ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第892回
Hot Chipsで明かされた「Wildcat Lake」の全貌 Foverosを捨てMCPを選んだインテルの舞台裏
2026年09月07日 12時00分更新
配線面積と帯域制限の課題、そしてダイの救済策に見る歩留まり
ここからはUCIe周りの詳細だ。下の画像にも出てくるが、今回UCIe Standard、すなわち通常のパッケージ基板経由で信号を通すUCIeを利用したことで、UCIeのBall PitchはFoverosの場合の3倍(Foveros:36μm、UCIe:110μm)になっている。
つまりラフに言えば同じ信号を通すのに、UCIeではFoverosの場合の9倍の面積が必要である。これもあって、Wildcat Lakeに占めるUCIeのI/F部の面積は、Panther Lakeの場合の7割増しになっている。
7割増で済んだ理由として大きいことは、GPUがCPU&GPU Tileに統合されてしまったのでそちらの配線がいらないことであるが、そもそもターゲットはPCIe 4.0のNVMe SSDの帯域(~12GB/秒)をフルに生かせるようにすることで、8Gbps×16bitという構成にしている。これだけあればUSB経由でのDisplay出力にも対応可能であり、このあたりで必要十分と判断したようだ。
ただこれは逆に言えば、PコアとEコアの間の帯域も16GB/秒どまりということになる。要するにWildcat LakeでEコアをフルに動かそうとした場合、この帯域がボトルネックになってメモリーアクセスも16GB/秒どまりになってしまうし、スレッドを煩雑にPコアとEコアの間で切り替えるような処理も向いていない。
省電力動作時にはこれで十分だろうが、フルに動かすことを考えた場合、Eコアまでフル稼働させるのはむしろ全体のパフォーマンスを引き上げる足かせに成りかねないことには注意が必要だ。これまでインテルはCPUのメモリーアクセスにこうした制約を与えることはあまりなかったが、Wildcat Lakeに関してはこの辺を割り切ったのかもしれない。
もしフル稼働させるなら、EコアのL2キャッシュ内で収まるような小さなプログラムを動かすのに留めておくのがよさそうである。
またUCIeは汎用プロトコルであるがゆえに、省電力動作も少なくとも標準では用意されない。そこでLink Statusを複数用意して、レイテンシーと消費電力の複数の組み合わせを提供したり、QoSを利用してディスプレー出力を優先するといった工夫がなされたとしている。
UCIeは物理層の仕様なので、どういうデータを流すのかはユーザーに任せられており、QoSは別に拡張ではない。Link Statusに関しては、あるいは転送クロックそのものも複数用意されるのかもしれない。PCIeのDynamic Lane Width(稼働状況に応じて利用するレーン数を変化させる仕組み)は実装が大変になるからインプリメントされていないはずだ
下の画像がラインナップ一覧となるがこれはすでに公開されている。
現在はCore 7 360がハイエンドにラインナップされているのだが、なぜか一覧にない
ただ非常に興味深いのだが、ベースとなるのはCore Series 3のCore 7 350/330/320/315で、この4(5)製品は2 PコアでGPUのXe Coreの数も2つである。問題はPコア×1+Xeコア×1のCore 3 304とPコア×2+Xeコア×1のCore 3 305の2製品で、この2つがあることで29%ものダイが救えたとしていることだ。
Wildcat Lakeのパッケージサイズは35×25×1.23mmとなっている。下の画像は今年4月にWildcat Lakeが発表された時のスライドからパッケージを切り出したものである。
Wildcat Lakeのパッケージ。元のスライドはジサトライッペイ氏の記事である
実写画像ではなくCGではあるのだが、一応これが実際のダイを正しく反映していると仮定すると以下の計算になる。
| タイルのサイズ | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| CPU&GPU Tile | 8.50mm×10.14mm=86.19mm2 | |||||
| Platform Controller Tile | 4.39mm×10.99mm=48.25mm2 | |||||
それほど大きなサイズではないのだが、それでもCPU/GPUが1個足りないダイをSKUに追加することで29%も廃棄するダイが減ったあたり、やはりそれなりにIntel 18Aは厳しいことをうかがわせる。
いろいろと最適化の苦労が見られる結果であることはよく理解できたが、逆に言えばFoverosも既存のタイルも全部捨てて、新しくMCPで作らないと低コスト品にならないというあたりが、インテルのチップレット戦略の弱点を示していると思わざるを得ない。
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