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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第68回

「愚痴から始まる請求自動化」 地味に面倒な集計をビジネスチャットの会話から自動集計するアプリをAIで作ってみた

2026年07月24日 15時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第68回はClaudeを使って、ビジネスチャットの会話から納品物を集計、請求業務を自動化する方法について解説する。

地味に面倒な請求業務を生成AIを使って自動化する

 筆者はASCIIの担当編集とChatworkでやりとりしており、原稿の納品もChatworkだ。毎月18日から翌月17日までがひと区切りで、締めのタイミングになると担当編集の大谷イビサ氏から確認メッセージが届く。

 このような請求業務は地味に面倒くさい。ZIP付きの投稿をひと月分遡って拾い出す作業を、お互いに毎月手作業でやっているわけだ。先日はとうとう、担当編集からの確認メッセージのリストの末尾に「集計が毎回地味に面倒」という愚痴が添えられてきた。

 愚痴、つまり何か改善・解決したい何かがあるのであれば、生成AIの出番だ。ということで、Claudeに作ってもらうことにした。

 使うのはClaudeのデスクトップアプリだ。チャット用の「ホーム」とは別にある「Code」を開く。コマンドラインで動くAIコーディングツール「Claude Code」をアプリの画面から使える機能で、ファイルの作成からブラウザの操作まで任せられる。まずは難しいことを考えず、やりたいことをそのまま投げてみた。

○プロンプト
Chatworkの特定のルームの投稿を解析し、1ヵ月に納品されたものをリストアップしたい。MCP連携で繋げられますか

まずはざっくり要望を伝えてみる

 ClaudeはまずMCPライブラリを検索し、Chatwork用の既製コネクタは見つからないと報告してきた。その上で、ChatworkにはREST APIがあるので連携自体は可能とし、実現方法を3案提示。APIを直接叩く方法、有志製のMCPサーバーを登録する方法、毎月の定期実行まで組む方法を、手間の星取り付きの表で比較してくれた。よくわからないので、おまかせで作業を続けてもらった。

 投稿の規模感や納品の見分け方を聞かれたので、1ヵ月の投稿は100~200件、納品は10~15本、「kintone連載原稿です」のような文章とともにZIPファイルが添付される、と答えた。特にルールを決めておらず、毎回、ファイル名も投稿文章もその場のノリで書いているので、機械的に抽出するのは難しい。何なら本文なしで納品することもある。しかし、生成AIなら、そんなカオスな状況でも整理し、対応してくれるのが素晴らしい。

 システムは問題なく開発できそうだが、ChatworkのメッセージAPIは1回で最大100件、しかも直近分しか取れないという。するとClaudeは、メッセージの全件走査では月の前半を取りこぼすと判断し、ZIP添付を手がかりにファイル一覧を軸とするアプローチへ方針転換。こちらの答えを踏まえて戦略を変えてくるあたり、優秀な部下と仕事をしている感覚だ。

 感心したのはAPIトークンの受け渡しだ。トークンはChatworkの「サービス連携」から発行するのだが、Claudeは機密情報なのでチャットには貼らないでほしいと言い、メモ帳でローカルにテキストファイルとして保存する手順を指定してきた。保存先は作業フォルダの外で、うっかり公開されるのを防ぐためだという。

 指示通り作業し、チャット欄に「保存しました」と報告すれば作業が続行される。人間の方がツールとして使われているように感じた。

トークンはチャットに貼らず、メモ帳で保存したファイル経由で渡す。ルームIDはURLを伝えればいい

 まず取得できた範囲から納品を特定してきたのだが、その精度が高い。本文のないZIP投稿は、15分前の投稿「AI連載です。Fable 5がテーマなので~」を納品の告知と判断して納品扱いにし、「修正しました」系の再アップは納品数に含めない、といったルールも会話の中で固まっていった。

 メッセージAPIで取れる最新100件は7月8日の午後以降の分までで、Claudeは6月のデータはAPIでは物理的に取得できないと白旗を上げ、埋め方の候補を番号付きの選択肢ボタンで聞いてきた。ブラウザでログインして自動抽出する案、Chatworkのスクショを貼って読み取らせる案、諦めて7月8日以降だけで確定する案の3択だ。文章で返してもいいが、ボタンで答えられるのはラクだ。

