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“酒離れ”進行で変革を加速、他社にマネできない地域特化型の物流を追求

カクヤスが進める事業再編とDX 物流を軸に“酒屋”から“プラットフォーマー”に

2025年06月05日 12時15分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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現場最優先で進める配送やカスタマーサポートのDX

 カクヤスグループでは、2024年10月に、DX推進を担うデジタルイノベーションセンターを新設。現場の課題特定から始まり、現場での利用価値を最優先にDXに取り組む方針をとる。デジタルイノベーションセンター管掌 取締役である飯沼勇生氏は、「現場で使いやすく、使ってもらえるDXこそ意義がある」と強調する。

 そのため、同センターを構成する「DX推進部」には、物流や店舗、営業、カスタマーサービスといった各現場を経験した社員が集められている。なお、もうひとつの構成組織である「データ活用推進部」には、社外からデータ専門人材を採用。データ分析基盤の構築や経営・事業データを活用できるような体制づくりを進めている。

カクヤス デジタルイノベーションセンター管掌 取締役 飯沼勇生氏

 まず、DX推進の土台づくりのために取り組んでいるのが、基幹業務システムのクラウド・オープン化だ。既存の基幹システムは、オンプレミスでスクラッチ開発されたものであり、新規ビジネスを始めるための接続性や柔軟性が備わっていなかった。「今後、プラットフォームを展開する中で、外部サービスと接続したり、機能を付け足したりする必要があっても、高コストになってしまう。変わっていく会社にシステムが追いつけるよう、クラウド・オープン化する」と飯沼氏。

 クラウドのデータ連携基盤を採用し、基幹システムのデータをミラーリング。汎用的なフォーマットでデータ活用可能な仕組みを構築する。加えて、基幹システムの各機能をクラウドへ移管。SaaSとオンプレミスのハイブリッド構成をとる。今後、プラットフォームや業務改善に必要となる機能も、SaaSで付け足せる、迅速かつ柔軟に変革が推進できる基盤を整備していく。

DXを推進するための基幹システムのクラウド・オープン化

 現在、注力するDX事例も紹介された。

 まずは、「配送の効率化」だ。現状は、各拠点の配達エリア内で1時間に1回ピストン輸送することで、1時間枠での配達を実現している。しかし、今回の再編により、他社商材をあつかったり、商材を増やしたりすると、この体制ではすぐに限界がきてしまう。

 そこで挑戦しているのが、各注文を動的に制御して、最適な店舗・車両・ルートを割り振るという、AIを用いた配送網全体の最適化である。実現のためには、数拠点から複数顧客という「N対N」での配送を最適化する管理システムが必要となり、現在、配送ロジックの精度向上に取り組んでいるという。

 飯沼氏は、「顧客の需要や配送時間、在庫などを勘案して、最適な配達手段や配達員、配達ルートなどをダイナミックに割り振る。机上の検証では、配送効率が30%向上する」と説明。2025年6月には、一部の現場で試験利用を開始する予定だ。

配送網全体の最適化する配送管理システム

 もうひとつ検証を進めているのが、カスタマーサポートでの「AIオペレーター」の活用だ。受電のピーク時に待ち時間が発生する問題を解消する取り組みで、数年後の労働力不足も見据えているという。AIオペレーターが自動音声対応し、顧客や商品、配送のデータを利用してパーソナルな受け答えができるような仕組みを、商用化に向け改善を重ねている。「まだぎこちないところもあるが、人のオペレーターと差のない、もしくはそれよりも品質が良くなるようなシステムを作れるのではないか」(飯沼氏)

カスタマーサポートにおけるAIオペレーターの利用

社名もラストワンマイルを届ける「ひとまいる」に

 カクヤスグループは、今回の事業再編を機に、2025年7月1日付で、カクヤスグループから「ひとまいる」へと社名変更する。これは、張り巡らせた配送網で「ラストワンマイル」を届けるという意味と、自社物流によって社員がお届けに「参ります」という意味が掛け合わされている。なお、今後、子会社である大和急送および明和物産も社名変更し、カクヤスは変更しない予定だという。

「ひとまいる」に社名変更

 カクヤスグループは、2028年度までの3年間を、プラットフォーム構築の準備期間としており、システム構築などに35億円を投資する計画だ。そして、5年後の2030年度には、2025年度の1345億円の連結売上高から、2300億円へと大きく飛躍する目標を立てている。

 前垣内氏は、「将来的には、他社にはマネができないような、多品種を取りあつかう地域特化型の物流を完成していきたい」と展望を語った。

フォトセッションの様子

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