このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

MIXIのデザイントップが語る“クリエティブな現場”でのAI共創の歩みと未来

「デザインの仕事は半減するかもしれない」 MIXIデザイン本部が挑む「AIネイティブなものづくり」への転換

2026年06月05日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 MIXIの中で、クリエイティブを通じた価値創出を担う「デザイン本部」。同組織が現在挑んでいるのが、デザインの枠を越え、プロダクト開発そのものを“AIネイティブ”に再構築することだ。

 そこに至るまでにも、「AI発表会」の定期開催や「ガイドライン」の整備、さらには「評価指標」にAI活用を組み込むなど、クリエイティブの現場で“AIを当たり前に使う”ための独自施策を積み重ねてきた。

 同社の執行役員 CDO(Chief Design Officer)兼 デザイン本部長の横山義之氏に、AIとクリエイターが共創する組織づくりについて、その歩みや展望を聞いた。

MIXI 執行役員 CDO 兼 デザイン本部長 横山義之氏

98%の工数削減、500以上のAI事例 デザイン本部が変えたクリエティブの形

 MIXIでは、2023年から組織的にAI活用を推進してきた。AIツールを全社展開し、さまざまな仕組み化によって定着を促進。その結果、全社でのAI活用率は99%を越え、今では「AIで何を届けられるか」を追求するフェーズへと突入している。

MIXIのAI活用の現在地(MIXI MEETUP AI DAY基調講演・YouTubeより)

 あわせて、各部門が独自の変革を進める中、500以上のAI事例を創出してきたのがデザイン本部だ。経営戦略と各事業をクリエイティブの力でつなぐ全社横断的な組織であり、約300名在籍するデザイン職のAI活用を先導する役割も持つ。

 デザイン本部が手掛けたAI事例のひとつが、98%の工数削減を実現した「モンストX活性化プロジェクト」だ。人気ゲームアプリ「モンスターストライク」の公式SNS(X)の運営において、「Adobe Firefly」や「Google Flow」など複数のAIツールを組み合わせた、独自のクリエイティブフローを設計した。

 その結果、一部のケースでは、14営業日を要していた制作工数をわずか1時間に短縮。日本のトレンド6位を獲得する投稿も生まれるなど、スピードとクオリティの両立を達成している。

モンストX活性化プロジェクト

 2025年5月に開業1周年を迎えた「LaLa arena TOKYO-BAY」のPR動画も、Adobe Fireflyを活用した事例だ。2枚の静止画をもとに、「タイムラプス撮影(時間の経過を圧縮して表現する撮影方法)」したかのようなカットイメージを半日ほどで作成。現地での長時間撮影や手の込んだ編集などを必要としないこのアプロ―チは、同業者からも反響が大きかったという。

「LaLa arena TOKYO-BAY」のPR動画の制作

 これらはクリエイティブ領域におけるAI活用のほんの一例に過ぎない。こうした成果の裏側には、単なるAIツールの導入に留まらない、デザイン本部独自の“組織づくり”がある。

“AI発表会”と“ガイドライン”の両輪でAI活用の土台固め

 2023年にChatGPTが登場し、MIXI全体でAIの検証がスタートする中、デザイン本部でもAIの可能性を模索し始めた。当時の心境について横山氏は、「AIへの危機感が半分、横断組織として足並みを揃える意識が半分」だったと振り返る。

 AIの可能性を模索する一環として、2024年9月から半年に一度、社内の職種を横断する形で開催しているのが「AI発表会」だ。もともとはテクノロジー活用を共有する場だったが、AIに振り切る形へと転換。最終成果だけではなく試行錯誤のプロセスも披露し、個人やチームの学びを組織全体に広げる取り組みだ。

2026年4月に開催された第5回「AI発表会」の様子

 こうしたボトムアップ型の施策に加え、デザイン現場でのAI活用を定着させるガイドラインの整備も進めた。ただ、2024年早々に策定した最初のガイドラインは、生成AIに対する社会的な懸念もあり、社内検証に留まる“守りに偏った”内容だったという。

 「これでは実務で使えない」という声を受けて、現場で最も利用頻度が高いAdobe製品にフォーカスしたガイドラインの試験運用を開始。デザインにおけるガバナンスのあり方を整理し、知財法務部門ともすり合わせながら、リスク管理と実務活用の両立を図っている。

 現在では「AI利用を促す」という方針のもと、対象ツールやアウトプット領域(動画、音声など)を拡張した新ガイドラインが運用されている。現場マネージャーが自発的に対象ツールをテーマとした勉強会を開く動きもみられ、「『AIを正しく使えば武器になる』というマインドセットの転換になった」と横山氏。

ガイドライン整備の流れ

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    IT技術者の4割が「5年後のスキル陳腐化」に危機感/働くシニアは多いが「長く働きやすい」環境ではない日本/トークンコストの成果証明は難しい、ほか

  2. 2位

    デジタル

    Zscaler Internet AccessのIKEv2接続例 ヤマハRTX1300でZIA経由の冗長IPsec VPNを構築する方法

  3. 3位

    データセンター

    AIデータセンターの「電力・冷却課題」打破へ シュナイダーが営業・設計・現場を直結する新組織立ち上げ

  4. 4位

    sponsored

    先制的サイバーセキュリティのため、経営者が今こそ考えるべきこと

  5. 5位

    トピックス

    モンハン、FF、エスコン8……注目作だらけで整理券が消えた!? SIEブースの人気がすごい【TGS2026特集】

  6. 6位

    ビジネス・開発

    ラスボスCOBOLを倒すために、7チームはなにを選択し、なにを捨てたのか?

  7. 7位

    デジタル

    Cloudflare WANとの接続検証でRTX1300/RTX840が確認、IPsecや自動切替に対応

  8. 8位

    サーバー・ストレージ

    「身代金を払えば復元できる」は過去の幻想――約束を守らない攻撃者と変容するランサムエコシステム

  9. 9位

    ビジネス・開発

    AI駆動型開発で生産性倍増を狙うIBM セキュリティ、トークンコスト、品質の課題をどう解決する?

  10. 10位

    トピックス

    ガンコンが令和に復活!? 『タイムクライシス』を足踏みペダルで遊べてクッソ懐かしい【TGS2026特集】

集計期間:
2026年09月18日~2026年09月24日
  • 角川アスキー総合研究所