このページの本文へ

保守的な土壌からDXマインドを醸成したAI活用推進の軌跡

首都高が「AIの高利用者」を1年で10倍に 非IT人材に刺さったGemini Notebookと“泥臭い”浸透策

2026年08月24日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

一度はつまづくも、泥臭い浸透施策で“AI高利用者を10倍”に

 こうした中、同社が大きな転機が訪れる。2025年1月に発表された「Google Workspace」の新料金プランで、入力データが学習されない形でGeminiが利用可能になったことだ。さらに同じタイミングで、Gemini Notebookも登場している。

 鈴木氏は、「我々が2013年からGoogle WorkspaceのStandardプランを利用してきた中で、大幅な値上げを伴わずGeminiとGemini Notebookが使えるようになりました。これらの活用を通じて『DXマインドを醸成できるチャンスが来た』と思いました」と振り返る。

転機となったGoogle Workspaceの新料金プランとGemini Notebookの登場

 そこで、全社員を対象にGeminiとGemini Notebookの概要や各種機能、機能活用のデモやハンズオンをまとめた、動画形式のDX研修を実施した。

 しかし、これだけでは現場への浸透を促すことは難しかったという。研修後のアンケートをみると「正直、自分の仕事でどう生成AIを使えばいいのか分かりません」という回答が多く、アプローチの見直しを迫られることになった。

首都高におけるGemini活用の歩み

 そこで、首都高では新たに3つの施策を展開していく。

 1つ目は、「誰一人取り残さない」全社レベルでの生成AI活用の推進だ。これまでは、デジタルに強い一部の社員だけに重点を置いていたが、「社員全員が一定のレベルまでAIを使えるようにする」という目標に切り替えた。具体的には、日常業務での高頻度な活用から、企画・調査・分析といった応用活用までをこなせるレベルを目標に据えている。

 「すでに生成AIの利用率が80%の社員を90%に引き上げるよりも、まったく使っていない(0%の)社員を50%にまで引き上げる方が容易です。会社全体の業務効率化においても大きな効果が得られます」(鈴木氏)

全社員を活用レベル3~4の間にまで引き上げることを目標とした

 2つ目の施策は、この目標を達成するために企画した、「対面×終日」型ワークショップの開催だ。

 動画研修での反省を活かし、GeminiとGemini Notebookの機能を網羅したうえで、自社業務で頻度が高く、効果が大きい活用ケースを徹底的にハンズオンする内容とした。講師はDX推進課のメンバーが自ら務め、グループ会社を含む約500名に対して、計23回にわたって実施した。

ハンズオン研修での演習項目の抜粋

 3つ目の施策は、「局長・部長クラス」を対象としたワークショップの開催だ。「例えば、社員が生成AIで作った画像をWebサイトで使いたくても、その上司が反対してしまったら、そこで活用がストップしてしまいます。だからこそ、トップ層への理解促進も必要になります」と鈴木氏。

 これらの施策に加え、同社では全社員が投稿できる「生成AI活用ケース集」の運用や、全社・部署ごとのGeminiの利用実績を可視化する「ダッシュボード」の構築、さらには、DXアイディアやアクションを募集・表彰する制度など、多角的な浸透策を展開している。

 こうした施策を泥臭く積み重ねた結果、わずか1年(2025年2月~2026年2月)で、Geminiの高頻度利用者が10倍に急増する成果へと結びついた。さらに、2026年5月に実施した社内アンケートでは、7割以上の社員が「1日当たり30分以上」の業務効率化を体感していると答え、全社的なDXを後押しする原動力になっている。

新たな浸透策の展開とその成果

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

  • 角川アスキー総合研究所