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3社に1社はVDIを後悔 国産メーカーの強みを出せるセキュリティ領域へ

既存のVDIに不満あり 注目のデータレスクライアントは受け皿になれるのか?

2025年12月26日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 情報漏えい対策としてVDIを利用している企業の不満を解消すべく、ファットPCを前提とした「データレスクライアント」が注目を集めている。2025年12月16日にソフトウェア協会で開催されたメディア向けの調査報告会では、データレスクライアントがいまなぜ注目されているかをMM総研 取締役研究部長 中村成希氏が講演を行なった。

MM総研 取締役研究部長 中村成希氏

データをローカルに保存させないことで、情報漏えいを防ぐ

 調査報告会に登壇した登壇したMM総研 取締役研究部長 中村成希氏は、データレスクライアントのベンダーヒアリング、ユーザーやSIerなどのアンケート調査を元に、データレスクライアントの市場動向やユーザーニーズを深掘りした。なお、調査対象のデータレスクライアントベンダーは、e-Janネットワークス、ZenmuTech、アーク情報システム、アップデータ、ソリトンシステムズ、NEC、ハミングヘッズ、富士通、横河レンタ・リースになる。

データレスクライアントの概要

 データレスクライアントはPC上のファイルをローカルに保存させない情報漏えい対策ソリューション。セキュリティソリューションではあるが、PC本体の処理能力を活かしたファットクライアント方式である点が、VDIやシンクライアント方式との最大の違いになる。各ベンダーの実装に関しても、クラウド上にファイルを保存する「リダイレクト方式」、閲覧のみ可能にする「ROM化方式」、データを複数の断片に分散させる「秘密分散方式」、PCの操作を制御する「パソコン操作制御方式」など複数の方式がある。

 データレスクライアントが情報漏えい対策として注目されているのは、AIやクラウドの登場でデータ活用のニーズが高まったこと、働き方改革やコロナ禍の影響で場所に関わらず、高いセキュリティ統制を実現したいというニーズがある。ただこうした市場動向とは別に注目したいのは、既存のVDIへの不満が高まっているという事情である。

 ユーザーインターフェイスを仮想デスクトップとしてサーバーから配信するVDIは、高いセキュリティと管理性が大きな売りで、数万単位でクライアントを導入している金融機関もある。しかし、VDI製品を提供するベンダーは少なく、市場を寡占化されているのに加え、この数年でライセンス料を一気に上げたため、ユーザーの不満が高まっている。特にサーバーを社内システム内に設置するオンプレミス型VDIの場合は、移行も簡単ではない。

 MM総研の調査によると、3社に1社がVDIから汎用PCの利用に戻したいと考えているとのこと。特にサイバーセキュリティ対策やAIの利活用を考えている企業は、VDIやシンクライアントに比べてデータの利用が容易なデータレスクライアントを選択する傾向が強いという。また、Windowsのバージョンアップが恒久的に行なわれることで、2025年を最後にOSの更新を理由にしたPC特需はなくなると見られており、中村氏は、モノとしてのPCの耐用年数よりも、AI活用などコトに前提とした調達が重要になると指摘した。

3社に1社がVDIから汎用PCに戻したいと考えている

年率34%で成長が見込まれるデータレスクライアント 課題は?

 一方で、8社のベンダー調査によるとデータレスクライアントは、今後5年間で年率34%の成長を遂げると見込まれている。特に2026~2027年にかけては、不満の高いVDIの大規模リプレースが重なるため、VDIの置き換えに加え、VDIとPCの併用という形態でも、需要が高まっていくと見られている。

年率34%の成長が期待されるデータレスクライアント

 ターゲットは業種というより業務内容に依存しており、VDIの情報漏えい対策のレベルを求める業務全般が対象になる。一方、2025年度は三層分離やネットワーク更改を前提とした自治体、教育分野でデータレスクライアントの導入が進んだ模様。金融や製造、情報通信などVDIやリモートワークの活用率が高い業界でもひき続き高い需要が見られそうだという。

 導入後のユーザーへのアンケートによると、移行のメリットとしては「自社の運用負担の減少」や「導入、運用コストの低減」「端末の操作が軽快になった」「ハードウェアスペックが活かせるようになった」などが挙げられた。コストに関しては、年間1台あたり10万円以上かかるオンプレ型VDIからデータレスクライアントに移行すると、明確にコスト低減につながるとされている。

データレスクライアントの導入効果はコストより、運用負荷の軽減

 こうした需要の高まりの反面、課題としてはデータレスクライアントの認知度自体が不足しているという点が挙げられるという。また、データレスクライアントだけでは、情報漏えいやセキュリティ対策として不十分なため、他社セキュリティ製品との連携、ビジネスパートナーとの共同提案などが重要になるという。さらにVDI導入済みの企業では、VDIを前提としたネットワークやインフラの見直しが課題になるという。

 中村氏はオンプレミス型VDIからデータレスクライアントへの移行で大きな運用コストの削減が見込まれると指摘する一方、PCのバッチやID管理などの新たな負担が課題になる可能性があると指摘。「ユーザー企業の情報漏えい対策やセキュリティ対策を実現するため、市場の活性化とソリューションの進化を進めるべき」とアピールした。

 イベントではアクティブライセンス70万ユーザーを突破した横河レンタ・リースの「Flex Work Place」、リダイレクト型で高い実績を誇るアップデータの「ShadowDesktop」、秘密分散技術を用いたZenmuTechの「ZenmuTech Virtual Drive」などの事例も披露。国産メーカーが強みを発揮できる領域として、データレスクライアントの実績がアピールされた。

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