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マクニカ×ASCII連載 第5回

「個人任せ」から「組織で守る」へ テクノロジーが変える熱中症対策

2026年09月09日 11時00分更新

文● マクニカnote編集部

提供: マクニカ

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 こんにちは、マクニカnote編集部です。

 梅雨が明けると、一気にやってくる厳しい暑さ。今年から、40度以上の日を示す「酷暑日」という新しい呼び方も登場し、熱中症はこれまで以上に身近で、深刻な問題となっています。

 そんな中、社内で「熱中症対策をテーマにした勉強会をやるらしい」と聞きつけ、「それは気になる!」と、「未来にタネまくメディア勉強会:酷暑時代に必見 - テクノロジーが変える熱中症対策」に参加してきました。

 会場では、熱中症対策を「我慢」や「個人任せ」にしないための新しいアプローチが数多く紹介されていました。環境を見える化する仕組みや、実際に体を熱から守るウェアラブルソリューションなど、気になる展示もたくさんありました。今回は、この勉強会で印象に残ったポイントを中心にレポートします。

「酷暑時代に必見 テクノロジーが変える熱中症対策」をテーマに開催された勉強会

酷暑時代に求められる、新しい熱中症対策

 勉強会は、「今、熱中症対策を取り巻く環境が大きく変わっている」という話からスタートしました。

 気象庁のデータによると、日本の平均気温は年々上昇していて、2024年には統計開始以来の最高温度を記録。熱中症による救急搬送者数も増え続けていて、熱中症はもはや「夏だから気を付けよう」で済む話ではなく、社会全体で向き合うべき問題になっています。

猛暑の常態化により、暑さは社会課題として深刻さを増しています

熱中症による救急搬送は過去最多となっています

 最初に登壇したのは、イノベーション戦略事業本部 ものづくりコンサルティング事業部 事業部長の米内慶太。ここで印象に残ったのは、「寒さには防寒具を使うのが当たり前なのに、暑さはいまだに『我慢すればいい』という考え方が残っている」という話でした。極寒の環境で防寒対策をするのと同じように、酷暑が当たり前となった今、暑さ対策をすることが当たり前になるべきだという意見に納得しました。

酷暑時代に求められる熱中症対策について解説する米内

 また、熱中症は屋外だけの問題ではなく、実は住居内で発生するケースが最も多く、全体の約4割を占めるという話には驚きました。熱中症になる方は高齢者が多いのはもちろんですが、体温調節機能が未熟な子どもたちや、地面からの照り返しによる熱(輻射熱)の影響を受けやすいペットもリスクが高いそうです。

子どもは環境条件による熱中症リスクが高い

 熱中症対策は制度面でも変化があり、2025年6月には改正労働安全衛生規則が施行され、企業に求められる責任も大きく変わりました。これまで本人任せになりがちだった熱中症対策は、組織として人を守る取り組みへとシフトしています。この変化こそが、今回の勉強会で紹介されるさまざまなソリューションへの布石でした。

見えない熱中症リスクをどう防ぐか

 ここまで話を聞いていて「なるほど」と思ったのは、熱中症は本人の自覚だけでは防ぎきれないという点です。その理由として「隠れ熱中症リスク」が紹介されました。

 熱中症は、症状が現れる前から身体の内部で進行しています。例えば激しい運動と休憩を繰り返すと、運動後に40分間休憩しても身体の深部体温は十分に下がらず、体内に熱が蓄積されたままになることがあります。本人は「しっかり休んだから大丈夫」と思っていても、実際には熱中症のリスクが高まっているケースがあるそうです。

休憩後も深部体温は十分に下がらず、熱が体内に残ることがあります

 さらに、建設現場や工場などでは、「少し具合が悪い」と感じても、作業を止めたくない、周囲に迷惑をかけたくないという気持ちから、無理をしてしまうケースも少なくありません。

 高齢者や子ども、ペットのように、自分の異変をうまく伝えられないケースもあります。こうした話を聞くと、本人の感覚や自己申告だけに頼る熱中症対策では、どうしても限界があることがよくわかります。

 そこで重要になるのが、「WBGT(暑さ指数)」です。WBGTは気温や湿度だけでなく、地面や建物から受ける輻射熱も含めて評価する指標で、工場では設備からの放熱、屋外ではアスファルトの照り返しなど、実際に人体が受ける暑さをより正確に把握できます。そのため、WBGTを継続的に測定・管理することが、熱中症対策の第一歩になります。

 米内は、「熱中症は自覚や自己申告では守れない。だからこそ、テクノロジーを活用して環境を見える化し、人の状態を把握し、危険を早めに知らせることが重要になる」と言い、その考え方を具体的なソリューションとして形にしたものが、次に紹介された空気質プラットフォーム「AiryQonnect(エアリーコネクト)」でした。

