DDI管理のInfobloxがDNSとセキュリティに関する発表会を開催
プロアクティブDNSでDNSをセキュリティ基盤へ 福岡大学でも「運用課題なし」の実績
2026年08月03日 09時00分更新
DNSをネットワークインフラからセキュリティ基盤へ。2026年7月29日に開催されたInfobloxの発表会では、DNSと脅威インテリジェンスを組み合わせることで、危険なサイトへのアクセスを遮断するプロアクティブDNSの現状が解説された。実際にプロアクティブDNSを運用している福岡大学の事例のほか、新サービスであるEASM(External Attack Surface Management)も紹介された。
悪性ドメインでも名前解決してしまうDNS 脅威は深刻に
1999年に創業したInfobloxは、DDIと呼ばれるDNS、DHCP、IPアドレス管理の統合型サービスを手がける老舗。現在は、既存のDDIのセキュア化を事業の中心に据えており、世界154カ国で製品を展開。現在、導入企業社数は6000社を超え、グローバルでは50%以上のシェアを持つ。
DNSはIPネットワークで必須となる名前解決を提供している。クライアントからのドメイン名解決のリクエストを受け、DNSサーバーが権威サーバーに問い合わせをかけると、接続相手のIPアドレスを応答してくれる仕組み。インターネットや社内LANなど、すべてのネットワーク接続は、DNSによる名前解決から始まるため、きわめて重要なサービスだ。
一方で、DNSの弱点はどんなドメインに対しても名前解決してしまうこと。他のIPネットワークの技術と同じく、DNSも歴史が古い分、インターネットでの悪用を前提としておらず、長らくセキュリティが実装されてこなかった。そのため、通常のサイトのドメインだけではなく、フィッシングやマルウェア配布で利用される悪性のドメインでも、名前解決してしまう。そのため、脅威の多くはドメインの悪用からスタートすることになる。
脅威インテリジェンスとの連携でクエリの善悪を識別する「プロアクティブDNS」
Infobloxが発表したグローバル脅威動向レポートによると、1億2000万件以上の新規登録ドメインのうち、約1/4にあたる22%が攻撃目標で悪用されている。また、このうち88%は単一の顧客でのみ観測され、44%はわずか1日で活動を終了する。つまり脅威がカスタマイズされ、特定の企業に向けられているわけだ。現在、詐欺関連のドメインは前年比62%増加し、もっとも成長が著しいカテゴリになってしまっている。
こうしたDNSの悪用に対して、有効な対策とされているのが「プロアクティブDNS」だ。名前解決に独自のポリシーを適用できるRPZ (Response Policy Zones)を実装したプロアクティブDNSサーバーは、悪性サイトなどを収集した脅威インテリジェンスと連携できる。正当なドメイン、悪意のあるドメインを識別し、悪意のあるドメインへのクエリに対しては名前解決を拒否できる。
名前解決が拒否されると、クライアントは接続先のIPアドレスがわからないため、悪意のあるサイトやサーバーには到達しないで済むことになる。ユーザーのアクセスのみならず、攻撃者が利用するコマンド&コントロールでの通信も難しくなるため、脅威は事前・事後の段階でも未然に防がれることになる。
RPZは2010年に公開され、DNSサービスへの実装が進んでいる。また、NIST(米国国立標準技術研究所)が作成し、権威のある「NIST SP 800-81」というセキュアDNSのベストプラクティスも、2026年3月に第3版として改定され、プロアクティブDNSの実装が記載されている。NIST SP 800-81を初版から執筆してきたNISTのスコット・ローズ氏とプロアクティブDNSを提供するInfobloxのロス・ギブソン氏と共同執筆されたものだという。
プロアクティブDNSは、現在のフィッシングやマルウェアに対して有効性の高い対策と言える。IPネットワークのすべてのデバイスは他のプロトコルより先にDNSを利用するため、PCやスマホ、IoTデバイスなどすべての端末で利用でき、新しいエージェントも不要だ。また、RPZによるポリシー適用によって追加される処理時間も数ミリ秒で、数千万規模の脅威インジケーターを処理することが可能だという。「DNSは理想的なセキュリティポイント。セキュリティとパフォーマンスのトレードオフはほぼ発生しない」とリユ氏は語る。
プロアクティブDNSと連携する「Infoblox Threat Defense」では、1日あたり700億ものDNSイベントを分析している。実環境で最初のDNSが観測される前に脅威が検知され、平均63日前に攻撃発生前の警告が出されているという。「セキュアDNSを利用することで、マルウェア攻撃の92%を削減できる」という米国家安全保障局(NSA)局長のコメントも出されているという。
導入から6年の実績を披露した福岡大学 問い合わせや運用課題は発生せず
Infobloxに実装されたプロアクティブDNSを利用することで、推定3万台超のデバイスで脅威ブロックに成功しているのが、福岡大学だ。登壇した福岡大学情報基盤センター専任教員の藤村丞准教授は、2020年9月から導入しているプロアクティブDNSに加え、有効性を高めるためのDoH(DNS over HTTPS)対策やOP53B/OP853Bなどについても言及した。
プロアクティブDNSの導入で実現できたのは、危険なサイトにたどり着く前に防ぐ先制防御に加え、既知の悪性ドメインへの感染後の外部通信を遮断するという観点で出口対策にもつながるという。また、端末への専用ソフト導入が必要なく、組織全体に適用可能なことから「シンプルだが、効果の高い防御方法」と指摘した。
一方で、プロアクティブDNSを迂回されると、有効性は保たれない。そのため、福岡大学ではHTTPSで暗号化されたDoHでの名前解決をブロックしているという。藤村氏は「プロアクティブDNSの効果を得るためにも、DoH対策は避けて通れない」と指摘。また、ユーザーが外部のDNSサーバーに直接問い合わせをかけるのを防ぐため、OP53B/OP853Bとして外向けのDNSクエリで利用するTCP/UDP 53番/853番のポートもブロックした。
こうしたプロアクティブDNS、DoH対策、OP53B/OP853BにDNSSECを加えた「合わせ技」により、学内デバイスでのDoHクエリや脅威ブロックを実現。「導入以来、運用を通して、大きな問い合わせや運用課題が発生していない」という運用負荷の軽減も大きなメリットになると強調する。その上で、「DNSは単なる名前解決のインフラではなく。クエリを正規DNSへ集約し、可視化・制御・端末対応につなげるセキュリティ基盤として運用する必要がある」と結論を述べた。
EASMで自社の外部露出リソースやサプライチェーンのリスクも検知
発表会では、新たにInfobloxでは攻撃者目線で外部に露出したリソースを管理するEASM(External Attack Surface Management)サービスの提供開始も発表された。自社のインターネット資産を外部視点で継続的に探索するEASMに加え、EASMのアドオンとしてサプライチェーンまでをカバーする「Supply Chain Intelligence」も提供する。
Infobloxならではの強みとして、やはりDNSネイティブの探索が挙げられる。通常、脆弱性とみなされない、放置されたり、期限切れたドメインなどのDNSリスクも脆弱性と見なす。Infoblox Japan カントリーマネージャーの土橋一範氏は、「多くの企業がDNSを攻撃対象となる外部露出リソースとして管理していない」と指摘する。InfobloxのEASMでは、こうした外部露出リソースを分析し、ビジネス影響度や悪用の可能性で優先順位付けし、ユーザーの対応を促せるという。
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