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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第72回

「要約して」で抜け落ちる重要な情報・数値を漏らさない、4つの生成AI要約テクニック

2026年09月04日 16時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第72回は、生成AIの要約で、必要な要素が抜け落ちないように指示するテクニックについて解説する。

AIの要約は、なぜ肝心なことを削除してしまうのか?

 AIに「以下の文章を要約して」と投げれば、それらしい文章はすぐ返ってくる。ところが読み返してみると、肝心の金額が抜けていたり、原文には「この条件では有効だった」と限定して書かれていた話が「有効だ」という言い切りに変わっていたりする。原文よりも広い意味にすり替わってしまう、「過度な一般化」と呼ばれる現象だ。

 ユトレヒト大学のUwe Peters氏らが2025年4月に発表した調査では、10種類のモデルが作った4900本の要約を検証したところ、AIは原文の条件や対象を落とし、限定的な結論を一般的な主張に書き換えることがあった。しかも「不正確にならないように」と漠然と念を押すと、こうした書き換えが起きる割合は、単に要約を頼んだときの約2倍になった。正確にしてほしいと伝えるだけでは、逆効果になることもあるのだ。

 同じ調査では、新しいモデルほど成績が悪いという結果も出ている。性能が上がるのを待てば片付く、という種類の問題ではなさそうだ。何を重要とみなすかの判断をこちらが渡さないかぎり、AIは一般的に重要そうな要素をまんべんなく拾うしかない。

 そこで今回は、その判断基準を言葉にしてAIへ手渡すための4つのテクニックを解説する。どれも手軽に試せるものばかりなので参考にしてほしい。

「要約して」の一言だと細部が抜け落ちる可能性がある。

「誰が読んで何に使う要約か」を1行足すとクオリティがアップする

 同じ議事録でも、部長が読むなら決定事項と金額とリスク、担当者が読むなら自分のToDoと期限、欠席者なら議論の経緯まで知りたいはず。実は「重要なポイントをまとめて」だけでは一見きちんとした指示に見えても、誰にとって重要なのかが抜け落ちていることが多いのだ。

 Microsoftは自社のCopilot向けの案内で、プロンプトを目的や文脈、参照する情報、期待する成果という4つの部品で考えるよう説明している。要約なら、目的と文脈が「誰が読んで何を判断するのか」を指す。ここを埋めておけば、専門用語をどこまで噛み砕くか、前提知識をどこまで補うかもAIが自分で調整してくれる。

○プロンプト
以下の議事録を、この会議に出席していないプロジェクトメンバー向けに整理してください。読んだ人が「自分は今後何をすればいいか」を判断できるようにするのが目的です。議事録に書かれていない担当者や期限は推測せず「記載なし」としてください。


 同じ議事録を今度は取引先の営業担当者向けに、と指定し直せば、方針変更や新製品、設備投資が前に出てくるようになる。読者を切り替えるだけで何度でも別の要約が作れるのだ。

要約する際は誰が読むのかを明確に指定しよう

「簡潔に」と頼むなら「絶対に残すもの」も一緒に渡す

 「簡潔に」という注文は、AIから見れば削れという指示でしかない。何を削るかを決めていないので、本当は知りたかった条件や例外、数字が消えてしまう可能性がある。AIの安全性を評価しているGiskardのベンチマークPhareでは、17種類のモデルのうち11種類が「簡潔に答えて」というひと言に有意に反応し、誤情報への耐性が最大20%落ちたという。短く答えろと言われたモデルは、間違った前提を訂正するための余力を失ってしまうのだ。

 簡潔にしてほしいときこそ「絶対に残すもの」を指示しておくことが重要になる。言及しなかった要素は自動的に削除候補になるので、「省いてよいもの」までわざわざ並べる必要はない。残すもののリストを考える工程そのものが、人間の担当分になる。ここまで自動化しようとすると成果物のクオリティが落ちるので注意してほしい。この判断を手放さずにいられるかどうかが、AIスキルの要となるのだ。

○プロンプト
以下の文章を、内容をまったく知らないビジネスパーソン向けに要約してください。

必ず残すもの
・筆者の結論
・重要な数字と日付
・結論を支える主な根拠
・条件、例外、注意書き

最初に3行の概要、続けて重要ポイントを5項目以内で書いてください。原文に書かれていない内容は補わないでください。


 条件や例外を残すよう指示しておけば、記事の冒頭で触れた過度な一般化も起こりにくくなる。原文が「この条件では有効だった」と限定していた話が「有効だ」という言い切りに変わるのは、限定していた部分が削除候補に入ってしまうからだ。

 残すものの中身は資料の種類で変えればいい。契約書なら期限と例外条件を落とせないし、議事録なら決定事項と担当者は必須となる。ニュースなら、いつ何が起きたのかという日付は保持したい。毎回考えるのは面倒だが、ここを省略すると「一般的にはこの辺が重要だろう」というAI任せの要約に戻ってしまうので注意が必要だ。

「簡潔に答えて」と付けるだけで、誤情報への耐性は最大20%落ちる。画像はGiskardのウェブサイトより

要約させる前に根拠になる部分を抜き出させる

 いきなり要約を頼むと、AIは原文を読む作業と短くまとめる作業を同時に進めてしまう。どの記述を根拠にしたのかは表に出ないので、数字や条件が言い換えの途中で変わっていても読み手は気づけない。

 クオリティを向上させたいなら、この2つを別々の指示に分けてみよう。最初に、結論や重要な数字、主要な根拠、反対意見、例外や留保を示す文章を抜き出すよう頼むのだ。そのうえで、抜き出した文章だけを材料に要約するよう頼めばいい。要約に使える材料が原文の言葉に限られるため、原文になかった一般論や言い換えが混ざりにくくなる。

