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柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第73回

AIの答えでわかったつもりになってない? 答えを返さない「ガイド付き学習」で知識を確実にアップデートする

2026年09月16日 14時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第73回は、AIを使って学習を支援してくれるGeminiの「ガイド付き学習」について解説する。

AIで得た知識は深層記憶になりにくい?

 今は、わからないことがあれば生成AIに聞けば、すぐに答えが返ってくる。知らない用語の意味やExcelの使い方、仕事に必要な専門知識まで、検索結果を何ページも読み比べなくても、手軽に要点をつかめるようになった。

 もちろん便利なのは間違いない。しかし、答えを読んで「なるほど」と思っただけでは、本当に身についたとは言いにくい。AIに聞いた内容を数日後にはすっかり忘れていた、という経験がある人も多いはずだ。

 実際、生成AIの使い方によっては学習を妨げる可能性を示した研究もある。米ペンシルベニア大学などの研究チームが2025年にPNASで発表した「Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics(ガードレールのない生成AIは学習を損なう可能性がある:高校数学からのエビデンス)」という研究だ。トルコの高校生約1000人を対象に、生成AIを使った数学学習の効果を調べている。

 通常のChatGPTに近い「GPT Base」を使った生徒は、AIを使わない生徒より練習問題の成績が48%高かった。ところが、その後にAIなしで試験を受けると、今度はAIを使わなかった生徒より17%低い成績になった。一方、学習を支援するためのガードレールを設けた「GPT Tutor」では、AIを使っている間の成績が大きく伸びながら、AIを外した試験での成績低下はほぼ見られなかった。AIに正解を出してもらえば、その場の問題は解けるが、それだけで自分の力で解けるようになったとは限らないのだ。

 では、AIを学習に活用するならどうすればいいのか。おすすめしたいのが、生成AIの「学習モード」だ。答えを一気に渡すのではなく、問いかけやヒントを交えながら理解を深め、自分で考えるよう促してくれる。

 Geminiでは、この機能を「ガイド付き学習」と呼んでいる。Googleが2025年8月に発表した機能で、教育研究の知見を取り入れて開発した「LearnLM」の成果をGeminiに組み込んでいる。問題を段階的に分解したり、理解を確認する質問を投げかけたりするほか、内容に応じてクイズや図解などを使うこともある。

Geminiのツールメニューから「ガイド付き学習」を選んで、学びたい内容を入力する

 では、実際にガイド付き学習を使ってみよう。今回は、「現代ポートフォリオ理論」と「効率的市場仮説」を学んでみる。どちらも言葉は聞いたことがあり、何となく意味もわかっている気がするが、他人に説明しろと言われると自信がない。こうした「知っているつもり」の知識こそ、学習モードを試す題材に向いていそうだ。

質問されると「わかったつもり」があっさり崩れる

 まずは現代ポートフォリオ理論から始めてみよう。ここでは教え方を細かく指定せず、何を理解したいのかと、自分の知識レベルだけを伝えた。

○プロンプト
現代ポートフォリオ理論という言葉は聞いたことがありますが、きちんと理解できていません。新NISAでインデックス投資信託を積み立てているので、分散投資となぜリスクを抑えられるのかというところから理解したいです。数式は苦手です。


 Geminiは現代ポートフォリオ理論をいきなり丸ごと説明せず、まず「リスク」を値動きの振れ幅として捉えるところから解説を始めた。「晴れの日にもうかるアイスクリーム屋と、雨の日にもうかる傘屋」というたとえがわかりやすい。

 どちらか一方だけに投資するより、異なる状況で利益が出る2店を組み合わせたほうが、全体の利益の振れ幅を抑えやすいというのだ。数式が苦手だと伝えたことを受け、まずは身近なたとえから分散投資の考え方をつかませようとしている。

 説明を読んで終わりかと思ったら、今度は「傘屋とレインコート屋に投資したらどうなるか」と質問された。どちらも雨の日に売れるため、筆者は「雨の日には2倍もうかるようになる」と答えた。するとGeminiは、晴れの日には両方とも売れなくなることを指摘し、「利益の波は大きくなるか、小さくなるか」ともう一度問いかけてきた。そこで「波は小さくなる」と答えると、今度は「おしい!」とツッコミが入る。

