業務を変えるkintoneユーザー事例 第307回
全工場のDXにつながった「配車アプリ」と見える化の文化を生んだ「生産実績アプリ」
紙と手書きの負のスパイラルを断ち切れ “苦い思い出”起点のkintoneアプリが老舗製造業を変えた
2026年05月14日 09時00分更新
生産課の係長が、ホワイトボードと紙資料を突き合わせ、電卓で1時間かけて実績をまとめる ―― 老舗製造業のとある工場では、こうしたアナログな作業を孤独にこなすのが“当たり前”だった。個人の閉じられた作業を「みんなが見える仕事」に変えたのは、本社から紹介されたkintoneだったという。
サイボウズは、2026年4月28日、kintoneのユーザー事例イベントである「kintone hive 2026 nagoya」を開催した。東海・北陸地区のNo1事例を決めるイベントも今回で10回目。今年もZepp Nagoyaに、400名近くのkintoneユーザーが集った。
トップバッターを務めたのは、興和工業所の西段長貴さんと戸田美佳さんだ。両者の働く工場におけるアナログ業務の“負のスパイラル”を断ち切った、2つのkintoneアプリを披露した。
紙と手書きの業務が“当たり前だった”日々
興和工業所は、間もなく創業80年を迎える「溶融亜鉛めっき」を軸に金属加工を手掛ける老舗製造業だ。実は、kintone hive nagoyaの第2回、第8回でも事例を披露した常連企業でもある。先達の登壇者同様に、「ご安全に!」という言葉からプレゼンが始まった。
今回の舞台は、月産5000トンという巨大な生産能力を有する半田東工場である。同工場の悩みのタネだったのは、「紙」と「手書き」が中心の非効率な業務だった。ExcelやFAX、メールがやりとりの中心で、それらを印刷した紙の書類が山積み。紙のチェック表によるアナログなプロセスが残り、日々の生産実績は大きなホワイトボードに書き込む。
戸田さんは、「Excelを印刷して保存。ホワイトボードに手書き。誰にも見てもらえない、自身でしか分からない閉塞感のある作業ばかり。“負のスパイラル”に落ち込んでいく日々でした」と当時を振り返る。
こうした業務が“当たり前”としてこなされている中で、本社から熱心にkintoneを勧められる。そこで、kintoneを学びだしたのが、これまでも現場を支えてきた管理センター課長の西段さんだ。
半田東工場は、西段さんの生み出した2つのkintoneアプリで大きく変わることになる。
メール忘れから全工場の業務変革につながった「配車アプリ」
工場を変えたひとつ目のアプリは「配車アプリ」である。
同工場ではメッキした製品を出荷するために、日々の配車依頼が欠かせない。基幹システム内で配車登録をした後に、Excelの配車依頼表を印刷しつつ、運送会社へメールで送るという作業を繰り返していた。
なぜこの業務をkintoneアプリ化しようと考えたのか。それは、運送会社へのメールを失念し、トラックが来なかったという手痛いミスがきっかけだった。「クラウド化すれば、誰でもデータを見れて、メールを送る必要もなくなる」―― そうひらめいた西段さんは開発を始めるも、これが苦労の始まりだった。
最初に出来上がったのが、配車依頼書をExcelライクに共有するシンプルなアプリである。基幹システムの配車データを連携させ、ひとつのレコードが1台の配車となり、依頼内容は各フィールドで表示される。カレンダー表示で配車の台数が俯瞰できる工夫も凝らした。
想定される要素をすべて網羅し、運送会社の合意も得て、準備は万全のはずだった。しかし、いざ試験運用を始めると、「改善要望」の電話が次々と寄せられる。西段さんは、以下のような声にひとつひとつ向き合い、アプリを改修していった。
・「トップページ(レコード一覧)ですべての配車依頼を確認したい」→テーブルのフィールドを設定し、クリックで配車依頼が見られる仕様に
・「複数の行先がある時に分かりづらい」→2つ以上の行先がある配車は積込日や引取日の色が変わる条件付き書式に
・「そもそもクリックせずに全部見たい」→プラグインで表示の仕方を改善
・「変更した配車が分からない」→変更データの一覧を作成し、キャンセルや変更した配車、確定した配車をそれぞれ色分け
こうして磨き上げられた配車アプリの評判は、運送会社を経由して社長の耳にも届く。そこから、全社展開が決まり、同アプリは半田東工場から巣立っていった。
最終的には、情報システム部によってさらなるブラッシュアップがなされ、全工場の配車業務を変える大きな成果につながった。一方の西段さんには、新たなアプリに着手する余裕が生まれる。
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