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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第8回

ねらいは「応援の可視化」:

エイベックスがQR決済を始めるワケ

2019年02月04日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 さまざまな企業の参入が相次ぐオンライン決済サービス。そのうちの1社がエンタメ業界のエイベックスだ。

 エイベックスといえば小室哲哉や浜崎あゆみ、AAA(トリプル・エー)らが所属する「芸能界の会社」というイメージがあるが、オンライン決済に参入するねらいは何か。

 アーティストのライブのチケットレス化、キャッシュレス化もあるが、所属アーティストに対する「応援」を可視化するのが最大のねらいだという。

●5月〜6月のサービス開始目指す

 同社は、2019年5月〜6月のサービス開始を視野に準備を進めている。決済サービスを担うのは、2018年6月に設立した100%子会社「エンタメコイン」だ。

 エイベックスが決済事業を立ち上げる背景の1つには、所属アーティストのライブ会場で抱えている課題がある。

 所属アーティストのファン層は、クレジットカードを自分で作れない若い世代が多い。

 ドーム球場などスタジアムでのライブは数万人の観客を動員し、会場で販売するグッズの売り上げも数億円に達する。

 しかし現金決済中心では会場内に長蛇の列ができてしまう。お釣りを間違えるといったミスも出やすい。

 そこで浮上したのがQRコード決済だったという。「グッズ購入者のデータを集めたい」(広報)という企業側の狙いもあった。

 しかしライブ会場のキャッシュレス化だけなら、SuicaやPayPayなど既存事業者のサービスを会場に導入すれば済む話だ。

 同社が目指す、アーティストに対する「応援の可視化」とはどんなものなのか。

●ねらいは「応援の可視化」

 たとえば、次のような行動を通じて、好きなアーティストを応援すると、応援ポイントが貯まっていく。

・アーティストの公式ツイッターをフォロー
・アーティストの投稿をシェア
・配信サービスで新曲を聞く
・カラオケでアーティストの新曲を歌う
・YouTubeでアーティストのビデオを見る

 アーティストに関係がなくても、エンタメコインが使える店で買い物をすれば「応援ポイント」に換算される。ポイントを貯めると、一定のポイントを保有する人だけを対象とした限定ライブに招待されるといった構想だ。

 エイベックスは「同業他社にも広く使っていただきたい」として、さまざまな企業への導入を進めている。

 スポーツチーム、劇団、アニメのキャラクター、ファッションブランドなど、「ファン」がいれば、エンタメコインの仕組みを使える可能性はある。

 2019年1月には、サッカーJ1リーグのサガン鳥栖がエンタメコイン導入の方針を明らかにした。

 たとえばコンビニの買い物で、現金か、エンタメコインか、他の決済サービスのどれを使うか選ぶとき「好きなアーティストやスポーツチームの応援につながるなら」と、エンタメコインを選ぶ動機づけにもなる。

●「資本力の勝負」をどう戦うか

 参入が相次ぐ決済サービスだが、FinTech関連企業関係者の間では、昨年後半以降「資本力勝負のフェーズに入った」との見方が強まっている。

 2018年末にはQRコード決済サービスを展開するPayPayが、サービスを利用して買い物をすると20%のボーナスを付与するという「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施し、関係者たちの度肝を抜いた。

 一方、決済サービスを提供している鉄道やIT企業などと比較すると、エンタメ関連の企業は規模の小さい企業が多い。

 同社は「真っ向からぶつかっていくつもりはない。共存できると考えている」(広報)と言う。

 ねらうのは消費者一般の囲い込みではなく、アーティストを応援する人たちの小さな経済圏づくりなのだ。

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