環境の「見える化」が早期対策につながる

 では、その「環境の見える化」はどう実現するのでしょうか。その答えとして紹介されたのが、空気質プラットフォーム「AiryQonnect(エアリーコネクト)」です。

 登壇したアルティマカンパニー 第1技術統括部 応用技術第1部の甲斐田陽一は、AiryQonnectを「空気質データをさまざまなものとつなぎ、新しい価値を提供するためのプラットフォーム」と紹介しました。

AiryQonnectによる熱中症対策を紹介する甲斐田

 AiryQonnectは、温度や湿度などの空気質データをセンサーで取得し、クラウドに集約・管理するプラットフォームで、取得したデータをWeb画面で確認できるほか、AI解析や各種サービスとの連携にも活用できます。もともとはオフィスなどのCO2濃度や、PM2.5などの値を測定し、空気環境を管理するためのソリューションでしたが、今回の勉強会では、その仕組みを熱中症対策へ応用した取り組みが紹介されました。

AiryQonnectでは様々な環境を可視化できます

 新型のAiryQonnectは、WBGT(暑さ指数)を計測する屋内センサーと連携。気温や湿度だけでなく、輻射熱も含めたWBGTを測定し、そのデータをクラウドで一元管理。複数の拠点を一覧で確認したり、マップ上でセンサーの設置場所と現在の状態を表示したりと、現場全体の暑熱環境をリアルタイムで把握できます。

勉強会で紹介されたデモ画面

 これらは話で聞くだけでなく、AiryQonnectのデモ画面で説明されたので、実際にどう動くのか、何ができるのかがよく理解できました。デモ画面では、現在のWBGTや気温、湿度が一覧表示されるだけでなく、過去のデータをグラフで振り返ることもでき、「いつ」「どこで」危険な状態になったのかを後から分析できるようになっていました。複数の現場を一つの画面でまとめて管理できるのも便利そうですし、危険な状態になった原因がわかれば、同じ状況になったときの対応策も考えられます。

 もちろん、「見える化」するだけでは終わりません。あらかじめ設定した閾値を超えると管理者へメールで通知されるほか、現場の警告灯と連携して、その場にいる作業者へ危険を知らせることもできます。管理者だけでなく、現場にいる人自身が危険に気付ける仕組みになっているのはいいですね。

 甲斐田は、「センサーの種類を増やしていくことで、適用できるアプリケーションを広げていく」と説明します。熱中症対策はAiryQonnectの活用の場の一つであり、最初の説明にあった「空気質をさまざまなものとつなぎ、新しい価値を提供するためのプラットフォーム」と言っていた意味がとてもよくわかりました。

 「暑い」と感じてから対策するのではなく、データで危険を把握して先回りする。AiryQonnectは、一歩早く対策を打つのにとても役立つ存在になるのではないかと感じるセッションでした。

ウェアラブルが変える熱中症対策

 環境データを把握できたら、次に気になるのは実際の対策です。勉強会では、イノベーション戦略事業本部 ものづくりコンサルティング事業部の大見善紀が、熱中症対策となるさまざまなウェアラブルソリューションを紹介しました。

こどもやペット向けのウェアラブルソリューションを紹介する大見

 マクニカのものづくりコンサルティングチームが開発を支援した、いまや暑さ対策の定番であるファン付きウェアの説明から始まり、その技術力を生かしてを行っている、ベビーカー・チャイルドシート向け空調システムやペット向けファン付きウェア、太陽光と蓄電池を活用したミスト発生装置など、これから定番になりそうなアイディアが紹介されていました。実際に展示を見て回ると、「熱中症対策」と一口に言っても、その対象やアプローチは本当に幅広いことがわかります。

 大見は、「必要なセンサーや通信機能を組み合わせ、お客様が求める製品として形にするところまで支援する」と説明しました。マクニカのものづくりコンサルティングチームでは、部品やデバイスを提供するだけでなく、それらを組み合わせた製品開発プロセスまで支援できることが強みだといいます。

 環境を見守る仕組みと、実際に熱から守る仕組み。その両方がそろうことで、「気付いたときには手遅れ」を防ぐ熱中症対策が実現できる。そう実感できたセッションでした。

熱中症対策から広がるものづくりコンサルティング

 勉強会を通して感じたのは、ものづくりコンサルティングチームの幅広い実装力です。

 WBGTセンサーやウェアラブルデバイス、クラウド、通知システムなど、それぞれは独立した技術ですが、それらを組み合わせることで初めて「現場で使える熱中症対策」が実現できます。そして、その組み合わせを提案し、実際の製品として形にするプロセスまで支援するのが、ものづくりコンサルティングチームです。

 製造や設計のノウハウを持たないお客様からの課題に向き合って、ものづくりを支援する。まさに、時代に求められるコンサルティングサービスだと感じました。

さまざまな技術を組み合わせ、新しい価値を生み出すものづくりコンサルティング

 「熱中症対策」という身近なテーマから、IoTやセンシング、クラウド活用まで、一連の取り組みを知ることができた今回の勉強会。私たち編集部にとっても、現場の課題をテクノロジーでどう解決していくのか。そのヒントが随所に詰まった勉強会でした。

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