このページの本文へ

「カタギでも音楽は出来る」 ニコ動・ペンプロさんの決意

2010年04月14日 12時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部  取材協力● 広田稔

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

「どうやら時は来たらしい」

―― しかしよく辞められましたねそれは。

ペンプロ 作戦を考えたんです、音楽を辞めたフリをしようと。

―― 辞めたフリというと。

ペンプロ 何を言っても「説得」されるので、楽器を全部その人に売ったんですね。それを見てさすがにあきらめたみたいで。その人がクルマに楽器を積みこんで「楽して生きろよ!」って走り去るのを見て「オレはまたよみがえるぞ」と。

「オレはまたよみがえるぞ、と」

―― ドラマだ……。

ペンプロ とはいえお金もスッカラカンだったんで、マジメに働いて資金難を乗り越えよう、たぶん音楽業界に波が来るからそのときに乗ればいいと。2005年のことです。

初音ミク

―― 討ち入り前の忠臣蔵のような。

ペンプロ ちょうどそのときmixiやYouTubeが流行りはじめて、あ、これは(ネットが)来るな、と思って。それまではネットで音楽って言っても「オフィシャルページ持ってます! キリッ!」くらいの感じだったんですけど。で、2年後に「初音ミク」が出て。

―― おー、待ち望んでいたものじゃないですか!

ペンプロ でもあのパッケージで、その上「Windows専用」ですよ。最初は「歌える」と言われても信用できなくて。「オレは本気なんだよ!」と思ってたんですが、それを打ち壊してくれたのがbakerさんの「celluloid」で。



celluloid : 2007年10月、ニコニコ動画で人気を呼んだ「初音ミク」を使ったロックナンバー。当時キャラクターソングやテクノポップ系の曲が多かった「初音ミク」ソングの中では異端の存在で、とても評価が高い。

―― おー! そういう人多いですよね。

ペンプロ 初めに聴いたとき、空気公団を思い出したんです。で、これ使い方によっては下北沢みたいなことも、シブヤ系っぽいことも出来るなと。ただその段階では自分の活動にどう使うかが分かってなかったんですよね。

―― それは「キャラクターソングを作る」ということで?

ペンプロ そうではなくて、まだ自分の音楽活動とつながらなかったんです。なんですが「メルト」が出てきて、その再生数を見たときに、えっ、と思って。



メルト : 2007年12月、ニコニコ動画で発表されるや、再生数がすぐさま100万回を超えた「初音ミク」の伝説的なヒットソング。作曲はryo。現在の再生数は500万回を超え、お気に入りをあらわす「マイリスト」には16万人が登録している。

―― それはどういう意味で?

ペンプロ TK育ちなんで数字とか大好きなんですよ。

―― あー、なるほど。

ペンプロ muzieなんて100人が聴けばせいぜいですよ。なのにこれは100万人が聴いて、1万人が「気に入った」と意思表示してる。それを見て「どうやら時は来たらしい」と。

muzie : 1999年、「My-Melody」という名前で開始した音楽配信サービス。2001年に「muzie」に改称し、Aqua Timez、らっぷびとなどを輩出。

―― ついに忠臣蔵の「討ち入り」ですね。

ペンプロ ちょうど(ミクに)Mac用のサポートも付いたころだったので、「これは来たぞ」と。就活しながら、昔から書きためてた曲を打ちこんで。

―― そのときは割と抵抗なく?

ペンプロ いや、それが恥ずかしいんですよ。歌詞を書いたのはペンプロになってからが初めてだったので、それを歌ってくれるのがとにかく恥ずかしかったです。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン