リコー「GR」シリーズといえば銀塩時代の1996年に登場した初代「GR1」から引き継がれる高級コンパクトカメラだ。2005年の「GR DIGITAL」でデジタル化され、2013年には現行機の流れを汲む撮像素子をAPS-Cに大型化した「GR」が登場した。
そして昨年9月には約6年振りとなる新モデル「GR Ⅳ」を発売。その後も今年1月にソフトな描写が楽しめる「GR Ⅳ HDF」、2月にはモノクロ専用機の「GR Ⅳ Monochrome」と派生モデルが立て続けてラインナップされた。
今回はこの3モデルをリコーから借りたので、「GR」シリーズ最新モデルの撮り心地や、各モデルの個性を探ってみた。
3モデルとも外観や操作系などは基本的に共通なので、それぞれの機種については後半で述べるとして、まずはノーマルモデルとなる「GR Ⅳ」からみていこう。
なくなっていた上下レバーが復活
PENTAXの「プログラムオートEx」搭載!?
ボディーは相変わらずコンパクトで、手のひらに収まるという表現が相応しいサイズ感。グリップ部の緩やかな膨らみが手によく馴染み、しっかりと構えることができる。
沈胴式のレンズ部もカバー付きなので、無造作にポケットに突っ込んで持ち歩いても安心だ。
背面の操作系は前モデルで無くなった右肩の上下レバーが復活し、前モデルで採用された十字キー周りホイールダイヤルは廃止された。つまりは元に戻ったということだが、これはユーザーの要望が多かったということだろうか。
3型103.7万ドットの背面液晶は変わらず固定式。いつもなら可動しないのは今時どうかと文句を言うところだが、「GR」のコンパクトなサイズを保持するためなら固定式のほう良いと思うのは我ながら節操がない。
細かい点では上部の「ADJ/露出補正レバー」がダイヤルに変更されているが、押し込むと登録した5つの設定を即座に呼びだす「ADJ」モードは引き続き搭載されている。
撮影時の露出調整は前後のダイヤルとレバーの3か所でおこなえるが、残念なのはISO感度がマニュアル露出モードでしか割り当てられないことだ。
例えば絞り優先では絞り値と露出補正、ISO感度と割り当てたいところだが何故かできない。できれば今度のファームアップで改善を願いたいところである。
その代わりといってはなんだが、プログラム露出では前後のダイヤルを操作すると即座に絞り/シャッタースピード優先に切り替わり、被写界深度や被写体の動きに合わせた調整がしやすい「プログラムオートEx」が搭載された。
カメラマニアならすぐにピンとくるだろうが、これは「PENTAX」のカメラで採用されている「ハイパープログラム」(初搭載は1991年の銀塩一眼レフ「Z-1」と歴史がある)と同じ機能だ。
正直にいえばプログラムシフトでも十分に事足りるのだが、「PENTAX」の機能が「GR」と融合したと思うとカメラマニア的にはニヤリとしてしまう。
なおマニュアル露出時にボタンを押すと、即座に適正露出に設定される「ハイパーマニュアル」という機能もあるので、こちらの採用も検討して欲しい。
右側面には動画/静止画の切換ボタンがあるが、これも「Fn」ボタンとして他の機能を割り当てることができる。
端子類はUSB-Cのみだが、バッテリーの充電と給電にデータの転送、さらに映像出力にも対応している。
バッテリーは容量がアップした「DB-120」に変更されたが、それでも公称撮影可能枚数は250枚と少なめ。長時間の撮影なら予備(5100円)を用意したほうがいいだろう。
メディアもmicroSD(UHS-I)に変更されたが、その代わりに約53GBの内蔵メモリーを搭載し、RAW+JPEG(L)で約774枚の撮影ができる。ただ内蔵メモリーとmicroSDに同時記録や振り分け記録などを設定することはできない。
レンズは新開発の28mmF2.8
素子は裏面照射で高感度が性能UP
3モデルともレンズは新開発の35mm換算28mmF2.8(実焦点距離18.3mm)だ。撮像素子は「GR Ⅳ Monochrome」のみモノクロ仕様だが、裏面照射型2574万画素と解像度は共通なので、ここでもまずはノーマルモデルの「GR Ⅳ」で画質や機能を見ていこう。
最初に遠景の定点撮影でレンズ描写と解像力をチェックしてみた。絞り開放から高い解像感で、中心部はもちろん周辺部でも像の乱れは見られない。
さらにF5.6程度まで絞ると解像感はピークに達する。F11を過ぎると回折現象の影響が見え始め、最小絞りのF16ではわずかに甘さを感じる。回折補正の項目は無いので、気になるならシャープネスで調整してみるといいだろう。
写真の赤枠の位置を等倍に拡大して比較してみた。以下の画質設定は共通。イメージコントロール スタンダート・ダイナミックレンジオート・ホワイトバランスオート・JPEG L。
(作例はすべてクリックで拡大表示になります)
撮影時に設定できるレンズ補正は周辺光量補正のみ。オンオフで比較してみると、絞り開放でもほぼ完全に補正されているのがわかる。
歪曲の補正項目もないが、水平垂直が揃ったシンメトリーな風景や、ビルを見上げた遠近感あるシーンを撮影してみても歪みは気にならない。
光源が直接写り込むようなシーンでもハレーションを起こすことはなく、逆光耐性も優秀だ。
最短撮影距離は通常時で0.1m、マクロモードは0.06~0.15mの範囲で近接撮影をすることができる。
画像の一部を切り取って35mm相当と50mm相当の画角で撮影できるクロップ機能も引き続き備えている。ただRAWでもクロップされた画角で記録されてしまい、そのぶん画素数が減少するのも変わらない。
高感度は裏面照射型のおかげで最高ISO20万4800まで設定が可能になった。画質的にはISO1万2800程度まで安心して常用でき、ISO2万5600を超えると解像感低下が気になるが、RAW現像で調整をするなどの工夫をすればISO5万1200までは実用範囲内だ。ISO10万2400以上では急激にノイズが増加するので実質は拡張感度といった感じだろう。
なお高感度ノイズ低減の設定は感度別に個別に調整することができるのは、気が利いている。
感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200・ISO102400・ISO204800。高感度ノイズ低減はオート。
ボディー内手ブレ補正も中央6段周辺4段。実際に試してみると遠景ならシャッタースピード1/2秒、近景でも1/4秒くらいなら比較的安全な範囲。コンパクトサイズのボディーからすると十分な効果である。
色調などに効果をくわえる「イメージコントロール」は全14種類が用意され、色相やコントラスト、モノクロなどでは粒状感も追加で調整することができる。自分好みの画像仕上げを求めたい人はいろいろ試してみるのも面白そうだ。
ここまではノーマルモデル「GR Ⅳ」の機能や画質を中心に紹介してきたが、後編では撮ってみた使用感や、「GR Ⅳ HDF」と「GR Ⅳ Monochrome」の作例を交えてお伝えしていこう。
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