ゲームのオンライン空間で、子どもたちの安全をどう守るのか。Robloxというオンラインゲームの運営会社に対し、各国政府が圧力を強めている。
2026年8月27日のロイターによれば、ロブロックス社はフィリピン政府からの要請に応じ、同国内のユーザー向けに子どもの保護を強化するという。子どもを守る対策としては、年齢確認の強化、有害なコンテンツの速やかな削除、警察との緊密な連携が挙げられている。
8月12日には、米上院司法委員会の犯罪・対テロ小委員会に所属する共和党と民主党の議員2人が、ロブロックス社にレターを送り、オンラインプラットフォームで起きた児童に対する性的虐待に関する調査を始めた。両議員は、児童の安全、性的・身体的虐待、いじめ、金銭的搾取に関わる社内記録をすべて保全するよう指示したうえで、指定した文書を8月31日までに提出するよう求めている。
Robloxは、ユーザーがゲームをつくって公開できるプラットフォームで、1日あたりの利用者は約1億4千万人にのぼる。利用者の3分の1以上を13歳以下が占めるとされ、子どもが多いオンライン空間と言える。かくれんぼや宝探しのような、小学校低学年あるいは未就学の子どもたちでも気軽に楽しめるゲームが多数公開されている。日本でも子どもたちに大人気だが、調べてみると、子どもたちが性的、金銭的な搾取の被害者となる事例が頻繁に起きている。
「子どもたちが傷ついています」
米国には、全米行方不明・被搾取児童センターという非営利の団体がある。ロブロックス社は、児童の性搾取が疑われるとして、2024年に2万4522件、2025年に6万5381件の事案を同センターに報告している。2024年から2025年だけで、報告の件数は2.7倍に跳ね上がっている。
同センターが2025年8月28日にブログで公開した、子どもたちを誘い出す手口を読むと慄然とする。
まず、Robloxや、オンラインゲームでよく使われるチャットサービスDiscordでメッセージを送り、友だちになる。メッセージの交換を通じて関係を築いたうえで、ゲーム内の通貨を引き換えに、子どもたちに画像を送らせる。その後、刃物で身体にネット上の名を刻ませたり、性的な画像の撮影・送信を求めたりする。加害者側は、子どもたちが要求に応じないと、これまでに交換した画像の公開や、家族への暴力をちらつかせて、子どもたちを脅迫したケースもあるという。
被害者は14歳から17歳が75%、11歳から13歳が21%、10歳以下は4%。性別では、女子が84%を占め、男子は16%となっている。
上院議員がロブロックス社に送ったレターも、同社が同センターに報告した事案の件数を引用し、「はっきり申し上げます。貴社のプラットフォーム上で、子どもたちが傷ついています」と述べている。
顔画像のチェックを必須化
Robloxをきっかけに、児童が性的な搾取や暴行の被害を受けたとする民事訴訟が、連邦地裁に統合された訴訟だけでも全米で177件に達している。こうした訴訟で原告側は、年齢確認の甘さ、簡単にう回できるペアレンタルコントロール、成人と未成年者が直接チャットできる仕組みなどが、被害のきっかけになったと主張している。
さらに、少なくとも11の州が、児童虐待と性的搾取の温床になっているなどとして、ロブロックス社を提訴したり、調査に着手したりしている。
ロブロックス社側は2025年11月、チャット機能を使うすべてのユーザーに年齢チェックを義務付けると発表した。中心となるのは、カメラに映した顔の映像からAIが年齢を推定する機能で、画像は処理後すぐに削除されると説明している。政府発行のID、または保護者による確認も選べる。2025年12月にオーストラリア、ニュージーランド、オランダで先行導入し、2026年1月から世界展開した。推定された年齢帯ごとにチャットできる相手を区切り、大人と未成年の接触を制限する仕組みで、大手ゲームプラットフォームが全年齢のユーザーに年齢確認を課すのは初めてだ。
2025年8月には、グルーミングの兆候を検知するAIシステム「センチネル」などをオープンソースとして公開した。ロブロックス社は、直近12ヵ月に、児童が危険にさらされる兆候のある事案の7割近くをセンチネル経由で把握したとしている。会社側は2026年6月に、年齢別アカウントも新設した。8歳以下がKids、9歳から15歳がSelect、16歳以上は通常のRobloxアカウントとされる。たとえばKidsアカウントの場合は、すべてのコミュニケーションがデフォルトで無効化されている。
オーストラリアでは2025年12月に16歳未満のSNSの利用が禁止されたが、ロブロックスについては「ゲームが主な機能」だとして対象から外れた。しかし、電子安全委員会は2026年2月、児童性搾取の報告が相次いでいるとして調査を開始し、調査結果によっては禁止対象への指定も検討する考えだ。
日本でも、Robloxは小学生を中心に利用が広がっている。メディアを含めて、Robloxにおける子どもの保護が話題に上る機会はまだ限られているが、早晩、日本での議論も不可避だろう。
筆者──小島寛明

1975年生まれ、上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。2000年に朝日新聞社に入社、社会部記者を経て、2012年より開発コンサルティング会社に勤務し、モザンビークやラテンアメリカ、東北の被災地などで国際協力分野の技術協力プロジェクトや調査に従事した。2017年6月よりフリーランスの記者として活動している。取材のテーマは「テクノロジーと社会」「アフリカと日本」「東北」など。著書に『仮想通貨の新ルール』(ビジネスインサイダージャパン取材班との共著)。
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