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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第145回

仮想通貨、規制の足音再び?

2021年09月21日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 仮想通貨に対する規制強化の足音が聞こえてきた。

 と言っても、現時点では日本国内の動きというより、米国の話だ。

 この数ヵ月、米国の金融当局の高官や有力議員が相次いで、仮想通貨に対する規制を強化する必要があると発言している。

 9月5日付のニューヨーク・タイムズは、米国の政府機関や議会があるワシントンで仮想通貨に対する警戒感が強まっていると報じている。

 背景には、金融関連のさまざまな分野への仮想通貨の進出が加速している現状がある。

SEC委員長の手紙

 米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は2021年8月5日、上院銀行住宅都市委員会の有力議員、エリザベス・ウォーレン上院議員に書簡を送った。

 書簡の中で委員長は「現在、(仮想通貨)プラットフォームを使っている投資家は、適切に保護されていない」と警告を発している。

 「私の意見としては、仮想通貨の取引、貸付、DeFi(分散型金融)プラットフォームに集中して立法上の優先事項とする必要がある」と述べている。

 書簡に出てくるDeFiという言葉については、少し補足がいるだろう。

 DeFiには、特定の管理者がいないとされる。DeFiの典型例としてよく説明されるのは、分散型取引所だ。分散型取引所はユーザー間で仮想通貨を交換することができ、管理者がいないとされている。

 ネットワーク上に仮想通貨を交換するシステムは存在するが、それを管理する会社や団体は存在しない。銀行員も、トレーダーも取引所の社員もいない、急進的で新しい金融のあり方だ。

「仮想通貨は違法行為天国」

 書簡の送り先であるウォーレン上院議員は、2020年の大統領選の予備選に立候補していた米民主党の有力議員だ。最近の発言をひも解くと、仮想通貨に対する見方は極めて厳しいことがわかる。2021年6月9日、銀行住宅都市委員会でこう述べている。

 「仮想通貨は、違法行為天国になった。オンライン上の盗難、麻薬の密売、身代金要求、その他の違法行為は、仮想通貨でよりやりやすくなった」

 ゲンスラー委員長の書簡は、仮想通貨を含む証券取引を所管する当局のトップが、立法府の有力議員に対して、仮想通貨の取引、貸付、DeFiへの規制を強化する法律をつくるよう促すものと位置づけられる。

 遠くない将来に、規制強化の流れは避けられない局面にあると思われる。

仮想通貨担保金融

 仮想通貨を担保に法定通貨を貸し付けるサービスも登場している。

 その一例として挙げられるのは、BlockFi(ブロックファイ)という企業だ。

 同社は、ビットコインやイーサリアムなどの主要仮想通貨を担保に米ドルを貸し付けている。

 売りは「仮想通貨をホールド」したまま、キャッシュを得られる点だ。

 利用者は、保有するビットコインの50%に相当する米ドルを借り入れることができる。2021年9月16日夜の時点では、1.04BTCに対して、2万5000米ドルの借り入れが可能だ。

 たとえば、ビットコイン価格の上昇が続きそうだと予想するなら、ビットコインを担保に、まとまった額の米ドルを借り入れる。

 予想通りビットコイン価格の上昇が続けば、ホールドしたまま、金利の支払いを済ませ、元本の返済までできるかもしれない。

 「クリプト・レンディング」などとカタカナで言われると、何か新しいものが生まれたとの気分にもなるが、要は、担保を取ってお金を貸してくれる会社だ。

 ただ、これまでと違うのは、手続きの自動化だろう。

 借りた金の返済ができなくても、督促状が送られてきたり、顔の怖いおじさんが自宅に押しかけてきたりはしないのだろう。担保として提供した仮想通貨が、BlockFi側に移転するだけだ。

 ただ、BlockFiに対しては、すでにSECを含む複数の当局が調査を進めているとの報道もある。

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