ミニサイズのワークステーションはなぜかサーバールームに置かれる?

日本の発想を取り入れて進化したHPのワークステーション、その現在地点を知る

小林 編集●ASCII

提供: 日本HP

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われわれはUNIXワークステーションの生き残り
全てを自社で手がけた経験が活かせる

ーー発熱の話が出ましたが、Core Ultraの性能を引き出すためには冷却性能も重要になると思います。

大橋 「冷却効率の良し悪しは、より長く、より高いパフォーマンスを出すことに直結するポイントとなります。筐体内で熱源になるのは、CPU、GPU、電源……に加えて、メモリーやSSDなどが挙げられます。特に最近のSSDは非常に高い熱を出しますが、高容量化で半導体の集積度が上がれば、上がるほど熱を持つのは避け難いものになります。それをいかに効率よく冷やして性能を引き出すかが重要です。Core Ultraが持つ本来の性能をどれだけ長く引き出せるかは、設計に大きく依存すると言えます。

 そのためにわれわれは、内部の熱解析をかなり綿密に実施しています。自動車を開発する際にエンジンルームの熱を見るように、エアフローをしっかり見て、パーツをどう配置すれば一番効率よく冷やせるか、それをオフィス環境で置くのにふさわしい静かさで実現するにはどうしたらいいかについて、長年の研究開発を続けています。マザーボード上のパーツの配置、電源、排熱のための作り込みなど、細部にもこだわった設計になっています。

Tower筐体では底部もメッシュを入れるなど空気の流れを意識した設計になっている。

 HPにはワークステーション専任の事業部があり、UNIX時代の専用端末で培った開発思想を現在のワークステーションにも継承できているのが強みです。ワークステーションをCore Ultraが乗ったPCの延長として作るのではなく、ワークステーションとして開発しているからその性能を引き出せるのが特徴です」

ーー1990年代にはHP9000シリーズやHP-UXという独自のUNIXを積んだワークステーションがありましたし、DECやタンデムなど高性能なコンピューターを開発してきた企業のノウハウも生かされているのでしょうね。

中島 「先日、興味深い会話をしたのですが、自作PCでワークステーションレベルの性能を持つ人は本当に苦労しているようです。同じスペックで組んだ場合でも、最後に電源オンをしてちゃんと立ち上がる瞬間まではいつも不安だそうです。ワークステーションと同じようなパーツを調達して、パソコンとして組み上げることはできますが、それが正しいかどうかが常に心配だと言っていました。

 こうした不安がないのが、メーカーが手がける『ブランデッドワークステーション』のメリットです。逆に言えば、冷却などを含め、組み上がった最終的な形を設計の中に盛り込んでいかないと「ワークステーションメーカーの役割は果たせない」というのが私の考えです。

 過去の製品で蓄積したデータや経験値が、新しい製品にもどんどんと盛り込まれて行きますし、エアフローについては熱流体解析のソフトウェアを使ってきっちりと設計しています。こういったことも個人では難しいことだと思いますし、メーカー製ワークステーションを使う安心感には常に気を遣って開発しています」

ーー最初から完成系=ゴールを設定してそのために必要な要素を揃えるのは、ありもののパーツを組み合わせる自作PCとは異なるポイントですね。

大橋 「ワークステーションの信頼性は、できたハードウェアが動作することにとどまらず、その上で動かすソフトウェアやドライバーも開発段階から検証している点にあります。組み上げた後、結果的にソフトウェアやドライバーが動いた/動かないがわかるのではなく、インテルさんやソフトウェアメーカーさんと協力しながら最初から動くように作っているのが違いです。その過程ではPコア、Eコアをドライバーを介してどう使っていくのかなども作り込んでいますし、ソフトウェアメーカーさんからISV認証を取得しています。

 HPは今あるPC系のワークステーションメーカーの中では唯一UNIX時代からワークステーションを開発している生き残りです。昔はCADソフトも自社で開発していましたし、CPUやOS、グラフィックスも全て自社で手がけていました。事業部には、こういった経験を持つ人間がまだ残っていますし、ソフトウェアメーカーさんとの間にもその時から連綿と続くリレーションがあるのです。

 これはわれわれだけでなくソフトメーカーさんやエンドユーザーさんにもメリットがあることです。新しいプラットフォームで自分たちの製品がどう動くのか、OSが新しくなった際にどのような動作をするのかを検証せず、ハードウェアが変更された結果、ソフトが動かなくなってしまったら彼らも困ります。我々も困りますが、一番困るのはお客様でしょう。

 今はAIをはじめとした新しいテクノロジーが出てきているタイミングですが、そうならないようわれわれも努力しています。この先の普及が期待されているAI PCの機能を持ったワークステーションで「ソフトウェアをどう使いこなしていくか」を見据え、ソフトメーカーさん、CPUメーカーさん、さらにはOSメーカーさんなどを交えながらチューニングしていける。それができるのが我々の強みだと思います」

ーーNPUを持ち電力効率が高いCore UltraであればCPUの熱源が減り、設計もしやすくなりますか?

大橋 「それもありますし、パフォーマンスの面でもPコア/Eコアの構成になってから世代を重ねていますし、OSもWindows 11に変わることで必要なジョブに必要なコアを割り当てていく最適化が進んでいます。その結果としてソフトウェアの性能も引き出せるようになりました。これが原点ですが、さらにノートに続いてデスクトップでもNPUが本格的に入ってくれば、色々な業務改善が進んでいくという期待値を持っています。H Pのワークステーションはただ単にハードウェアを提供するのではなく、こうした次世代のコンピューティングに対する準備を整えていくというメリットを享受できる設計になっています」

太田 「開発に際しては本国でインテル/HP両社が密接な協業をさせていただいていると聞いています。長年の経験を持つHPさんが業務で数年間安心して使えるゆとりのある設計の製品を出していることは1ユーザーの目線でも安心できます。細かいパーツをひとつひとつ見るだけでこんなところにコストをかけているのかや、こんなI/Oを用意しているといった気配りを感じます」

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