たとえ話を聞くだけで終わらず、その場で理解を確かめる質問が返ってきた

 似た値動きをするもの同士では、好調なときも不調なときも同じ方向へ動きやすい。そのため、投資先を複数に増やすだけでは十分ではなく、値動きの関係も重要になることを、こちらの間違いを使いながら説明してくれた。

 さらに「今積み立てているインデックス投資に別の投資先を加えるなら、似た動きをするものと違う動きをするもののどちらがリスクを抑えやすいか」と質問が続く。最初はお店だった話が、投資へ戻ってきて、学習効果を実感できる。

 普通のチャットなら、現代ポートフォリオ理論の解説を読んで「なるほど」で終わっていたかもしれない。ところがやり取りの中で知識の穴を見つけ、説明し直してくれるのがガイド付き学習の面白いところだ。

間違えた理由をかみ砕いて説明し、理解した内容を次の問いへつなげていく

「クイズで学びたい」と頼むと、専用の演習画面が開いた

 次は「効率的市場仮説」を学んでみよう。いくつかの型に分類されていることは知っているものの、どこまでの情報が株価に織り込まれていると考えるのか、その違いをうまく説明できない。

 今度はこちらから学び方を指定してみることにした。単に説明を聞くのではなく、実際の場面を見て自分で判断できるようになりたいので、クイズ形式をお願いしてみた。

○プロンプト
効率的市場仮説について勉強したいです。ウィーク型、セミストロング型、ストロング型の違いがよくわかりません。実際の投資ではどんな場面がそれぞれに当てはまるのか、自分で判断できるくらいまで理解したいです。クイズが好きなので、演習形式で教えてください。


 すると、最初に効率的市場仮説の概要が簡単に説明された後、「効率的市場仮説(EMH)実践クイズ」という専用画面が開いた。チャット欄に問題文が表示されるのではなく、右側に4択問題のインタラクティブなクイズ画面が現れたのだ。

 今回のクイズは全10問。「ウィーク型が成立している市場で、将来の株価を予測するために無意味とされる分析手法はどれか」という問題から始まった。

「演習形式で」と頼むと、4択問題を解いていく専用のクイズ画面が表示された

 選択肢をクリックすると、その場で正誤が表示される。正解だけでなく理由まで説明してくれるので、問題を解きながら知識を補っていける。画面には「ヒント」も用意されており、答えがわからなければ手掛かりを見てから考えられるため、すぐに正解を聞く通常のチャットとはかなり感覚が異なる。

 10問を解き終えると、スコアと学習結果の分析が表示された。今回は3問正解、7問不正解という散々な結果だったが、単に「3点」で終わらず、「よくできているところ」と「重点分野」に分けて、どこを理解できていて、どこを復習すべきか整理してくれた。

 例えば今回なら、ウィーク型とテクニカル分析の関係は理解できている一方、3つの形態で「どの情報まで価格に織り込まれていると考えるか」の区別に課題があると指摘された。テストを受けた後に答案を返され、先生から弱点を教えてもらっている感覚に近い。

10問を解き終えるとスコアだけでなく、得意分野と復習すべき項目まで分析してくれる

 さらに画面を下へ進むと、クイズの結果をもとにフラッシュカードや学習ガイドを作成する選択肢まで現れた。学習ガイドを選ぶと、効率的市場仮説の3つの形態だけでなく、ランダムウォーク理論やアノマリー、行動経済学など、クイズで弱かった周辺知識まで含めた復習用の資料が生成される。

 1つ目のような対話形式とは、また学習体験が異なる。「クイズが好きなので演習形式で」と伝えただけで、問題を解き、採点され、弱点を分析してもらい、最後は復習教材まで作ってもらう流れになった。知識が身についているか確かめたいテーマでは、この使い方も相性がよさそうだ。

クイズ終了後は、結果をもとにフラッシュカードや復習用の学習ガイドも作成できる

 ガイド付き学習は自分で考えて間違えるからこそ、理解できていない部分も見えてくる。生成AIなので重要な情報は確認が必要だが、「知っているつもり」の知識を学び直す用途には使い勝手がとてもよい。ぜひ、暇な時間にチャレンジしてみてほしい。

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