このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

MIXIのデザイントップが語る“クリエティブな現場”でのAI共創の歩みと未来

「デザインの仕事は半減するかもしれない」 MIXIデザイン本部が挑む「AIネイティブなものづくり」への転換

2026年06月05日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

評価指標へ組み込むことでAI活用を“当たり前“に

 一方で横山氏を悩ませたのは、個々の社員が持つ“AIへの本気度”のギャップだ。一度、AIスキルの取得を促す制度を試した際、想定以上に利用する社員が少なく、強い危機感を覚えたという。「これでは、組織的なインパクトになりえない。仕組み化によって“AIを使うことが当たり前の状態”にしないとダメだと実感した」(横山氏)

 そこで、2025年4月より、評価指標に「AI活動」の項目を追加し、等級や役割に応じた行動指針を定義した。AIを活用して業務やワークフローを改善し、それを組織内で広げられているかどうかを重視する評価設計であり、等級が上がるにつれて広い範囲での貢献が求められる。もちろん、行動指針に沿ってAI活動を進める社員には、十分な査定で報いる。

 その効果は絶大で、現場から多様な取り組みが報告されるようになり、「評価指標の定義だけでこれだけ変わるのか」と驚いたという。横山氏は、「今や、AI人材は企業間での奪い合い。社内の人材がAIにフルコミットしてくれたなら、市場価値よりも高い評価で応えている」という。

AI活動の評価指針

単なるAIツール活用から“AIを前提としたものづくり”への転換

 そして現在、デザイン本部が向き合っているのが、AIを前提としたデザインワークフローへの刷新だ。ここまでの取り組みで、デザインの作業工程におけるAIの浸透率は40%~60%まで向上した。ただし、ワークフローを細分化して見てみると、AI化されている工程はまだまだ“歯抜け”の状態にあった。

現時点でのデザインプロセスの変化

 「まずは、取り入れやすいところからAIを試し、AIツールの利用も広がってきた。ただ、既存のワークフローにAIを当てはめているに過ぎず、もっと最適なワークフローがあるかもしれない。今後はその模索に同じだけのトライをしなければならない」(横山氏)

 2026年度は、専門のプロジェクトチームを立ち上げ、一つひとつの工程をゼロベースで疑い、AIネイティブに置き換えられないかを検証している。これにより、自動化・半自動化できる工程や廃止できる工程を見極めていくという。

 さらに、プロダクト開発のワークフローには、企画やエンジニアといった他部門の社員も関わってくる。最終的には、こうした社内連携を含めてAIネイティブ化を進め、デザインの枠を越えた「AI開発パイプライン」の構築を目指す。横山氏は、「実現できれば市場投入のスピードが劇的に変わる。もはや“ものづくり全体を再構築する”という視点だが、そこまでやる価値がある」と意気込む。

デザインプロセスを溶かしてプロダクト開発を再構築

 加えて、おろそかにできないのが「MIXIらしさ」の追求だ。「エンジニア中心の体制でリリースを早めることも可能だが、『ユーザーサプライズファースト』といったMIXIらしさを追求しなければ、会社の存在意義が失われてしまう」(横山氏)

 この「MIXIらしさ」を満たしたUI/UXかどうかを、AIにスコア化させる検証も進んでいる。デザイン原則や過去の資産、パーパス、人によるフィードバックなどをAIに学習させているが、現状は評価のブレ幅も大きく、試行錯誤の段階にあるという。

仕事が半減するかもしれない未来は、“逆にチャンス”でもある

 横山氏は、現在目指しているAI開発パイプラインが確立できた先には、「デザイナーがデザインだけをする未来から脱却する可能性がある」と語る。

 「もしかしたら、これまでの僕らの仕事や価値を半分捨てることになるかもしれない。しかし、その先には新たな仕事や価値が生まれる可能性もある。これを自分たちで切り拓くことで、次の波も乗り越えられる力がつく。この時代にデザイナーをしているなら『逆にチャンス』だと向き合うしかない」(横山氏)

 横山氏は、AIに対して悲観的になり過ぎる必要はないと語る。「AI発表会を見ていると、毎回『その発想があったのか』と気づきを得られる。それがデザインの改善に直結しているかどうかは分からないが、いつの時代もその環境に応じたデザインの形がきっとあるはず。これからも、多様なデザイン職が揃った、MIXIならではのAI活用を模索していきたい」と締めくくった。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

  • 角川アスキー総合研究所