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橋本ホールディングスとの提携でAI Factoryの実現にも一歩前進

AI insideが魅せた業務完全自動化の世界 もはやデモはシンプルすぎて映えない

2026年10月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 「AIの進化は速いのに、私たちの業務はなぜ変わっていないのか?」。2026年10月6日に開催された年次イベント「AI inside Conference (AIIC)2026」の基調講演でAI inside 代表取締役社長CEO 渡久地 択氏はこう語る。業務を変えるAI基盤「DX Suite」の新バージョンでは「指示を出すだけで業務が完遂してしまう」というデモを披露した。

AI inside 代表取締役社長CEO 渡久地 択氏

AIで業務が変わらないのは、人間が遅いから

 国内7万社の導入を誇るAI OCR「DX Suite」を手がけるAI inside。DX Suiteを支えるAIモデル「PolySphere」、統合基盤「Leapnet」、ハードウェア「AI inside Cube」まで、AI開発や運用に必要なコンポーネントの開発を垂直統合で手がけている点もユニークだ。

 基調講演に登壇した渡久地氏は、「AIの進化は速いのに、私たちの業務はなぜ変わっていないのか? 少なくとも私はあまり変わっていないように見える」とコメントする。昨今よく挙がるこの質問に対して、多くのAI企業はコンテキストやガバナンスの欠如、組織体制を課題として挙げるが、渡久地氏の回答はよりシンプルで「人間が遅いから」だ。「判断も遅いですし、当然仕事も遅い。AIの能力に付いていけてない状況が起こっている」と指摘する。

 そんな渡久地氏だけに、解決方法もシンプルで「AIに業務を完遂してもらう」こと。これを実現するために、AI insideは6つのAIエージェントと仕組みを用意した。書類を理解するAI、組織の知識を使うAI、業務を組み立てるAI、自ら仕事を進めるAI、承認をつなぐ仕組み、行動を記録する仕組みだ。これらを連携させつつ、判断が必要な部分でも人間がボトルネックにならないUXを用意した。これが新しいDX Suite。「DX SuiteはもはやAI OCRではなく、業務の基盤」と渡久地氏は語る。

AIを業務に完遂してもらうためのエージェントと仕組み

 渡久地氏が見せたのは、AI inside自身の受注業務プロセスを完遂するまでのデモだ。プロンプトで受注業務のプロセス調べ、受注業務のプロセスを作ってもらう。あとは、注文書を登録すると、分納案の承認依頼だけが飛んでくる。人間が判断するのはここだけ。SaaSなどと連携すれば、注文書をアップロードする必要すらない。AIが自ら業務を調べ、プロセスを構築し、遂行してしまう世界。AIが業務を完遂すると、デモは映えなくなるのだなという気づきがあった。

もはやデモは指示と承認確認のみ

受注業務プロセスでの在庫不足 AI側から分納をなぜ提案できるのか?

 もちろん、デモはシンプルだが、バックエンドの受注業務プロセスはかなり複雑だ。この業務プロセスをこなすべく、前述したAIエージェントは注文書の読み取りと受注確認、条件の確認、不備の対応、人の承認、業務の実行という流れを実行している。

受注業務プロセスで動いているフロー

 たとえば注文書の読み取りにおいては、単に型番や数量、金額、納期など必要な項目を抽出するだけではなく、社内のデータベースとの照合まで行なう。取引先は新規なのか、既存の取引なのか。既存の取引なら、与信枠はあるのか。在庫はあるのか、分納は可能なのか等々を調べる。

 受注業務プロセスが複雑になるのは、不備やイレギュラーの対応が発生するからだ。ここでの不備は在庫の不足。しかし、ここで分納案を提案できたのは、納品予定数を確保でき、かつ注文書の受注条件で分納可能という点を読み取っていたからにほかならない。分納案でOKかは人間が判断する必要があるため、承認を求めることにしたわけだ。

読み取り時に取引条件まで読み取り、チェックを行なっている

 初めての注文書で、取引実績がなかった場合はどうなるか? その場合は、新規取引先を追加するフローに移る。注文元の所在地や会社名、反社チェックなどの取引先調査、財務資料、取引条件、入金履歴など与信調査を行ない、契約書のひな形を作成。自社の審査基準と照合して、確認事項や修正案を提示してくれる。棚卸しとして300社の取引先チェックを並行で行ない、要確認だけを人間が調べることも可能だ。

