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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第75回

自然な英語でメールを書く 生成AIを使って英文を読む・書く仕事がラクになる翻訳術

2026年10月09日 14時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第75回は、生成AIで翻訳・英訳する際に、ポイントをつかみやすくしたり、自然な英文になるようにするためのプロンプトについて解説する。

外国語を読むときは、全部翻訳しなくてもいい

 海外のウェブサイトを開けばブラウザーが日本語にしてくれるし、外国語のメールを受け取ればメールアプリでも翻訳できる。いまや、外国語を単純に日本語へ置き換えるだけなら困らなくなっている。

 それでも筆者は、外国語を扱う仕事でChatGPTをよく使っている。便利なのは翻訳そのものではなく、「何を知りたいのか」「誰に何を伝えたいのか」までプロンプトで渡すことで、翻訳の前後にある作業までまとめて頼めるからだ。

 海外の記事や長いメールを読むとき、最初から全文を日本語にする必要はない。生成AIなら「まず重要な点を5つ教えて」「金額と納期について書かれた部分だけ抜き出して」「この表現は遠回しに断っているのか、それとも検討中なのか」といった質問ができる。

 たとえば海外のウェブサービスを使い始めるとき、利用規約を最初から最後までじっくり読む人は少ないのではないだろうか。とはいえ、料金や解約条件、入力したデータがどう扱われるのかなど、使い始める前に確認しておきたい項目はある。

 そんなときは、利用規約をChatGPTに読み込ませ、「日本の個人ユーザーに関係する料金、解約、データ保存についてだけ説明して」と頼めばいい。まず必要なポイントを把握し、気になる項目があれば「その根拠となる原文を示して」「この条項だけ詳しく訳して」と掘り下げれば、読むべきところに絞って確認できる。

 英文メールでも同じだ。日本語訳を読むだけでなく、「相手はかなり強く催促している?」「この表現は普通のビジネス表現?」「こちらに何をしてほしいメールなのか」と聞けば、文章の意図までつかみやすくなる。

英文メールを読みこませ、何をすればいいのか教えてもらう

 ここからは、自分が外国語を書くときの使い方を見ていこう。筆者は仕事でスコットランドからウイスキーを樽ごと輸入しているため、現地の蒸留所や業者と英語でメールをやり取りする機会が多い。

 そこで重宝しているのがChatGPTだ。日本語をそのまま英語に置き換えるだけでなく、伝えたい要点からメールを組み立てたり、相手との関係に合わせてトーンを変えたり、完成した英文の意味を日本語で確認したりできる。ここからは、実際の仕事でも使いやすい3つの方法を紹介しよう。

日本語を英訳せず、伝えたい内容から英文を作ってもらう

 最初に試してほしいのが、文章を用意せず、内容だけを渡して翻訳してもらうことだ。筆者も英文メールを書くときは、日本語の完成原稿を用意せず、伝えたいことを箇条書きでChatGPTに渡すようにしている。きちんとした文章を日本語で用意しても、その直訳がビジネスにマッチしているとは限らないためだ。

 たとえば、英国の取引先にウイスキー樽の出荷について問い合わせるとしよう。伝えるべき情報だけを整理するなら、以下のようなメモや箇条書きで十分だ。

・10月第2週に樽を出荷したい
・引き取り可能日を確認したい
・現在の樽重量、ABV、release feeを知りたい
・費用を確認するまでは出荷を確定しない

 このメモをそのまま英訳するのではなく、誰に何のために送るのかまでChatGPTに伝える。すると、内容を英語のビジネスメールとして自然な順番に組み立ててもらえる。

○プロンプト
あなたはスコットランドのウイスキー業界の取引先にメールを書くアシスタントです。以下の日本語メモを基に、取引先へ送る簡潔な英語のビジネスメールを書いてください。相手とは継続的に取引しているので、丁寧ですが堅苦しくしすぎないでください。書かれていない日付や金額などの情報を勝手に補わないでください。

<伝えたいこと>
ここに箇条書きする

○出力
Cask Collection in the Second Week of October

Hi,

We’re looking to arrange shipment of the cask during the second week of October. Could you please let us know which dates would be available for collection?

Could you also confirm the current cask weight, ABV, and release fee? We’d like to review the costs before confirming the shipment.

