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年間8000万円の“見えないコスト”の排除を目指し、グループ全社のガバナンスを強化へ

乱立する文書管理をBoxに統合へ、オークネットは基盤整備で「AIをビジネスの武器にする」

2026年09月24日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

提供: Box Japan

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オークネット DX部門 インフラサービス部 クラウド化推進グループ マネージャーの坪田真一氏(中央)、同グループの段 裕之氏(右)、コーポレート部門 経営管理本部 法務部 ジェネラルマネージャーの吹田久実氏(左)。同社のオークションショールームにて

 いまからおよそ40年前、インターネットの商用利用開始よりもはるか前に、独自のシステムを構築してオンライン中古車オークションを立ち上げたオークネット(AUCNET)。その後も中古デジタル機器、ブランド品などに対象を広げ、M&Aや海外展開も進めるなど、“循環型マーケットをデザインする”先駆者としての挑戦を続けてきた。

 そのオークネットが、国内外のグループ会社も含む全社へのBox導入を決定し、全面的なクラウド移行の取り組みを始めている。Boxの導入は、セキュリティやガバナンスの向上、さらに将来的なAI活用拡大も見通したうえでの判断だという。

 オークネットで社内DX推進を手がけ、今回のBox導入を主導しているクラウド化推進グループの坪田真一氏と段裕之氏、ガバナンスの側面からBox導入を支援した法務部の吹田久実氏に、Box導入の背景から将来のビジョンまでをうかがった。

「循環型マーケットデザインの先駆者」として挑戦を続ける

 オークネットは1985年、中古車販売店を経営していた藤崎眞孝氏が、当時の中古車オークションの非効率さを解消するために創業した企業だ。同年には、電話回線とレーザーディスクを活用した、世界初の「中古車TVオークション」を実現。その後も、衛星通信やブロードバンドインターネットなど、時代の先進テクノロジーを取り入れながらビジネスを拡大してきた。

 取り扱う対象商品も中古車にとどまらない。中古バイク、花き、中古デジタル機器、ブランド品、中古医療機器といった市場にもビジネスを拡大。各市場でオークションを開催し、マッチングの効率化を実現していった。

 現在のオークネットは「マーケットデザインで価値をつなげる。」というミッションステートメントを掲げている。近年注目されるようになった「循環型経済」の市場構築を古くから手がけてきた知見を生かし、パートナー企業との共創を通じて新しいマーケットを社会に広げていく考えだ。たとえばメーカーや小売事業者に向けて、リユース品の流通など二次流通サービスを支援する「Selloop(セループ)」も展開している。

現在のオークネットは「循環型+共創型事業」を展開している

 オークネットグループでは、事業ドメインごとに子会社を展開しており(連結子会社は15社)、国内6エリアと海外6カ国にも事業拠点を持つ。グループ全体の連結従業員数は1119名で、本社/国内外拠点/子会社で利用する業務IT環境については、基本的にすべて本社DX部門が運用管理を行っている(数字はいずれも2025年12月時点のもの)。

 「基本的にSaaSを採用し、それらを組み合わせて業務IT環境を構築する方針をとっています。グループ全社の共通サービスとして『Google Workspace』や『Slack』などを採用しており、われわれインフラサービス部がその導入や運用を担っています」(坪田氏)

社内のファイル管理環境は“乱立状態”、3つの大きな課題を抱えることに

 今回、Boxの導入を決めたオークネットだが、これまでのファイル/ドキュメントの管理環境は「簡単に言うと“乱立状態”でした」と坪田氏は説明する。

 具体的に言うと、社内とのファイル共有にはオンプレミスのファイルサーバーやGoogleドライブを、社外との共有には複数のクラウド転送サービスを利用してきたという。加えて、公的な文書類はワークフローツールに保管されていることもある。

 「つまり、用途によって使うツールがバラバラで、どれを使えばいいのか迷ってしまうような状態でした」(坪田氏)

坪田真一氏

 “乱立状態”に陥った背景には、M&Aによる会社規模の拡大に対し、IT環境の統合が後手に回っていた実情がある。さらに、会社規模が拡大するにつれて社内のデータ共有ニーズは高まっていたが、現場では「使い慣れたツール」が優先され、変化する働き方に即してツールの利用方法を変えていくような動きもなかった。

 こうしたファイル管理環境には、具体的にどんな課題があったのか。坪田氏は、大きく3つの課題を挙げた。

 まずは「セキュリティ」だ。国内企業のランサムウェア被害が相次いで報道され、そこで攻撃の原因と報じられた「ファイルサーバーにアクセスするためのVPN」は、オークネットでも利用していた。そのため、この環境から早急に脱却する必要があると考えたという。

 2つめは「利便性と運用効率」である。前述したように、ファイルの共有先(社外/社内)や目的に応じてツールを使い分けなければならず、不便だ。さらに、海外拠点から日本のファイルサーバーへのアクセス速度は非常に遅く、これにも社内から不満の声が上がっていた。加えて、ユーザー追加やアクセス権などの設定変更は、社内の申請を受けてDX部門が行う方式だったため、運用効率が悪いうえに俊敏性も低かった。

 「ユーザーにとって不便なだけでなく、業務が止まることで『見えないコスト』も発生します。“1人あたり、1日5分間”のロスタイムが発生していると考え、そのぶんの人件費を試算したところ、全社で年間8000万円もの損失になることが分かりました」(坪田氏)

 最後は「AI活用の阻害」を挙げた。そもそも、データが個人ドライブやファイルサーバーに分散(サイロ化)しているため、AIが適切なデータを参照できず、ハルシネーション(誤回答)が発生しやすい。

 「実は、1~2年前に一度、AIヘルプデスクを構築しようとチャットボット系AIツールのPOCを実施したことがあります。しかし、回答のためにAIが参照したいデータがファイルサーバーからは読めないうえ、ほかのデータもあちこちに分散している状況だったため、回答の精度を上げることができず、本番運用には至りませんでした」(段氏)

段 裕之氏

 こうしたIT面での課題に加えて、法務部の吹田氏からはガバナンスやコンプライアンスの側面から問題が指摘された。ファイルサーバーは社内のファイル共有にも使われるが、ユーザー自身でアクセス権を細かに設定することができないため、使い勝手が悪い。そのため、機密度の高いファイルをSlackで共有してしまう社員が後を絶たないという。

 「個人情報や業務機密はもちろん、オークネットは上場企業ですから、インサイダー情報に該当するような書類の取り扱いにも注意が必要です。Slackで気軽に共有するような利用方法が浸透してしまうと、情報セキュリティやコンプライアンスの『穴』が出来てしまう懸念があり、すぐに対策が必要だと考えていました」(吹田氏)

吹田久実氏

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