ミニサイズのワークステーションはなぜかサーバールームに置かれる?

日本の発想を取り入れて進化したHPのワークステーション、その現在地点を知る

小林 編集●ASCII

提供: 日本HP

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ハイスペックなPC=ゲーミングPCという風潮もある中
あえてワークステーションを選択する意味

ーー高性能なPCというと最近ではゲーミングPCを思い浮かべる人も増えているようですが。

太田 「CADやEDAツールなどそれぞれの要素において、ワークステーションクラスで必要とされる認証(サーティフィケーション)や、アプリケーションの最適化についてエフォートをかけ、品質を担保したシステム作りがなされているのも通常のデスクトップとの大きな違いでしょう。こういう制作物を作りたいと考えた際に、ハードとソフトがバンドルされていて、この環境でやればちゃんと動くという安心感は何者にも変え難いものです。ハードだけでなく、ソフトベンダーとの関係性やご自身の経験を活かしたプラットフォームである点は、HPワークステーションを使う一番の魅力ではないかと思っています」

中島 「ありがとうございます。ISV認証(サーティフィケーション)を得ていることで、開梱して初めて電源を入れた際にこのマシンであれば動くという保証がある。ここは重要なポイントだと思っています。仮に動作に不具合がありトラブルに対応する場合でも、このハードウェアでは動かないソフトウェアであるという可能性を排除できます。ISV認証があっても未来永劫不具合がないというわけではありませんが、OSやアプリケーションのバージョンアップやファームウェアの変更があった際、サーティフィケーションがあれば、関連するベンダーからここでこういう改善をしたらいいという意見を得られたり、ドライバーやパッチなどをプロアクティブに改善してくれます。これはコンシューマー向けのPCやゲーミングPCでは期待できないワークステーションならではの部分だと思います」

大橋 「HPはゲーミングPCも手がけていますが、それぞれに思想の違いがあると思います。ゲーミングPCは最大瞬間風速的な全てのパーツの性能をギリギリまで出す。それをある程度のコストで出すという形です。結果、犠牲になりやすいのが耐久性です。瞬間最高のパフォーマンスが出れば、信頼性に多少犠牲が出てもいいという面があると思います。逆にワークステーションは壊れては困る。余裕を持ちながら、高い性能を出し続けられる。そんな設計を満たしていくようなパーツ選定がなされますし、同じCore Ultraを搭載していたとしても、周辺のマザーボードの設計などがコストダウンをしすぎないように製品化しています」

ーー自動車に例えるとレースに出るような追い込んだ車両と、長く使う高級車の違いなのかもしれませんね。

大橋 「はい、F1カーは軽量化などを含め、性能を極限まで追い込んでいて、決してローコストなものではありません。しかし、40周なり何なり決められた距離を走り切れればいいという設計です。ワークステーションはアメリカ大統領が乗るような、銃で打たれても壊れない防弾の効いた車と考えてもいいのかもしれません。実際、検証する際のテスト項目も多く、自社で決めた基準のハードルも最も高くなっていますね」

ーーZ2シリーズの特徴や活用方法についてお伺いしていきたいと思います。

大橋 「Z2シリーズは弊社のメインストリームで、最も幅広く使われているシリーズです。搭載可能なプロセッサーもCore Ultra 5から9までと広範で、型番の末尾にKがつくオーバークロックしたプロセッサーも採用しています。結果、エントリーラインながら、非常にパフォーマンスが高いものに仕上がっています。ハイエンドのXeonは本当の意味でのマルチコアが必要な処理に適したものとなりますが、Core Ultraを搭載したZ2 G1iシリーズの適用範囲も大きく広がってきていると考えています」

太田 「NPUに対応したソフトもどんどん増えています。2024年末の時点で250社以上のISVと開発を進めており、すでにAIを活用する400以上の機能(ファンクション)が提供されています。これは年々加速度的に増えています。NPUに最適化したり、オフロードしたりすることで演算に必要な電力消費も抑えられるのもメリットで、気付けば知らない間にAI PCのNPUを使っていたという状況になっていくでしょう」

大橋 「ワークステーションでニーズの高いCADの設計機能にAIが入ってくるのはこれからです。現状ではクラウドを使用するものが中心です。日本の顧客、特に自動車関係の設計ではネット環境から隔絶した構内のネット環境でアプリケーションを使いたいというのが大半です。クラウドが使えないクローズな利用環境でNPUを活用し、AIを使っていきたいというニーズは確実に増えていくでしょう。

 例えば、ベテランの手法を学習させてCADのテンプレートに反映したり、トポロジー最適化に応用したりすることが考えられます。トポロジーの最適化とは部品そのものの形状は変えずにコストダウンしていくための設計手法で、一部を空洞にしても強度を落とさないで済むといった解析を設計と並行して進められます。

 従来は人の手で試行錯誤しながら進めてきたものですが、これをAIの学習で最適化していく。こうしたクラウドにあるファンクションをローカルのマシンで処理するという動きがちょうどこれから出てくるタイミングだと思われます」

ーーAIの活用はCADソフトの機能向上や高速化だけでなく、設計プロセス全体に影響が出そうです。例えば事務処理を効率化して全体の労力を下げるということもあるのではないでしょうか?

大橋 「大いに考えられます。実は設計者がCADソフトを使う時間は業務時間の半分程度だと言われています。残りの半分はドキュメントを書いたり、プレゼンをしたり、進捗報告会をしたりする作業に費やされています。一番の期待値は、CopilotやNotebook LMなどのAIサービスをローカルで使いながら。設計者の日常業務を簡素化するということです。膨大なマニュアルを読み、残していく作業、新人の設計者にベテランの設計者のノウハウを伝える仕組み、こうした教育や伝達をAIを使って効率化すれば、より設計に時間を割けるようになるでしょう」

中島 「ワークステーションであれば、それが1台でできます。ビジネスPCでもAIは使えますが、CADのソフトは動きません。ここも大きなメリットではないでしょうか?」

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