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台風や豪雨による追加物流費用を補償、損害の未然防止を後押し

サプライチェーンリスク可視化・有事対応支援サービスを提供開始 ― 富士通と東京海上グループ

2024年01月23日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 富士通は、2024年1月22日、東京海上レジリエンスおよび東京海上日動火災保険と協業し、サプライチェーンリスクの可視化サービス「Fujitsu Supply Chain Risk Visualization Service(SCRV)」を、1月25日より提供開始することを発表した。

 なお本サービスは、社会課題を起点としてクロスインダストリーでデジタルサービスを展開する「Fujitsu Uvance」の新サービスとして提供される。

災害被害損失は増大傾向、レジリエントなサプライチェーン構築が急務に

 SCRVの事業開発リーダーである新美弘氏は、「昨今、自然災害やパンデミックなどのリスクに対する脆弱性、グローバル化の進展と供給源の多様化、テクノロジーの進歩とサイバーセキュリティの脅威といった課題を背景に、レジリエントなサプライチェーンの構築が急務になっている」と説明する。

富士通 クロスインダストリーソリューション事業本部 Sustainable Manufacturing Sustainable Transformation事業部 シニアマネージャー 新美弘氏

 特に、異常気象や気候変動、自然災害においては、1日あたりの損失額が、1970年代から2010年代で約7倍に増加。豪雨災害や大規模地震、水害の発生確率も上昇しており、企業の生産活動に多大な影響を与えているという。

異常気象や気候変動、自然災害による損失額は1970年代と比べ約7倍に

自然災害の傾向:豪雨災害、大規模地震、水害ともに増加傾向

 こうした現状を受け、富士通が開発したSCRVは、東京海上グループとの連携により、サプライチェーンリスクの可視化と評価を実現し、自然災害に備えたサプライチェーンの構築やリスクの立案、有事の迅速な意思決定を支援する。

 また、東京海上日動との連携により、物流の途絶を回避するための追加費用を補償する。

 SCRVのサービス自体は、Microsoft Azureで構築され、SaaSとして提供される。

SCRVのサービスイメージ

サプライチェーンリスクの可視化・評価による対策立案、有事のタイムリーな状況把握を実現するSCRV

 SCRVは、自社もしくはサプライヤーの拠点の立地に基づき、リスクの可視化や評価を実施。平時からサプライチェーンのレジリエンシーを向上させる。可視化や評価に基づく有事対応(BCP)や調達戦略などのリスク対策の立案を支援し、サービス内でサプライヤーとリスク対応に向けたコミュニケーションを取ることもできる。

平時におけるSCRVの利用シナリオ

 実際のサービス画面では、登録された拠点のリスクの高低やリスク対策の有無が表示され、各拠点の一覧からは対象拠点の抱えるリスクとその対策を多角的に把握することができる。Tier 1のサプライヤーだけではなく、「仕入先の仕入先」といったTier 2、3のサプライヤーの拠点も登録可能だ。

 生産品目ごとに、サプライチェーンネットワークを可視化することもでき、サプライヤーのリスク状況と突合して、リスクが影響する品目を把握し、供給停止の際の事前対応を検討することも可能だ。

平時におけるSCRVの画面、サプライチェーンのリスクやその対策を可視化する

生産品目ごとのサプライチェーンネットワークを可視化し、リスクと突合

 実際の有事の際には、アラートが上がり(メールでも通知)、災害の種類やどの地域で発生したかが可視化される。登録拠点と重ね合わせることで、直観的に有事の状況が把握できるほか、復旧の有無も表示される。

 各拠点の一覧からは、人的被害や建物、生産設備、各種インフラなど、さまざまな観点で被害状況が確認できる。被災の状況は、ワンクリックでサプライヤーに確認を促すことができ、サプライヤーがSCRVを利用できない際には、ユーザー企業が直接被害状況を入力することもできる。

 被害状況から復旧の目途までを一元管理し、サプライチェーンネットワークの情報も加味することで、代替仕入先の確保や早期出荷、迂回輸送といった対応を早期に開始できる。

地図上で有事の状況を直観的に把握

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被害や復旧情報を確認、サービス上でのコミュニケーションやタイムリーな情報収集が可能

 有事におけるタイムリーな状況把握だけではなく、サプライチェーン途絶を予防するための追加費用の補償も行う。これは、被災における物損補償とは異なる扱いとなる。補償の条件としては、台風や豪雨などによる浸水/外水氾濫の警戒レベル4以上が対象となり、貨物を先出しするのに要した追加費用、迂回輸送を余儀なくされた際の追加費用といった、通常の輸送費との差分を補償する内容になる。

浸水/外水反乱における追加物流費用を補償

 保証金の支払限度額は、1事故500万円限度、免責金額は10万円となる。富士通と東京海上日動が保険契約を行い、そこにSCRVのユーザー企業が被保険者として加入する形をとる。

 SCRVは、富士通ならびに販売パートナー、東京海上レジリエンスより提供される。価格は、サプライヤーのID単位での課金となり、100IDを前提して年間1000万円弱での販売を予定している。

 今後は、富士通、東京海上レジリエンス、東京海上日動の3社での連携を強化しつつ、さまざまなリスク情報の取り込みや基幹業務データとの連携、グローバル展開などに取り組んでいく。2025年度までに90社への導入、周辺サービスも含めて数百億円の売上を目標としている。

SCRVにおける3社の役割

製造業のサプライチェーンやバリューチェーンを繋ぎ社会課題を解決

 SCRVの記者説明会の冒頭では、富士通のクロスインダストリーソリューション事業本部でSustainable Manufacturingの責任者を務める山崎剛司氏が、「これからの10年、我々はデジタルイノベーション、いわゆるDXにより、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を実現していくべきだと考えている」と説明。

富士通 クロスインダストリーソリューション事業本部 Sustainable Manufacturing Sustainable Transformation事業部 事業部長 山崎剛司氏

 企業は、ESGの実現、そして実ビジネスの拡大をトレードオン、トレードオフしながら進めなければいけない環境に置かれているとした上で、同社は、不確実性に対するビジネスのレジリエンスを高め、環境・社会価値を創出するデジタルイノベーションに取り組み、よりサステナブルな未来に向けたビジネスの変革を支援していくと語る。

 その中で、クロスインダストリーでデジタルサービスを提供するFujitsu Uvanceを展開し、環境と人に配慮した循環型でトレーサブルなものづくりを実現するSustainable Manufacturingを重点領域とする。山崎氏は「製造業のお客様を囲むサプライチェーン、バリューチェーンを繋ぎながら、エコシステムを築き、社会課題を解決していく」と強調した。

Fujitsu Uvanceの概要

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