「ベトナムフェスタin神奈川2025」にちなんだ日越交流戦も開催!
eスポーツは国境も年齢も超える、それを実感させてくれた「かながわeスポーツ交流ひろば」に感動した!

ベトナムフェスタの中で開催された
eスポーツによる交流の場
神奈川は横浜にて、9月13〜14日の2日間にわたって、日本大通り・神奈川県庁本庁舎・象の鼻パークで開催された「ベトナムフェスタin神奈川 2025」。
神奈川県とベトナムの相互理解、ならびに持続的な成長と発展を目的としたもので、2015年から開催されているという。
ベトナムのグルメを提供する屋台をはじめ、舞踏や歌謡曲などを披露するステージ、豪華賞品が当たる大抽選会などが催された。多くの人たちが会場に足を運び、ベトナムの文化や魅力を存分に楽しんでいる様子だった。
数あるプログラムの中で、筆者が訪れたのは9月14日に開催された「かながわeスポーツ交流ひろば」だ。
「えっ、なぜベトナムのお祭りでeスポーツを?」と思った人もいるかもしれない。
本イベントは、ベトナムフェスタin神奈川 2025の連携企画。ゲームを通じて日本とベトナムの絆を深め合う国際交流と、eスポーツの魅力を幅広い世代に知ってもらうことが趣旨となっている。

横浜という開催地の土地柄もあり、さまざまな国籍の人たちが訪れ、家族連れも年輩の方も多いベトナムフェスタ。そこで誰もが楽しめる「ゲーム」を使ったイベントを開催するのは、むしろ自然な流れといえるだろう。
そんな、かながわeスポーツ交流ひろばの模様をレポートしていこう。「ゲームは国境も年齢も超える」といったようなことがしばしば言われるが、まさに、それを実感させてくれるようなイベントだったのだ。
老若男女のユーザーが笑顔に!
eスポーツは人と人をつなぐコンテンツだ
かながわeスポーツ交流ひろばは、9月14日に「象の鼻テラス」で開催された。こちらは象の鼻パーク内にある屋内施設で、飲食スペースと本イベントのスペースが半々に分かれているようなレイアウトになっていた。
会場を訪れると、壁沿いにeスポーツ体験ブースが、中央にイベント用のステージが設けられていた。
来場者の多くは、日本・ベトナム出身のファミリー層。高齢者の姿も見受けられた。老若男女問わず、幅広い世代が会場に足を運んでいて、eスポーツという娯楽を楽しんでいるようだった。
eスポーツ体験ブースで体験できたゲームタイトルは、『eFootballTM』『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』『スイカゲーム』『サンコロビンゴ』の4種類。
そのうち太鼓の達人 ドンダフルフェスティバルとスイカゲームはミニ大会が催され、上位入賞者には記念メダルや景品が授与された。
筆者はeスポーツの大会やゲームの試遊イベントなどに参加することも多いが、そういった場ではゲームに詳しい人たちがプレイすることがほとんど。また、自分自身がゲーマーということもあり、「普段はさほどゲームをしない人たちが、ゲームに触れるとどうなるのか?」ということはあまり意識してこなかった点だ。
いざその環境を目にしてみると、親子同士や子供同士でゲームを楽しんだり、他の子供たちと対戦したりと、ブース周辺は和気あいあいとした雰囲気だった。
そんな体験ブースの様子を見て、あらためてゲーム、eスポーツは人と人をつなぐコンテンツではないかと感心させられた。
日本とベトナムの挑戦者たちが
プロeスポーツ選手に挑戦!
さて、かながわeスポーツ交流ひろばでは、サッカーJリーグクラブ「横浜F・マリノス」に所属するeスポーツチーム「横浜F・マリノスeスポーツ」のDAIKI選手と対戦できるフレンドリーマッチも催された。
MCは、元・日本テレビアナウンサーのeスポーツキャスター、篠原光氏が担当。司会進行だけでなく試合の実況も担当したため、eスポーツ大会のような臨場感を味わえるようになっていた。これも、eスポーツを見慣れていない人たちが多い会場には、親しみやすい雰囲気を作る演出になっていただろう。
フレンドリーマッチは、事前に募ったベトナム出身のペア2組と、当日予選を通過した2名の日本人計6名が、eFootballTMのモバイル版でDAIKI選手と対戦するというもの。
DAIKI選手はeJリーグでは2019年から活躍し複数回の優勝を経験。2025年には世界大会「World Finals 2025」の予選を突破してベスト8進出を果たした、正真正銘の実力派プレイヤーだ。
このフレンドリーマッチ、観客席が満席だっただけでなく、立ち見で観戦する人もいるなど、注目度の高さがうかがえた。やはり「試合形式」というスタイルは、多くの人たちにとって観戦しやすいのだろう。
DAIKI選手はプロレベルのテクニックを披露し、挑戦者たちを圧倒する。対して、一般参加者ではeFootballTMを初めてプレイする人もいたが、それでもDAIKI選手の猛攻撃を防ぐ場面もいくつかあり、かなりの健闘を見せていた。
試合が進むにつれ、挑戦者がDAIKI選手が操る選手のシュートを止めたり、逆にDAIKI選手を相手に得点が決まりそうになると、会場から自然に拍手や歓声が起こるようになっていく。
ゲームに詳しくなくとも、ルールを把握している人が多いサッカーをテーマにしたeFootballTMということもあり、eスポーツを見慣れない人でも観戦しやすかったはずだ。このタイトルを選んで正解といえたのではないだろうか。
大会前半の2試合こそDAIKI選手が圧勝したが、後半から流れが一変する。
