなどを手がける同社が同事業へ参入したのは2000年。以来6年間に渡り、PCカード/USBタイプの指紋認証センサや、機器組み込み用モジュールを開発・販売してきた。だが、ビジネスとしては、必ずしも大きな成功を収めるに至らなかったという。その原因は、「他社に比べて自社製品が特に劣っていたわけではない」(同氏)ものの、顧客が求めるレベルと製品との間に乖離があったと河野氏は分析する。
そこで同社は、2005年夏から、バイオメトリクス事業の再構築に着手。顧客満足度の向上を図るため、冒頭、河野氏が掲げた『100%運用』『生体認証』『標準準拠』の3つの指針に基づき、製品を見直した。
まず、認証に用いるセンサ部分を従来の静電容量方式から、指の表皮下にある「真皮」と呼ばれる部分を読み取るRF方式へと切り替えた。同方式は、乾燥肌や汗に強いのが特徴で、指表面に多少の傷がついていても指紋の登録が可能だという。「1%程度登録できないユーザーがいるだけでも、1万人レベルでは100人が使えないことになる。これでは導入できない」(河野氏)という状態をほぼ解消した。さらに、センサと読み取りに使う真皮部分が直接触れることがないため、センサ表面に傷がついても利用でき、製品の耐久性向上にも繋がった。
また、「米国では政府系機関の入札用件にもなっている」(上席執行役バイオメトリクス・オーセンティケーション事業本部長の岡野喜男氏)という、標準規格のISO 19794-2に準拠したアルゴリズムを採用した。併せて、新しいアルゴリズムでは擬似指紋認証対策を施し、生体以外に付着した指紋による認証を防いでいるとしている。
組み込みビジネスを拡大、小型化や電池駆動も目指す
こうした新しい取り組みを実際の製品に反映させたのが、同社が昨年、相次いで市場投入した「S1」「S2」「S3」だ。
S1/S2は、PCにUSBで接続して使う外付けタイプの指紋認証センサで、Windowsログオンやスクリーンセーバロックなどの機能を持つ専用ソフトを含むパッケージ製品として販売している。S1/S2ともに認証処理をPCで行なう点は同じだが、S1は指紋画像データをPCに保存するのに対して、S2はこれをICカードに保存する点が異なる。
一方、S3は、CPUとしてARM9を搭載し、指紋の登録・特徴点の抽出から照合処理までを単独で行なうことができる、組み込み用途に適した製品だ。同社は今回、このS3を使った組み込みビジネスを拡大することを明らかにした。
具体的には、S3とSDK、カスタムハードウェアの設計、コンサルティングサービスなどを提供。自動販売機やPOS端末などの決済、入退出管理やロッカーなどの物理アクセス制御といった用途へ向けて売り込む。また、今後、S3の小型化や電池駆動化、省電力化、非接触型ICカードとの連携などを予定しているという。
「指紋認証は、やっとユーザーが満足できるレベルの製品になったのではないか。いよいよ2007年、これらを大きな商材として、サイレックスは再度、バイオメトリクスに注力していく」と河野氏は意気込みを語った。
- ■関連サイト
- サイレックス・テクノロジー
- http://www.silex.jp/