「こうしてみんなビッグになった」
―― まず、音楽の原点はどこになるんですか?
ペンプロ 子供の頃からピアノはやっていて、ポップスの原点は小室哲哉さんです。
―― お、やはり90年代的な! するとポップスがルーツになるんですか。
ペンプロ それだけじゃなくて、TKのルーツで音楽を勉強したんです。ピンク・フロイド辺りから始めて、図書館みたいにツタヤに通って。嫌いなものも知らなきゃと思って、ディープ・パープルなんかも聴きました。嫌いなんですけど。
―― すごい、なんかまじめですね。
ペンプロ ヒットを出すためには好き嫌いしちゃダメだなと思ってたんですよ。
―― 作曲もやっぱり小室さん的な発想なんですか?
ペンプロ 山下邦彦さんの「楕円とガイコツ」という本に小室哲哉さんのことが書いてあるんですけど、いまだにそれを基準にしてるんです。ドビュッシーやわらべ歌との類似点とか、コード進行とは無関係にメロディが泣けるとか。
―― やっぱりまじめですね。そのまま音楽は続けていったんですか?
ペンプロ はい。2003年くらいに大学に入った頃は、着メロを1曲何千円とかで打ち込んだりしてたんです。ただ……。
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楕円とガイコツ―「小室哲哉の自意識」×「坂本龍一の無意識」 |
―― ただ?
ペンプロ その頃はぼくの中で小室哲哉さんや小林武史さんがいた「音楽業界」がガラガラ崩れていった時期なんですよね。でも、90年代を見てきたせいか、ゼロ年代の音楽シーンには居場所がなくて。
―― なるほど。それでも音楽は続けたんですか?
ペンプロ 音楽業界で下働きを始めたんです。ライブハウスのオーナーに「プロのバンドのローディーさせてください」と言って。
―― ローディーって?
ペンプロ 取り巻きです。みんなでバンドについて、ワゴンの運転手やったり、荷物持ちやったりっていう。
―― あ、なるほど。本当に下働きみたいなものですね。
ペンプロ まあ20歳そこそこだったんでナメられるんですよね。「気持ちが軽い!」とか説教食らって、お金が払われないこともよくあって。もはや仕事の概念がなくて。
―― うわあ。なんでそんなところに行っちゃったんですか。
ペンプロ 相場とか世間の常識を知らないんで、「こうやってみんなビッグになったんだ!」みたいな感じで。それでも2年くらいはやってたんですけど。
―― 最後に辞めたのは心境の変化とか、それとも業界の変化を見て判断したとか?
ペンプロ 心境の変化というか、ちょっと場所が違うかも知れないっていうのに気づいたんです。なんというか、ちゃんとした説明が出来ない人たちが多くて。
―― というのは。
ペンプロ バーン!(机を叩く)みたいな。「おめえ、オレ怒らせたな。あいつ強えから、待ってろ」って仲間を呼ばれたりして。
―― 確かに話出来ないですよね、それは。
ペンプロ そういう、切った張ったの世界がフツウに思えたんですよ。「とりあえず目を見ろ、ハイって言え、よし!」みたいな。「分かる」まで責められる。それが終わると、肩組んで「よし、ラーメン食べるか!」みたいに仲良くなって。悪い人ではないんですけど。