3試合目では、小学生の参加者がなんと先制ゴールを決めて、会場からいっせいに拍手が湧きおこる。そのあと、惜しくも逆転され敗れてしまったが、eスポーツ大会さながらの熱気がだんだん強まっていく一コマだった。
そして最終試合では、なんとベトナム出身のペアがDAIKI選手に勝利。一般参加者の選んだチームのほうがDAIKI選手のチームより能力が高いという状況ではあったが、劇的な展開に会場は大盛り上がり。
一方、横浜F・マリノスeスポーツ所属とあって、横浜F・マリノスを使用しながらも負けてしまったDAIKI選手は「いろいろ言われるかも……」と苦笑していたが、プロとしてのテクニックを惜しげもなく披露した姿には大きな拍手が送られていた。
およそ60分ほどではあったが、短いと感じさせないほどの濃い内容。数時間におよぶeスポーツ大会を観戦したような感情になったというのが正直なところだ。
とくに、試合後のインタビューで、挑戦者たちの清々しい笑顔が印象に残っている。試合に敗れてしまったものの悔しがる素振りを一切見せず、むしろ良い試合ができたこと、楽しくプレイできたことの喜びがあふれているように見えた。
出場者と観客の心がひとつになり、まさに“スポーツ”観戦の感覚でゲームの試合を観戦し、熱狂する。これぞeスポーツの醍醐味ではないかと改めて感動した次第だ。
「eスポーツを知るきっかけになってほしい」
取材の合間に、かながわeスポーツ交流ひろばの運営を指揮していたJCG イベントディレクター 小山田咲氏にインタビューした。JCGはeスポーツイベントの企画・運営を主力事業とする企業で、『シャドウバース』の大会などを運営した実績がある。
これまでは筆者の視点で本イベントをレポートしてきたが、ここからはインタビューを通して、かながわeスポーツ交流ひろばの魅力を掘り下げていきたい。
——かながわeスポーツ交流ひろばを企画したきっかけは?
小山田氏:神奈川県は、2025年から「eスポーツを活用した共生社会の実現」に注力しています。その効果を検証するために、今回のベトナムフェスタで、かながわeスポーツ交流ひろばを開催することになりました。
私が本案件に携わるようになったきっかけとして、自分自身が神奈川県出身ということもあります。土地勘のある場所でファミリー向けのイベントをやりたいと考えたときに、子供たちが気軽に楽しめて、かつeスポーツに触れるきっかけになってもらえるような内容を意識していました。
また、「楽しかった」「負けて悔しかった」など、eスポーツならではの感情を味わってもらえたらという思いもこめて、かながわeスポーツ交流ひろばを設計させていただきました。
——実際に現場を見てみて、どういった印象を受けましたか?
小山田氏:たくさんのお客様がいらっしゃっていて、ファミリーで楽しんでいただけたのがすごく良かったと思っています。来場されたお客様の思い出に残るようなイベントを設計できたことに、喜びを感じています。
——eスポーツ体験ブースには、「誰でも遊べるコントローラー」というものがありました。これを置いた理由は?
小山田氏:今回は多くのお客様に楽しんでいただけるゲームのイベントというところで、老若男女問わず幅広く遊んでいただけるよう、ボタンだけで操作できるアクセシビリティコントローラーを置かせていただこうと。
ボタンだけのコントローラーは障がいのある方でも使いやすいものになります。今回のイベントが、アクセシビリティコントローラーの認知を広げるきっかけにもなってくれたら幸いです。
——eスポーツ体験ブースに、サンコロビンゴを導入した理由についてもお聞かせください。神奈川工科大学が開発した計算ゲームとのことで、この会場で初めて知った人も多かったと思います。
小山田氏:サンコロビンゴは、神奈川県さんに紹介していただいたタイトルになります。神奈川工科大学にお伺いして実際に触ってみたらとにかく楽しかったので、このゲームを多くの人に知ってもらいたい、楽しんでいただきたいと思って採用させていただきました。
——「eスポーツフレンドリーマッチ」を実現させるまでの経緯について教えてください。
小山田氏:ベトナムフェスタの中で実施するうえで、ベトナムでも人気のあるゲームタイトルと、開催地の横浜といったところをうまく接着できるゲームタイトルを社内で検討しました。『ポケモンユナイト』や『ぷよぷよ』なども候補に挙がりましたが、最終的にはeFootballTMに決まりました。
ベトナムの方に人気のサッカーゲームで、横浜F・マリノスeスポーツの選手に出ていただく内容であれば、お客様も地元の方も喜んでいただけるし、ベトナムフェスタにふさわしいイベントになるのではないかと思いました。
JCGとしては、今後も地域の方に向けてeスポーツを楽しむきっかけになるような大会を企画していきたいので、ご期待いただければと思います!
イベント中に筆者が驚いたのは、大会中に一般の方がスタッフに声をかけて、「これはなんというeスポーツですか?」という質問を投げかけていたことだ。
eスポーツという言葉は普及してきたものの、まだまだ詳しくない層も多いかもしれない。そんな人でも、参加者の感情や観客の熱気が伝われば、興味を持って積極的に知ろうとしてくれる……。
まさに、小山田氏が語っていた「eスポーツに触れるきっかけになってもらえるような」イベントになっていたことの証拠だろう。
かながわeスポーツ交流ひろばは、国境も年齢も超えて、文字通り“eスポーツでの交流”が広がっていくピースフルなイベントだった。































