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小島寛明の「規制とテクノロジー」第29回

「情報銀行」初認定 データ提供でポイント貯まる

2019年07月01日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 「情報銀行」として、初めて認定を受けた企業が決まった。

 情報銀行は、個人のデータを預かって管理し、本人の希望に基づいて他の事業者にデータを提供する。

 認定された情報銀行は、日本IT団体連盟(IT連)が定める情報セキュリティやプライバシー保護の対策に関する基準を満たしているとされる。

 IT連は2019年6月26日、三井住友信託銀行とフェリカポケットマーケティングの2社を、情報銀行として認定したと発表した。

 基準を満たす企業を認定することで、個人データの流通を活性化する狙いがある。ただ、情報銀行に該当する事業をする上で、認定が必須の条件とはされていない。

 最初に認定を受けた企業の1社フェリカポケットマーケティングは、情報銀行事業を通じて地域の振興を目指しているという。計画を詳しく見てみたい。

●イオンやソニー出資のフェリカポケットマーケティング

 フェリカポケットマーケティングはイオンやソニーが出資する。イオンは電子マネーWAONを発行し、ソニーはWAONの基盤となる技術Felicaを提供しているという関係だ。

 フェリカポケットマーケティングが提供するサービスを単純化すると、地域で電子マネーで買い物や食事をした利用者に「地域ポイント」を付与し、地域での買い物でポイントを使ってもらうというものだ。

 今回、フェリカポケットマーケティングが公表した情報銀行を核とするサービスには「地域振興プラットフォーム」という仮称がつけられている。現時点では、IT連から「サービスが開始可能な状態」とされる「P認定」を受けている。

●活動データと属性データを集める

 同社が情報銀行として集めるデータとして「活動データ」と「属性データ」の2つが挙げられている。

 活動データとしては次のような情報が含まれる。

・飲食店での食事
・商店での買い物
・ウォーキングなどの運動
・健康診断の受診
・ボランティア活動への参加
・スポーツへの参加
・芸術・文化活動への参加

 属性データは、個人の属性に関わる情報だ。

・年齢
・性別
・住所
・趣味
・嗜好

 こうした情報を、フェリカポケットマーケティングが収集・管理する。データの提供元となる個人は、どんな情報を、どの事業者に提供していいかなどを選択する。

 そば屋、スーパー、スポーツクラブ、居酒屋といった地域の事業者は、データを提供した個人に対して、情報銀行を通じて地域ポイントを付与。地域での消費行動に地域ポイントが使えるというものだ。

広島で始まっている「地域ポイント」の取り組み

 現時点で、情報銀行と連携するかどうかは定かではないが、フェリカポケットマーケティングがシステムを導入している広島の事例が参考になりそうだ。

 広島市を中心とした24市町で、「広島広域都市圏ポイント」という地域ポイントの取り組みが始まっている。県境を接する山口県の東部は、広島市に通勤している人も多いためか、山口県の一部も広域都市圏に含まれる。

 イオンが発行しているWAON、JR西日本が発行するICOCA、広島のローカル交通系ICカードPASPYを使って、加盟店で買い物をするとポイントが貯まる。

 地域のイベントに参加してもポイントがもらえる。ポイントの対象とされるイベントは、地元のバスケットボールチーム広島ドラゴンフライズの試合観戦、健康診断の受診、野菜づくりの講座、原爆投下で被爆した建物めぐりなどがある。

 イオンモールに出かけて、施設内に6ヵ所ある端末のうち4ヵ所以上にWAONでタッチするとポイントがもらえる、というイベントもある。

 たまったポイントを買い物に使うのもいいが、地元の学校に寄付するという使い方も用意されている。

 こうした仕組みに、情報銀行の機能が追加されるのだろうか。フェリカポケットマーケティングに問い合わせたところ、「候補になりうる地域のひとつ」との回答があった。

 「数多くの自治体と関係がありますが、現時点でどの地域かは確定していません。広島では『広島広域都市圏ポイント』の取り組みを行なっておりますが、それ以外の地域でも様々な事業を行なっており、広島は候補となる可能性のある地域の1つとなります。今後、自治体や地域の事業者の皆様と相談しながら、決定したいと考えています」

●情報銀行が地域を活性化するには

 ここからは仮定の話になるが、情報銀行の機能が「広島広域都市圏ポイント」に追加されたケースを考えてみよう。

 たとえば広島市役所が主催するイベントに参加した人が、年齢や性別、居住地域といった属性データを提供する。

 参加者の中で、属性データの提供を承諾した人にはポイントを付与。イベントの主催者側は、参加者に高齢者が多ければ、翌年は高齢者向けの内容を強化し、女性が多ければ、女性向けの内容を強化する。

 開催地から5km圏の人が多いとわかれば、翌年は5km圏内に集中的に宣伝をするといった使い方も考えられる。

 机上では、データの使い方次第で、イベントの参加者が増え、地域の人たちの消費が刺激され、地域経済が活性化するという好循環は想像できる。

 ただ、ツッコミどころもある。

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