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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第25回

日本政府がグーグルを必死で追いかける

2019年06月03日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 おそらく、日常的にスマホやパソコンを使う人たちの個人データを世界でもっともたくさん保有している企業はGoogleだろう。

 ユーザーがいまどこにいて、何に興味があり、どんな動画が好きで、どんな内容のメールを送っているか。Googleは日々、たくさんの個人のデータを集めている。明日の予定も知っている。

 Googleが公表しているプライバシーポリシーを読むと、音声通話を使ったときの声なども含め、極めて多岐にわたるデータを収集していることがわかる。背筋のあたりが、すこし寒いほどだ。

●日本政府の「DFFT(信頼に基づくデータ流通)」に賛意

 Googleで、最高プライバシー責任者を務めるキース・エンライト氏の講演を聴く機会があった。

 日本の個人情報保護委員会が5月30日に開いた「アジア太平洋プライバシー機関フォーラム」でのことだ。

 エンライト氏は講演の中で、「信頼に基づくデータの自由な流通をつくり出すため、ともに努力することを提案した、安倍首相のリーダーシップと、この重大な問題への注目を喚起したことに感謝します」と述べている。

 日本政府が掲げる「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(DFFT)」への賛意を示したと受け止められる発言だ。

 DFFTは、「信頼に基づく自由なデータ流通」と訳される。2019年1月に開かれた「世界経済フォーラム」(ダボス会議)の場で、安倍晋三首相が提唱した考え方とされる。

 首相官邸が公開している発言録によれば、ダボス会議で首相はこう述べている。

 「我々自身の個人的データですとか、知的財産を体現したり、国家安全保障上の機密を含んでいたりするデータですとかは、慎重な保護の下に置かれるべきです。しかしその一方、医療や産業、交通やその他最も有益な、非個人的で匿名のデータは、自由に行き来させ、国境をまたげるように、繰り返しましょう、国境など意識しないようにさせなくてはなりません」

 個人データや国家機密はしっかりと保護したうえで、匿名性を確保したデータは国境をまたいで自由に流通させるという考え方だ。

 国境をまたぐ以上、各国政府の協調が欠かせない。

●グーグルの行動指針が大きな影響力を持つ

 政府は6月28、29両日に大阪で開かれるG20でも、データの流通を主要な議題とする方針だ。

 そしてさらに重要なのは、大量のデータを保有し、利用しているGoogleをはじめとした企業との調整だ。

 いまのところ、GoogleをはじめとしたIT大手はデータの取り扱いではるか先を行っている。

 エンライト氏は「あなたが東京の大学教授であっても、インドネシアの農村の農業従事者であっても、われわれのミッションは、プライバシーにおいて、同じアプローチを採用しなければならないということだ。このことは、プライバシーは高級な商品やサービスを買うことができる人にだけ提供される贅沢な商品であってはならない、という意味がある。

 主要国が足並みを揃えるための議論を始めようとしている段階において、Googleはすでに、個人のプライバシーを「同じアプローチ」で扱う、という国境を超えた規定を定めている。

 Googleが定め、公開している「プライバシーとセキュリティ原則」は次のようなものだ。

1. ユーザーとそのプライバシーを尊重する。



2. 収集するデータの内容とその目的を明確にする。



 3. ユーザーの個人情報を決して販売しない。



4. ユーザーが自分のプライバシーを簡単に管理できるようにする。




5. ユーザーが自分自身のデータを確認、移動、削除できるようにする。




6. Google サービスに業界最高水準の強固なセキュリティ技術を導入する。




7. すべての人のオンライン セキュリティを強化するための模範を示す。


 あくまで、いち私企業の行動指針だが、世界に与える影響は、G20に参加する主要国が個別に定める法律をはるかに上回る。

●政府側が企業を必死で追いかける傾向が強まっている

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