東京大学広報室の広報誌「淡青」の特集より

信長を研究する東大教授、『信長の野望』を30年ぶりにプレイ 「若い頃だったら確実にハマってた」

文●モーダル小嶋 編集●ASCII

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 歴史を学ぶ入口は、必ずしも教科書や史料から始まるとは限らない。多くの人にとっては、ゲームや漫画、映像作品といった体験が、過去の出来事や人物に興味を抱く最初のきっかけになることもあるだろう。では、歴史研究の最前線に立つ研究者は、歴史を題材にした最新のゲームをどのように見たのか。

■東大教授が30年ぶりに触れた『信長の野望』

 東京大学は12月16日、史料編纂所中世史料部門の金子拓教授が歴史シミュレーションゲーム『信長の野望』シリーズ最新作を30年ぶりにプレイした体験を語る記事を同大公式サイトで公開した。

 金子教授は史料編纂所中世史料部門に所属し、信長に関する一般向けの読み物も執筆経験がある。学生時代に『信長の野望』シリーズで遊んだ経験を持ち、久しぶりに『信長の野望・新生』を入手してプレイしたという。

 「20代の頃にこれがあったら、確実にハマっていたでしょう。ゲームでこれほど歴史を知ることができるのなら、研究の道に進まずこれで十分と考えたかもしれません」と金子教授は語っており、数十年の時を経てのプレイで『信長の野望』シリーズの魅力を再確認したようだ。

■史実とゲーム性、そのバランスへの評価

 『信長の野望』シリーズは戦国時代の武将が全国統一を目指す歴史シミュレーション。金子教授によれば、登場する武将の目的や大きな出来事・人の生死などは基本的に史実を踏まえているものの、プレイ次第で史実と異なる展開も可能であるところにゲームならではの魅力を感じるという。

 戦略面では単に戦闘を繰り返すだけでなく、噂を操作して不安定な状況を作り出す、敵方の家臣を引き抜くといった下準備が重要であると述べている。過去のタイトルと比較して、内政や人事、調略といった活動がきめ細かくなっている点も感じたという。

 ゲーム内の具体的な例として、有能な人材を探した際の候補者の中に、専門家でないと知らない人の名もあったことを挙げている。

■ゲームから歴史研究へ、関心をどうつなぐか

 金子教授は、「戦国時代でも軍事と同程度に内政や外交も重要だったという研究の成果が反映されたゲームに進化していることを知りました」と語り、ゲームを通じて歴史に興味を持った若者をどのように学問の世界へ導くべきかといった点についても考えを述べた。

 具体的には、研究成果をゲームにどう活かしているかを示すために、ある武将の関連史料を挙げ、それに基づく武将の能力とゲーム内のパラメータを比較するなどの方法が考えられるとしている。

 なお、金子教授が『信長の野望』をプレイした記事は、東京大学広報室が年に2回発行している広報誌「淡青」51号の特集「ゲームと東大(遊び+ルール+ゴール)×大学で導き出される答えは?」の一部だ。

 その特集においては、ポケモンを生態の違いや共通点に注目して分析しイラストとともに紹介した書籍「ポケモン生態図鑑」を世に出した米原善成氏ときのしたちひろ氏のインタビュー、鳥海不二夫教授による人狼ゲームをプレイできるAI開発の取り組みなどを紹介した記事などが並んでいる。

 特集の一部はWeb上で閲覧できるほか、広報誌の実物はテレメール(インターネット)を利用して取り寄せることも可能だ。詳しくは「淡青」の公式サイト(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/public-relations/tansei.html)を確認してほしい。