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Intel Tech Tour 2025取材レポート【その2】

Tick-Tock戦略の再来?Panther Lakeが前世代から大きく変わらず性能が向上した理由

2025年10月17日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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Panther Lake

 インテルは最新プロセス「Intel 18A」を採用した次世代モバイルPC向けプロセッサー「Panther Lake(開発コードネーム)」を、同社の北米アリゾナ工場にて大量生産を開始した。それと同時に、9月末から10月頭にかけてメディア向け説明会「Intel Tech Tour 2025」を開催し、Intel 18Aを採用する製品(Panther LakeおよびClearwater Forest)の技術開示も行った。

Panther Lake

Intel Tech Tour 2025で展示していた、Panther Lakeの開発検証機(Reference Validation Platform)の中身

 前回はPanther Lakeのプロセスルールやラインアップ(8コア版、16コア版、16コアXe12版の3種類)があるという話で終わったが、本稿ではPanther Lakeのコアとタイル構成のほか、PコアやEコアのアーキテクチャーを解説する。

 前回と同様にお断りをしておくが、まだインテルは次世代のデスクトップPC向けの製品(開発コードネーム:Nova Lake)に関しては、なんの情報も開示していない。ゆえに、今回はAI PCとしての運用を強く意識したノートPC向けのPanther Lakeのみにフォーカスする。

Panther Lake

まずは前回のおさらい。Panther Lakeは「コンピュートタイル」「GPUタイル」「プラットフォームコントロールタイル」の3種類を「ベースタイル」上で組み合わせている

Panther Lake

3種類あるPanther Lakeのラインはどれも同じアーキテクチャーだが、最下位の8コア版はLunar Lakeの発展形、上位の16コア版と16コア12Xe版はArrow Lakeの発展形として存在している。今まで別のアーキテクチャーで対応していた2つのラインが、Intel 18Aのおかげで1つのスケーラブルなアーキテクチャーに統合されたわけだ

新要素山盛りのコンピュートタイル

 Panther Lakeのコンピュートタイルはインテルの最先端プロセスであるIntel 18Aで製造。そして、ここに集約している多くのIPがなんらかの形で前世代より改善している。コンピュートタイルの主は、4基のPコアと4基のLP Eコアだ。Panther Lakeの場合、16コア以上のモデルのみEコアのクラスターを2基(Eコア4基×2)追加している。

 各コアの使い分けはこれまでと同様、Pコアはシングルスレッド重視で計算負荷が高い処理用で、Eコアはマルチスレッド性能を稼ぎたい処理用となる。そして、LP Eコアは動画鑑賞のような低負荷な処理をより良い電力効率で行うユニットだ。PコアとEコアのクラスターは大きなL3キャッシュで結合している。

 一方で、LP Eコアはそれらとは隔離した場所(Low Power Island=低消費電力区画)に格納する。ちなみに、LP Eコアで十分な処理の時にPコアやEコアが詰まった電力コストの高い区画を使わないようにするという思想は、Meteor Lakeからはじまったものだ。

 Lunar Lakeに引き続きコンピュートタイル上にはメモリーキャッシュを実装している。レイテンシーの隠蔽とメモリー帯域の増大を狙ったものだが、特にLP EコアやNPUにとっては電力消費量が増えてしまうメモリーアクセスを減らせるということで非常に大きな意味を持つ。

 なお、Panther Lakeではメモリーキャッシュ量に変化はないが、3種類のコア(Pコア、Eコア、LP Eコア)のキャッシュ一貫性を保つためのユニット「ホームエージェント」がメモリーキャッシュ内に配置している。

Panther Lake

Panther LakeはすべてのCPUコアをコンピュートタイル上に配置。上の小さな4マスの青色の塊がEコアのクラスターで、その下の大きな紫色のブロックがPコアとなる。EコアとPコアはL3キャッシュを共有し、このブロックは「パフォーマンスクラスター」と呼ばれている。そして、パフォーマンスクラスターとは別の領域(水色)にLP Eコアがある。よく見ると、LP Eコアの上と左には「Γ」のような形状の領域で区切られていることがわかる

Panther Lake

LP Eコアの周囲にあるΓ型の細長い区画は、GPU〜P/ Eコア&LP Eコアやメモリーキャッシュを連結するScalable Fabric。Lunar Lake時代に誕生したものだ

Panther Lake

「PコアとEコア、LP Eコアのキャッシュの一貫性をどうとるか?」という問題については、両者のクラスターにコヒーレンシーエージェントを設け、メモリーキャッシュ(LP Eコアの左側の領域)上にそれを統べるホームエージェントを配置することで対応する

Panther Lake

Panther Lakeのメモリーキャッシュは8MBで、これはLunar Lakeから変化していない。主眼はLP EコアやNPUが稼働している際にメインメモリーへのアクセスを抑制するためのもので、最終的な狙いは消費電力の低減だ

 コンピュートタイル上にはこれらの機能のほかにも重要なIPを格納している。1つはAI PC時代には欠かせないAI専用の処理ユニット「NPU5(Neural Processing Unit)」や、画像処理専用のユニット「IPU7.5(Image Processing Unit)」である。

Panther Lake

NPU5はLunar LakeのNPU4を基準にすると、性能は48TOPS→50TOPSで微増だが、エリア効率では40%以上改善している(よりコンパクトになった)。一方で、モバイルPC向けのArrow Lakeと比較すると、TOPSは3.8倍と飛躍的に伸びている

Panther Lake

IPU7.5はWebカメラの映像に対し、AIでノイズ除去やトーンマッピング処理といった高画質化処理を担当する。「Zoom」や「Teams」のためにお高いカメラを準備しなくても良いというわけだ。IPU7.5は最大3基のカメラの映像を同時に処理できる

Panther Lake

動画のエンコード&デコード処理を担当するXeメディアエンジンは特に世代更新をアピールしていなかった。だが、AV1 4:4:4/10bitのエンコード&デコードのほか、H.264の10bit対応(プロ向けカメラ対応といえる)やソニー製のコーデック(XAVC-H、同-HS、同-S)対応などが盛り込まれた

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