 ここまで適切な業務分析を可能にしているのが、同社独自の「Engram」という技術だ。EngramはRAGと異なる思想で構築されたハーネス+コンテキストDBになる。回答を生成するのに本当に必要な知見、提供する価値を効率的に抽出することができる。この効率性は、現在AI活用の大きな課題になっているトークンの消費においても解決の鍵となる。

トークンを消費せず、必要な知識を抽出できる非RAGの「Engram」

 企業が取引を成立させるためには、さまざまなドキュメントが必要になる。見積書、提案書、契約書、請求書、議事録、仕様書などだ。渡久地氏が、この6文書を作成したところ、トークンの消費は4607。成約率が10%なら、1成約までに4万5994トークン、1000成約で4599万4000トークンになる。

 では、このトークンから特定のA社の見積条件を聞く場合、もっとも安価なLLMを使っても、1問あたり1388円かかる。つまり、社員100人が毎日10個質問したら、1日約138万円かかることになる。キャッシュヒット率を高めに見積もっても、1日31.2万円だ。「あの質問に答えるだけで、1日に30万円支払えますか? どう考えても無理があります」と渡久地氏は問いかける。

質問当たり1380円。100人だと1日138万円という計算

 当然、「必要な知識だけ、できるだけトークンを使わずに取り出せないか?」と考える。これはRAGでも膨大なデータから必要な箇所のみ当たりを付けるという方法が試されている。ただ、渡久地氏の調査では、5ヶ所、50ヶ所程度を検索しても、精度は7割を超えなず、トップ200まで検索しないと、100%に近づかない。RAGにおいて90%程度の精度を目指すと、質問あたり187円にまで下がるがまだ高い。

 これに対して、AI insideのEngramはトークンを使わずに、本当に必要な知識を見抜く。「来週の出張、宿泊費の上限は?」という質問を投げると、出張旅費規程、宿泊費の上限と承認条件に絞り込むことができる。そのため、RAGに比べてトークン消費量は圧倒的に低く、質問あたり4.1円で済む。トークン消費が少なければ、必要な規程をすべて読んで、業務フローを生成できるので、精度が高くなるというカラクリだ。

Engramならトークン消費を抑えつつ、高い精度を実現する

 ここまで説明してきた渡久地氏は、「ここまで難しい業務の話をしてきましたが、こういう話はもう辞めにしましょう。新しいDX Suiteを使えば、非常に簡単に業務が自動に回りますし、今日よりも明日の方が良い会社になります」とアピール。新バージョンのDX Suiteは11月から提供開始される。

AIの業務完遂率にこだわる AI Factoryの建設にも一歩前進

 AI OCRから統合AI業務基盤に進化するDX Suite。講演の前半では、DX Suiteを支える各コンポーネントの最新動向や新発表も披露された。

 同社がLLMの技術をベースにしたAIモデルの開発をスタートしたのは、生成AIという言葉がまだメジャーではなかった2019年。2024年に非定型文書の読み込みをカバーしたPolySphereの初版を発表し、その後もAI insideは開発スピードを高めつつ、AIでどこまで業務を完結できるかに挑戦してきた。

 2025年には企業ごとのカスタマイズをサポートしたバージョン2、2026年には学習自体を自動化したバージョン3、3ヶ月後には精度を高めたバージョン4を立て続けにリリース。累計で160億回の業務をAIが代替できるようになり、AIによる平均業務完遂率は99.51%を達成した。「バージョン4では平均の下限でも91%となり、人によるダブルチェックも超えるようになった」と渡久地氏はアピールする。

160億回の業務をAIで回すことができるように

 ハードウェアとしては、AI推論専用のAIコンピューター「AI inside Cube」を展開してきた。2026年6月には「AI inside Cube Atlas」を発表し、今回は計算能力や処理規模に合わせて1x、2x、8x、16x、192xなどのラインナップも用意された。「AI-OCR、生成AIプラットフォーム、大きいモデル、強いモデル自ら動かすことができる」と渡久地氏はアピールする。

 同社はAI inside CubeとLeapnetをベースに既存のデータセンターをAI Factory化する「Sovereign Grid」という構想もスタートさせている。今回は、複数の建設会社を抱える静岡県の橋本ホールディングスと事業提携・合弁会社の検討に向けた基本合意書の締結が発表され、「AI Factory」の事業化が本格化されている。「AIデータセンターは、他国の足下にも及ばないのが現状。こうした現状を打破していきたい」と渡久地氏は語る。

橋本ホールディングスとの連携でAI Factoryの実現へ

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