 Anthropicも、長い資料をプロンプトで扱うときのコツをまとめた公式ドキュメントで、この進め方を勧めている。本題に入る前に関連する箇所を引用させておくと、資料の残りの部分に含まれるノイズに惑わされにくくなるという。

○プロンプト(1回目)
添付した資料から、根拠になる文章を抜き出してください。この段階では要約を書かないでください。

抜き出す対象
・筆者の結論にあたる文
・数字や日付を含む文
・結論を支える根拠
・反対意見や異論
・条件、例外、留保を示す文

抜き出しの条件
・言い換えず、原文の表現のまま抜き出す
・通し番号を振る
・どの見出しや段落にあったかを添える

抜き出しが終わったら、次の指示を待ってください。

○プロンプト(2回目)
抜き出した文章だけを材料にして、300字程度にまとめてください。抜き出しに含まれていない情報は使わないでください。まとめた各文の末尾に、どの番号の抜粋に基づいているかを示してください。


 1回目のプロンプトにより、要約に進む前に材料を見ることができる。気になるところがあれば、見出しや段落を頼りに原文の該当箇所を確認すればいい。分厚い資料を最初から読み直さずに済むので手間が省ける。

先に質問へ答えさせてから要約させるQA-promptingの流れ。画像はNeelabh Sinha氏の論文より。

長い資料は全部読ませず、「どこを読むか」を先に指定する

 AIモデルが100万トークンまで読めると聞くと、大量のPDFをまとめて放り込みたくなる。しかし、AIに渡せる情報量が増えたからといって、成果物の精度が上がるとは限らないので、知りたいことが決まっているなら、AIが読む範囲を絞って指示したほうがいい。

 ベクトルデータベースを手がけるChromaが2025年7月に公開した調査に、分かりやすい実験がある。GPT-4.1やClaude 4、Gemini 2.5、Qwen3など18のモデルに、文章の中から特定の1文を見つけて答えさせる問題を出したところ、短い文章ではほぼ正解できても、関係のない文章を増やして入力を長くすると正答率が下がってしまったのだ。

 Microsoftも公式のサポートページで、長い文書を要約するとCopilotが冒頭部分に集中し、それ以降を十分に扱えない場合があると説明している。大規模言語モデルには文書の冒頭と末尾を重視し、中間部分への注意が弱くなる傾向があるためだ。アップロードに成功したことと、資料全体を同じ密度で読めていることは別だと考えたほうがいい。

 そこで、長い資料を扱うときは「全部読んでまとめて」ではなく、読む場所そのものを指定するほうがいい。たとえば100ページの市場調査レポートから今後の成長性を知りたいなら、目次を見て「市場規模と将来予測」「競争環境」「リスク要因」の章だけ読むように指示するのだ。

○プロンプト
添付した資料のうち、以下の範囲だけを読んで整理してください。それ以外のページは今回の回答には使わないでください。

読む範囲
・「市場規模と将来予測」の章
・「競争環境」の章
・「リスク要因」の章

知りたいこと
・現在の市場規模
・今後の成長率
・主要企業
・成長を後押しする要因
・市場拡大を妨げるリスク

数字には出典となるページ番号または見出しを付けてください。指定した範囲に書かれていないことは推測せず「記載なし」としてください。


 資料をチャット欄に直接貼る場合は、情報の並べ方にもコツがある。Anthropicは公式ドキュメントで、2万トークンを超えるような長い資料はプロンプトの先頭に置き、質問や指示をその後ろに書くよう勧めているのだ。複数の資料を扱うケースでは、質問を末尾に置くことで回答品質が最大30%向上したという検証結果もある。

探す1文は同じでも、まわりの文章が増えると正答率は下がっていく。画像はChromaのウェブサイトより

 最後に、2026年6月に公開された「Summarization is Not Dead Yet(要約はまだ終わっていない)」という論文にも触れておきたい。ザールラント大学のDongqi Liu氏らが、GPT-5.4やClaude Opus 4.6、Gemini 3.1 Pro、Qwen3.5、Kimi K2.5の5つのモデルに要約を作らせ、人間が書いた要約と並べて比べている。中国語の小説や科学ニュース、複数の新聞記事、講演動画、EU各国語の法令文という5種類の題材で、人間の要約と5つのモデルの要約に順位を付けて比べたところ、人間の要約が各モデルより上位に来た割合は66~90%だった。項目別に見ると、情報量と原文への忠実さは人間が上回り、文章のなめらかさではGPTとClaudeが人間を上回っている。

 外部の情報源に照らして事実確認をした結果でも、人間の要約のほうが正確さで上だった。特に、原文に書かれた複数の情報をつなぎ合わせて導く主張で、AIの誤りが目立っている。AIの要約は語彙の幅が狭く、文の構造も浅く、原文に書かれた順番をなぞる傾向が強い。要約の質の底上げはできたが、上限はまだ人間に届いていない、というのがこの論文の結論だ。

 4つのテクニックはいずれも、何を残して何を捨てるかの判断を人間が担当している。誰が読むのか。何の判断に使うのか。絶対に落とせない情報は何か。大量の資料から何を探したいのか。これらを決めるのが人間の仕事で、膨大な情報を読み込んで該当箇所を拾い、短く書き直す作業はAIに任せればよい。まずは、要約する際のプロンプトに、想定読者と用途の1行を足すところから試してみてほしい。

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