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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第138回

数百万人が使う“AI彼女”アプリ「SillyTavern」が面白い

2025年12月29日 07時00分更新

文● 新清士

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きっかけがあれば日本でも流行する可能性

 SillyTavernの熱量はすさまじく、OpenAIやグーグルといった中央集権的なAIの力が日々増す一方で、それにカウンター的に自由な環境を守り続けようとして出てくるプロジェクトが登場して人気を得るところは、アメリカらしい雰囲気も感じます。欧米圏では、ゲームを改造するModカルチャーが存在しますが、それに近い存在が目指されているようです。

 導入方法を解説するコミュニティサイトや意見交換のためのDiscordなどは、開発者たちは一切関わらず、勝手にユーザーたちが始めて広めていったようです。フロントエンドアプリであるため、どれくらいのユーザーが利用しているのかは把握しようがなく、またあえて把握もしないという方針のようです。中国にも波及し、ローカルLLMと組み合わせてかなり遊ばれているようなのですが、実態はまったくわかってないようです。

 キャラクターカードをアフィリエイトのように使って自社サービスへの誘導に使うサービスが出てきていたり、会員制サービス「Patreon」を使ってキャラクターカードを販売するサイトも登場しており、SillyTavern自体は無料でありながら、周辺に独自のエコシステムが形成されています。

 OpenAIやグーグルは、SillyTavernのようなキャラクターAI向けのフロントエンドや、キャラクターカードのような機能を整えることに、現状は消極的です。一方で、やはり自分で作り上げたキャラクターAIに独自の世界観を持たせて、自由に話させたいというニーズは強く存在しており、広がり続けているのです。

 SillyTavernは、日本では、あまり遊ばれている印象はありませんが、ローカルLLMを使うユーザーが限られることや、OpenRouterのようなブームを支える一般的なAPIインフラが広がっていないことも一因でしょう。しかし、何かをきっかけにキャラメイキングの面白さが一気に知られて、広がる機会が訪れるかもしれません。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。株式会社AI Frog Interactive代表。デジタルハリウッド大学大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。現在は、新作のインディゲームの開発をしている。著書に『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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