 ここで登場するのがブラウザ操作だ。「Code」では画面右にブラウザパネルを開ける。ここでChatworkにログインするとClaudeが操作を引き継ぎ、自分でルームを開き、ファイル一覧と投稿を遡って読み取り、リスト化してくれた。パスワードの入力はAIが代行できない仕様なので、ログインだけが人間の仕事だ。

 最終的に完成したリストは14本で、問題なし。しかも検証が丁寧で、期間内の全投稿を捜査して見落としがないこと、修正版の再アップが混入していないこと、6月16日と17日に納品したZIPは前回の締め期間分なのでカウント外にしたことまで報告してきた。ファイル名は「03.zip」のような素っ気ないものが多くて当てにならないため、投稿文で判定したという。

 あっけなくライターの納品物チェックシステムが完成。おまけに、ルームを遡る過程で編集担当の愚痴投稿まで読んでいたようで、毎月自動でリスト化する仕組みもいつでも組めると提案してきた。

APIで取得できない分はブラウザ操作で取得した

毎日自動で記録するスプレッドシートアプリに仕立てる

 自分の確認作業はこれで解決だが、毎月リストを作って送ってくるのは担当編集のほうだ。そこで、このままアプリとして渡せないか相談してみた。

○プロンプト
OK.完成ですね。で、これを担当編集にアプリとして渡したいのですが、どうすればいいですか?もちろん、APIキーは自分のを使ってもらいます。

 Claudeが推してきたのは、Googleスプレッドシート+GAS(Google Apps Script)の構成だ。スプレッドシートに仕込んだプログラムがGoogleのクラウド上で毎日動くため、PCを閉じていても記録が積み上がる。相手はシートをコピーして自分のトークンを入れるだけで利用できるという。

 作業をお願いしてしばらく待つと、プログラム本体の「Code.gs」と、非エンジニア向けの「導入手順.md」の2ファイルが納品された。アプリの動きは、毎日朝6時台にChatwork APIで新着を取得して「記録」シートに蓄積し、毎月18日の朝に前月18日から当月17日までの納品リストを自動生成するというもの。今回の会話で固めた判定ルールがそのまま実装されている。トークンは各自のGoogleアカウント内にのみ保存され、シート上には表示されない設計だ。

 驚いたのは品質確認の報告だ。GASの仕様、日付ロジック、実データでの解析検証という3観点の並行レビューで6件の不具合を検出し、すべて修正済みだという。2人が同じシートに設定した場合の二重実行防止や、実メッセージの13%に含まれていたChatwork特有のタグの処理といった、渋いバグまで潰してある。仕上げに実際のルームのメッセージ100件でシミュレーションし、既知の納品5件を正しく検出できることを確認してから納品してきた。

担当編集用のシステムも作ってもらった

非エンジニア向けでもわかるようにマニュアルも作ってもらった

シート作成から初期設定までClaudeが代行してくれた

 では、実際に動作させてみよう。マニュアルを読むのも面倒なので、Claudeに代わりに初期設定作業をしてもらった。納品集計シートが作成されたら、シートに追加された「納品集計」メニューから初期設定を選ぶと、トークンの入力欄が表示される。ここにChatworkにアクセスするためのAPIトークンを貼り付けてOKを押せばセットアップ完了だ。

自分のAPIトークンを入力してもらう

 メニューには、今すぐ記録を取得、前期間の納品リスト作成、今期間の途中経過、引き継ぎ前のトークン削除といった操作が並ぶ。試しに前期間のリストを作らせると、6月18日から7月17日までの納品が日時、投稿文、ファイル名付きで14本並んだ。本文のなかった7月8日の投稿には、前後の投稿を確認するよう促す。怪しいところは人間に確認を促すさじ加減がちょうどいい。

自動でデータを取得し、メニューをワンクリックするだけで集計できるようになった

 相談を始めてからマニュアル完成まで、筆者がやったのはチャットでの受け答えと、ログインやトークン入力くらい。コードは1行も書いていないし、正直、中身も読んでいない。所要時間は30分ほどだった。

 ふたりの毎月の「地味に面倒」がこの手軽さで消えるなら安いものだ。こうした事務作業の自動化は、生成AI活用の中でも確実に元が取れる分野。皆さんもまずは、身の回りの面倒な定型作業をClaudeに相談してみてほしい。次の締めの日に担当編集からどんなメッセージが届くのか、今から楽しみだ。

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