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まずは人に依存しすぎな最上流・最下流工程をAIで加速

テストの次は「要件定義」も自動化 Autifyが仕掛ける仕様やテストのAI効率化

2025年07月04日 11時30分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 オーティファイ(Autify)は、2025年7月2日、AIエージェントを搭載したテスト自動化ツール「Autify Nexus」を日本市場で提供開始した。あわせて、ソースコードからの仕様書生成機能などを加えた、テストケース自動生成ツールの最新版「Autify Genesis 2.0」のアーリーアダプタープログラムも始めている。

 オーティファイの代表取締役CEOである近澤良氏は、「われわれは、テスト自動化に取り組み続けてきた。AI化でそれを加速させるだけでなく、今回、要件定義の領域にも着手し、将来的にはソフトウェア開発の全体をAIで“仕組み化”していく」とビジョンを語った。

オーティファイ 代表取締役CEO 近澤良氏

人への依存度が高い「テスト」と「要件定義」をAIで自動化

 Autifyは、2016年に米サンフランシスコで創業。「ソフトウェア品質と開発生産性を革新する」というメッセージを掲げ、大規模システムを開発するエンタープライズ企業を中心に、ソフトウェアテストの自動化を推進してきた。

 現在では、ソフトウェア開発におけるAI活用が進み、コードの大部分をAIが書く時代に突入している。実際に、Autifyの新製品でも、コードの半分以上をAIが書いたという。「ただ、米国の開発現場を見てみると、会社単位でも人単位でも“AIをうまく活用できているかどうか”で差がつき始め、またAIの適用が進む、進まない領域も明確に見えてきた」と近澤氏。

 「AI活用が進まない領域」とは、大規模なコードベースや複雑な機能の開発である。その理由について、近澤氏は、「現状は、LLMのコンテキストウィンドウに限りがあり、すべてのコンテキストを渡しきれないため、精度が極端に落ちてしまう」と説明する。

 開発プロセスにおいても、「基本設計」や「詳細設計」「コーディング」といった、スコープが限定された工程ではAIの効果が発揮されるものの、初期の「要件定義」や最終段階の「テスト」の工程は、今もなお人手に依存しているという。

開発プロセスでの生成AI活用の現状

 加えて近澤氏は、「開発におけるテストの占める割合は3割から4割ぐらい。金融系などの大規模なエンタープライズシステムでは半分を占めるケースもある」と語る。膨大な作業が発生するテスト工程の自動化を、これまで培ってきた自動化技術に最新のAI技術を融合して加速する――。これがAutifyの目指す方向性である。

 さらに今回、テストと同様に人の作業が残された要件定義にもAIを適用することで、将来的には大規模なソフトウェア開発全体を自動化する仕組みを構築していく。そのための第一歩となるのが、「Autify Nexus」と「Autify Genesis 2.0」である。

チャットで指示し自動テストを作成できる「Autify Nexus」

 まず、新たに提供されるのが、テスト業務に特化したAI活用の自動化ツールである「Autify Nexus」だ。

 Autify Nexusは、2019年にリリースしたノーコードのテスト自動化ツール「Autify Nocode Web」をベースに開発。同製品の提供開始以降、市場は大きく様変わりし、特にLLMの進化と浸透は顕著である。そこで、アーキテクチャを再構築し、AIエージェントを搭載して、テストの設計から実装、運用までをカバーするツールへと進化させている。

 現時点では、チャットによる指示から自動テストを生成するエージェントと、仕様書を基にしたテストケースを生成するテストデザインエージェントを搭載。AIがテストを自動修復する機能も備える。

Autify Nexus

 エンタープライズでの利用に対応すべく、基本はローカル実行型のデスクトップアプリとして提供する(オンプレミス環境にも対応予定)。ローカルで動作するため、無制限かつ高速にテストを繰り返すことができる。オープンソースのウェブアプリケーション向けテスト自動化フレームワーク「Playwright」を採用しており、カスタマイズ性が高く、ベンダーロックインに陥ることのない設計となっている。

 今後は、「テストの設計から分析」までをAIで自動化する機能を充実させていく予定だ。具体的には、機能要件からテストケースを生成・評価する機能やQA品質保証チームが記述したテストケースを取り込んでテスト実行する機能などが挙げられた。

AIエージェントによる自動テスト生成のデモ

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