Many thanks,
Tomonori

日本語の完成文ではなく要点を渡し、自然な英文メールに組み立ててもらう

 英語で難しいのは文法だけではない。同じ内容でも表現によって、「ちょっとした確認」にも「かなり強い催促」にも聞こえるため、自分の意図した温度感になっているのか判断しにくいことがある。

 そんなときは、最初から複数のトーンで文章を作らせて比べるとわかりやすい。たとえば、先週依頼したインボイスがまだ届いておらず、できれば明日までに送ってほしいケースを考えてみよう。

○プロンプト
英国の取引先に、インボイスを催促するメールを書いてください。状況は以下の通りです。

・先週インボイスの発行をお願いしたが、まだ届いていない
・こちらの支払い手続きの都合で、できれば明日までに欲しい
・相手を責めたいわけではない
・今後も取引を続ける相手

次の3パターンを作ってください。

1. フレンドリー
2. 標準的なビジネスメール
3. 少し強め

それぞれの英文の後に、英語圏の相手がどんな印象を受けそうか日本語で説明してください。


 英語に自信がないと、自分で少し表現を変えたつもりでも、それが相手にどの程度強く聞こえるのか判断しにくい。そこで、文章を作らせるだけでなく、「この英文は相手にどう聞こえるのか」まで日本語で説明してもらうわけだ。

 さらにブラッシュアップしたいなら、「1と2の中間くらい」「もう少し親しい感じに」「急いでいることだけ少し強めて」などと追加で頼めばいい。翻訳結果を受け取って終わりではなく、会話しながらちょうどいい表現にできるのが生成AIの強みだ。

同じ内容をトーン違いで作り、相手が受ける印象を比較できる

 ChatGPTに英文を書いてもらえば、自分ではなかなか書けない自然な文章があっという間に完成する。AIの出力をそのまま送るのが不安なら、最初から日本語訳もセットで出してもらえば内容を手軽に確認できる。

 いわゆる逆翻訳のために、できあがった英文を改めて別のプロンプトに貼り付ける必要もない。「英文を書いて、その下に日本語訳を付けて」と最初から頼んでしまえばいい。日本語訳を読んで違和感があれば、その場で「この部分はこういう意味で伝えたい」と修正を頼める。

 たとえば、前述のウイスキー樽についての問い合わせなら、プロンプトの最後に次の一文を加える。

○追加プロンプト
英文を作成した後、その英文が日本語ではどのような意味になるのか、自然な日本語訳も付けてください。特に、指示した内容がどのように伝わっているのか分かるようにしてください。

○追加出力
日本語にすると、次のような意味です。

「10月第2週に樽の出荷を手配したいと考えています。引き取り可能な日を教えていただけますでしょうか。あわせて、現在の樽重量、ABV(アルコール度数)、release fee(出庫・リリース手数料)も確認していただけますか。費用を確認したうえで、出荷の手配を確定したいと思います。
よろしくお願いします。」

最後の「Once we have confirmed the costs, we can then finalise the shipment arrangements.」によって、現時点では10月第2週の出荷を希望しているものの、まだ確定ではなく、費用を確認してから最終決定するという意図が自然に伝わります。 また、「We are looking to arrange shipment」としているので、「10月第2週に絶対出荷する」と断定するニュアンスにもなっていません。継続的に取引しているスコットランドの業者相手なら、このくらいがちょうどよい温度感です。


 これなら英語を細かく読みこまなくても、自分が伝えたかった内容になっているかを日本語で確認できる。もし「出荷したい」よりも「出荷を検討している」というニュアンスが弱すぎる、あるいは強すぎると感じたら、続けて修正を頼めばいい。

 数字や日付、金額が入ったメールでも、日本語訳を一緒に見れば確認しやすい。重要な取引では原文そのものの確認も必要だが、日常的な英文メールなら「作成と同時に日本語でも意味を確認する」ところまでChatGPTに任せるだけでも、かなり使いやすくなるので覚えておこう。

英文と日本語訳をセットで出してもらえば、送信前に内容を確認しやすい

 生成AIを翻訳に使うなら、外国語と日本語の置き換えに使うだけではもったいない。要点を拾い、意図を読み取り、相手との関係に合う表現を考え、最後は自分の意図どおりに伝わっているかまで確かめられるのがポイントだ。直訳の一歩先まで任せることで、外国語を扱う仕事そのものをずっと進めやすくできるので活用してほしい。

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